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「思い焦がれた相手と友人のキス」を目撃した少年が取った行動とは…

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※本記事は、蓮井敬陽氏の書籍『天上に咲く赤い花』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

綾子さんはどこに?

別れ際に北村大輔は、中原純子の娘のひとみと離婚問題で揉めている、村上功太と玄関口で鉢合わせした。御盆は過ぎてしまったが、島洋子の二人の息子のために線香を上げに来たのだと、村上功太は礼儀正しく話した。北村大輔は心優しい彼に感心しながら、自分も同じ目的で来ていたのだと嘘を吐いた。

「それじゃあ」と笑顔で言う村上功太を見て北村大輔は、何故この好青年が、ひとみなんかと結婚したのだろうと不思議に思った。思春期を過ぎた頃から、中原純子と同じ雰囲気を醸し出すようになっていたひとみのことが、彼は好きではなかったので、そんな風に感じたのかも知れない。

一九八五年十月

二十年前の十月の午後、高倉豊の目の前の家々は、太陽のオレンジ色の光で包まれていた。それまで通って来た道は、そんな風にはなっていなかった。彼は、魔法に掛けられて別世界に迷い込んだような不思議な気持ちになり、注意深くゆっくりと自転車のペダルを漕いで行った。

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やがて高倉豊は、立ち並ぶ家々の片隅に、小さな公園の存在を認めた。直ぐ様彼は何かに引き寄せられるように自転車を停め、短い階段を上って公園の中に入って行った。

するとその公園には、光に包まれている周りの風景と同化して、キスしている男女が居た。高倉豊の居るところからは、二人の身体は横を向いていて、しかも光がまぶしくて、はっきりと顔が見えなかった。ただし二人が自分と同じ中学校の生徒であることは、着ている制服で分かっていた。高倉豊は、誰なのか確かめてやろうと思い、二人に近付いて行きながら目を凝らした。

二人は自分たちだけの世界に入り込んでいて、高倉豊には気が付かなかった。

女が男の唇に重ねた自分の唇を離したとき、高倉豊はようやく光のまぶしさに目が慣れて、キスしていた男女が誰なのか分かった。

横顔だが、間違いはない。高倉豊はショックを受けて、二人に背を向けて、逃げるように走り出した。男は岡島竜彦、女は江藤詩織だった。高倉豊は階段を下りて自転車に乗り、元来た道を戻って行った。二人がキスしていた情景が目に焼き付いていた。まさか二人の仲がそこまで進んでいるとは思いも寄らなかった。自転車を走らせているうちに涙がこぼれた。

その当時十四歳だった高倉豊は、江藤詩織に思い焦がれていた。その気持ちを断たなければならなくなる直接の原因が、岡島竜彦の存在にあるのは明らかだった。どうにかして、二人の仲を引き裂いてやりたかった。岡島竜彦が学校から居なくなれば、二人の仲は疎遠になっていくに違いないという、一途な思い込みが高倉豊にはあった。

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