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『オリバーな犬』シーズン2も豪華キャストと遊び心が満載 タイトルに隠された2つの由来

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『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』写真提供=NHK

「犬がいつも人間と楽しく過ごしてると思うなよ!」

 あの男が帰ってきた。研ぎ澄まされた嗅覚で犯罪のニオイを探り当て、危険な任務を遂行する。全身から放つフェロモンに誰もが虜になる色男。いや、正確にいえば犬。

 参考:【写真】監督&主演を務めるオダギリジョー

 オダギリジョー監督・主演、超豪華キャストが顔をそろえ、筋読みを許さないプロットと過去作へのレファレンスを散りばめた奇抜な作風によって、たしかな爪痕を残したシーズン1から1年。待望の『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)シーズン2にして第4話が、9月20日に放送された。

 ヤクザ、半グレ、警察を巻き込んだ三つ巴のダンスバトルで度肝を抜いた第3話ラストで、関東明神会の若頭・龍門(松重豊)が殺され、北條かすみ(玉城ティナ)失踪事件の真相も闇に葬られたまま、第4話冒頭では、スーパーボランティアの小西(佐藤浩市)が何者かに投網で捕獲される。雑誌編集長の嵐子(松たか子)がフリー記者の溝口(永瀬正敏)に架電するシーンが挿入され、満を持して登場したのが、我らがオリバー(オダギリジョー)と警察犬係でハンドラーの一平(池松壮亮)だ。

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 「散歩はしてもランニングはしない」と実際の警察犬の事例を持ち出し、飼い主に絡むおっさん犬オリバー。「フィクションだからいいの!」「内容も内容だしな」とグダグダなテイストは健在で、さっそく喧嘩を始める2人(1人と1匹)。この感じ、懐かしさすら覚える。『オリバーな犬』がたった3話でドラマ好きの心をつかんだのは、破綻をおそれずドラマの自由度を拡張したからにほかならない。ご都合主義に見えて予定調和ではなく、ハプニングに満ちたもう一つの現実。これを奇跡と呼ばずしてなんと呼ぼうか。

 麻生久美子、國村隼、永瀬正敏、橋爪功、柄本明、永山瑛太、高良健吾、浜辺美波、黒木華、松田龍平、松田翔太……。オダギリが差し出す物語のピースを嬉々として演じる役者たち。めいめいがそれぞれのテイストをそのまま投入することで、予想外のスパークがそこかしこに生まれる。ストーリーそっちのけで画面から目を離せない『オリバーな犬』について語るとき、わかったようなゴタクは不要だし、野暮だ。ここでは、豊富な文脈を蓄え、過去から未来へ続く時間軸の中に存在する本作を読み解くための視点を提示するにとどめる。

 まずはタイトル。オリバーという名前は、かつて人とチンパンジーの中間の生物として一大ブームを巻き起こしたオリバー君に由来する。直立歩行し、飲酒・喫煙、女に目がないオリバーのキャラはまんまオリバー君で、オダギリがオリバー君にインスパイアされたことは確実だ。オリバー君の来日は1976年で、同年生まれのオダギリは何かしらの親近感を抱いていたと思われるが、それらの周辺情報よりも、擬人化した警察犬オリバーをドラマのメインに据えたことが重要だ。

 犬の気持ちを知りたいと思う人はいても、実際にオリバーみたいだったら耳をふさぎたくなるだろう。知られざるペットの本音を翻訳したらえげつなかったというブラックユーモアに加えて、ヒトにはない嗅覚や聴覚を持つ警察犬が人間と会話できれば、今以上に捜査が進展することは間違いない。一平をのぞいて登場人物はオリバーと会話できず、犬と人間の世界はきっちり立て分けられている。人間と犬の二軸を同時進行する設定が、物語の自在なハンドリングを可能にしている。

 犬にも意味がありそうだ。ルイス・ブニュエルとサルヴァドール・ダリによるシュルレアリスム映画『アンダルシアの犬』は、精神分析をベースにブニュエルとダリの夢の断片を映像化した。明確なプロットを持たず、映画の機能を破壊したと評される同作が無意識とイマジネーションの産物なら、通例的な脈絡を無視して、作り手のイメージを羽ばたかせる『オリバーな犬』も同作の系譜に位置づけられる。

 ワンと吠えない『オリバーな犬』は、過剰なストーリーと定式化した喜怒哀楽が氾濫する人間界で、ドラマの面白さを求めて「Gosh!!」とけしかける犬なのである。(石河コウヘイ)

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