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「バカなふりができる女になるのよ」母の言いつけを守った女の悲しい末路

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「バカなふりができる女になるのよ」母の言いつけを守った女の悲しい末路

年収8桁は当たり前。
予約のとれないレストランに頻繁に通って、
画面の向こう側の人たちとコネクションがあって、
美男美女で賢くて…。

「あの人みたいになりたい…」とみんなから羨ましがられるハイスぺたち―。

けれど…

そんな人間も、実は人知れず意外な闇を抱えていること。

あなたはご存じですか?

▶前回:“モテたい”気持ちだけで弁護士になった男。婚活を始めてようやく気がついた、重大なミスとは



ケース10:ハイスぺの母を信じた女


『―バカなふりができる賢さを持つ女。

結局モテる、…いや、最後に幸せを掴むのは、そういう女よ』

これは、母の口癖だった。

今年60歳になる母は、親の反対を押し切って大学へ進学したという。当時、四年制の大学を卒業する女性はそう当たり前ではなく、賢い女性だったということは間違いないと思う。

そして、私も母の口癖を信じていた。

変に張り合わず、男性を立てる。プライドの高い男性を、ちゃんと気持ちよくさせてあげる。

恋愛だって、結局は人間関係。スムーズにことを運ぶには、とにかく相手を尊重しておけばいいんだ、って。

そんな思想を持った私は、ちゃんと母親が安心するような家柄の男性と結婚した。家柄だけでなく、人柄も良い夫…。

けれど、夫と結婚して、専業主婦になって3年が経った今、心の底から思うことがある。


母は間違っていた。

男を立てるためだけに賢くなるなんて、そんなバカげた話はないって──。


母は子供のころ、母(私の祖母)から、「女が勉強なんてするものじゃない」と言われて育ったという。

それでも向上心が強く、勉強が好きだった母は、反対を押し切り大学に進学した。あの時代、親からの支援がないなかで大学に行くということは、どれほど大変だったかという苦労話を何度も聞かされた。

そんな出自もあってか、母は私の教育にひどく熱心だった。

「女もしっかり大学を出て、ちゃんと賢くなくちゃ」

そんなことを毎日のように聞かされ、私はそれに素直に従い、熱心に勉強。そして、慶應大学の文学部へと合格した。

大学に入ってからは、母はこう言うようになった。

「今のうちに、いい人捕まえておきなさい」

ちょっと悪戯っぽい言い方で、でも、その目の色が真剣だったことを今でもよく覚えている。

そして、私は母の言う通り、アプローチしてきてくれたゼミの先輩とお付き合いをはじめた。

幼稚舎出身という彼なら、母も認めてくれるだろう。喜んでくれるだろう。そんな打算というか嗅覚が働いた。

それにしても、どうしてここまで母に従ったのか。

それは、父と仲睦まじく、幸せそうに暮らす母の後ろ姿に、何よりもの説得力があったからだと思う。

― 私も、あんなふうに幸せになりたいな。

そのシンプルな憧れが、私に何の疑問も抱かせなかったのだ。



大学を卒業後、私は大手損保会社で、彼はメガバンクで働きはじめた。彼は最初、広島転勤となり遠距離恋愛だったけれど、お付き合いは問題なく続いていた。

その3年の間に、同僚に誘われてこっそりお食事会にも行ったりした。

けれど、どうしても罪悪感がまとわりついて離れなくて、十分に楽しむことはできなかった。

恋人がいながら、色んな場へと顔を出す同僚をみると、自分はなんて不器用なんだろうと少し落ち込んだりした。



けれど、私は間違ってなかったんだ。私は、これでよかったんだ。そう思わせてくれる出来事が、3年後おこる。

広島から東京に帰任した彼が、プロポーズしてくれたのだ。

結婚なんて別に珍しいことじゃない。そんなのわかってるけど、ドライブから帰ってきた車の中で、彼が緊張しながらも「結婚しよう」と言ってくれたその瞬間は、まるで映画の中のワンシーンみたいに思えた。

答えはもちろん、YES。

母も大喜びしてくれて、私はみんなに祝福されるがままに彼と結婚。25歳で会社を退職した。


彼のお父さまが小さな商社の三代目であるということは、結婚するまで知らなかった。彼がゆくゆくその跡を継ぐということも。

しかし、別にそんなことどうでもよかった。

夫がどんな仕事をしていようが、安定した給料を稼いできてくれるのであれば、何の問題もない。

「私が、あなたを支えるわ」

母が父にそうしていたように、私も夫にそう言って優しく微笑んだ。

夫も嬉しそうに、「ありがとう」と言って、私の手を取った。

― ついに、私も掴んだんだ。母のような幸せを…。

嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

後から聞いた話だが、「結婚相手には、慶應卒でちゃんとした会社での就労経験のある女性を」と、お母さまから口酸っぱく言われていたようだ。

ちゃんと母の言うことを聞いて、努力してきてよかった。そのときは、心からそう思った。

けれど、彼がお父さまから社長業を引き継いで以来、私の中で何か違和感が生じ始めたのだ。



「最近売り上げが低迷してるから、こうしたほうがいいんじゃないかってさ、部下が俺の仕事に口出ししてくるんだよ…」

夫は家に帰ってくるや否や、ネクタイを緩めながらそんな愚痴をこぼすようになった。

「あら、そう…。大変ね…」

そういうとき、何て返答するべきかは知っている。

けれど…。

「ただの平社員のくせに、本当むかつくよな…」


夫が決して有能な経営者ではないということに気づくまで、そう時間はかからなかった。



私は徐々に夫への不満に耐えられなくなっていった。

そして、愚痴を聞いてもらおうと、会社時代の同僚をランチに誘ったのだが…。

「私ね、総合職に転換しようと思ってるの!!全国転勤もあるけど、20代のうちはちゃんと仕事頑張ろうかなって思って!!」

私の気持ちなんて露知らず、同い年の友人は喜々としてキャリアの展望を語る。

「そっか…。すごいね…!」
「うん、今すっごく楽しいんだ」
「…」
「てか、元気ない?旦那さんとうまくいってないとか?」

そして、その明るいオーラに、私は自分の置かれた状況を話すのがどうしても恥ずかしくなってしまった。

「ううん、大丈夫…」

だって、せっかく慶應まで出て、大手企業に就職したというのに…、無能な経営者の妻として家に閉じこもっているなんて…。


もし、もし私が賢くなければ、夫が無能だと気づくこともなかった?キャリアアップしようとする友人は身近にいなかった?

自分が幸せだと、思い込むことができた…?

私が、変に賢くなければ…。

「それにしても、いいよね~。優雅な専業主婦。まっじで羨ましいよ。私なんて仕事ばっかして婚期逃しそう~」

そんなことを言いながらも楽しげな表情を崩さない友人の言葉は、私の心臓にぐさぐさと突き刺さった。





母の言葉を愚直に信じた私は間違っていたのか、隣の芝生がただ青く見えるだけなのか。

選ばなかった人生を覗き見ることはできない。

だからこそ、自分が選び取ったものを正解にしていくしかないんだけれど…。

たとえ、自分が羨ましがられることがあっても、でも。どうしても他人の人生が羨ましく思えてしまうのだ。

もしかしたら、世間から大成功しているように見える人間にも、人知れない憂鬱があるのだろうか。

成功しているからこその、憂鬱が。

私の目にはキラキラと映る彼女にもきっと…。


とってもネガティブだけれど、そんなふうに思うと、少しだけ前向きになれる気がする。

どこか救われる気がする。

Fin.


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▶1話目はこちら:「ヒゲが生えてきた…」美人すぎる女社長の悩みとは


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