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広島へ転勤…で出会えた「居酒屋」「バー」「クラブ」の凄さ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

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※本記事は、株式会社メイコー・エンタプライズ代表取締役・佐々木明廣氏の書籍『居酒屋 千夜一夜物語』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第二章 西日本

二 広島

私の人生の転機については初作の『島影を求めて』で書いたがシシャモのお陰で酒好きの課長のお供をして、大阪の夜を楽しんでいた私に大きな転機が訪れた。

一九六七年、ソ連向け合成ゴム「ブタジエン」工場建設プロジェクトの商談促進のため三菱重工広島造船所(広船)が派遣する米国買い付けミッションのアテンドとそのフォローの任務が私に与えられ、広島に転勤する事になった。プロセスオーナーが米国のフィラデルフィアにあるフードリープロセス社であったことからプラントの保証上、ソ連との契約金額百億円に対し当時四十五億円にも上る機器を北米から買い付ける必要があったのだ。

入社二年半に満たない若輩の私であったがその広島転勤がのちに私の目を世界に広げさせてくれたと言っても過言ではない。

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しかし寂しかったのは、やはり周りにグローバルな観点から世界に目を向けて商売を語り合える仲間が居ないことであった。

その寂しい心を癒やしてくれたのが平和公園のすぐそばにある会社から、まばゆいばかりの夜の世界「流川」や「薬研堀」に向かう途中にある「まなか」という居酒屋であった。

まなかの主人は温厚な人で、私が遥か北の国から来た独身の若者と知って瀬戸内海の小魚を仕入れて私に振舞ってくれた。中でも忘れがたい小魚はデビラと小イワシの刺身であった。私がそれまで知っているイワシは、七つ星といって脂が乗って丸々と太った北海道のイワシであり、小さく淡白な瀬戸内海のイワシとはまるで違っていたのには驚かされた。

主人は丁寧に包丁を入れて中骨を取ってくれ、それにわさび醤油を付けて口に含むと添えた薬味のある野菜の味と相まってまさに味の芸術のような旨さであった。

一方、デビラは名の通り手の平ほどの小さなカレイの干物であり、それをシシャモの様に軽く炙ると表面に油が浮き出し、頭ごとカリカリと食べることができる。デビラと熱燗の加茂鶴は、仲間がいなくて寂しい私の心をしみじみと癒してくれた。居酒屋まなかの存在は私のパンドラの箱の片隅に潜む希望の灯となった。

広島には小さな居酒屋から「酔心」で代表されるような大きな料亭まで、瀬戸内海の酒と肴を楽しめる店が多い。一方、旨い酒と肴を堪能したあと繰り出す流川や薬研堀界隈にはバーやクラブがひしめく華やかな世界が広がっていて、私は支店の社員がよく通っていたその内の一つ、バー「サタン」に立ち寄る日が続いた。

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