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結婚に焦り、7歳下の彼を狙おうとする憐れな33歳女。男には4年も付き合っている彼女がいて…

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結婚に焦り、7歳下の彼を狙おうとする憐れな33歳女。男には4年も付き合っている彼女がいて…

今となっては昔のことですが、港区に沙羅という女が生息していました。

「今夜、食事会あるんだけどどう?」と言われれば飛び入り参加して、必死に“彼氏候補”を探したものでした。

ある日、ようやく彼氏ができて食事会に行かなくなりましたが、その彼にも…。

残念に思って2年半ぶりに港区へ近寄ってみると、そこには以前と全く別の世界が広がっていたのです。

▶︎前回:ソファでゴロゴロしていたら、ついに…。同棲解消を告げられた後も、居候を続ける女に起きた悲劇



東京都港区、西麻布。この場所にはかつて、男女の欲望が渦巻いていた。

だから私は西麻布の交差点へ行くたびに、不思議な気持ちになる。

なぜならば10年前は、この交差点を通れば必ずと言っていいほど知り合いの誰かに遭遇し、そこから「飲みに行こう!」となって、明け方まで出歩くのがよくあるパターンだったから。

週末になればタクシーは捕まらず、まるでバブル再来のような異様な盛り上がりがここにはあった。

でも今や、交差点界隈は閑散としている。

人がいることには、いる。けれども昔と変わったのは、みんな行きつけの店へと直行し、外様は決して受け付けないこと。

お店の扉を開けると、そこにはクローズドな空間とコミュニティーが存在していて、知り合いでないと入りにくい雰囲気を醸し出しているのだ。

― いつの間に、変わっちゃったんだろうなぁ。

私は、時代の変化を嘆かずにはいられない。しかし、街が変わったのではない。人が変わったのだ。

そんな西麻布の交差点から、タクシーで3分ほどの場所にあるカラオケ付きの個室バーで、私はまさに“新世代の港区男子”と一緒にいた。


新世代の台頭と、追いやられてきた古株たち


今夜は、昔よく遊んでもらっていた7歳上の理恵さんから、久々に呼ばれた会だった。

「若いイケメンが来るよ」とのことで、私はいそいそと出かけたのだけれど…。たしかに、男性陣の平均年齢はかなり若い。私の隣にいる恒星くんは、まだ26歳だという。

「26歳かぁ…。若いね」

そう途方に暮れていると、彼は爽やかな笑顔でフォローしてくれた。

「そんな。沙羅さんも変わらないじゃないですか」
「若いのにしっかりしてるね」
「そういうセリフ、ダメですよ」

26歳にしては、落ち着いている雰囲気の恒星くん。聞けばIT系の経営者らしいが、一見派手には見えない。

羽織っているジャケットはたしかにブランド物だけれど、それも小さなロゴが入っている程度。目を凝らさないと全然わからない。

「沙羅さん、飲んでますか?ほかに飲みたい物があれば、オーダーしますよ」
「ありがとう。今いただいているシャンパンで十分です」
「何かあれば、遠慮なく言ってくださいね」

― 何なの、この26歳…。場慣れしすぎじゃない?

最初は、そう思っていた。けれども会が進むにつれて“新世代の港区男子”がいかにスゴいのかを、目の当たりにしたのだ。



食事会スタートから1時間も過ぎると、場もほぐれてきて、会話も露骨な内容になっていく。

すでに酔っ払っている理恵さんは、先ほどからシャンパンをものすごい勢いで飲んでいる。そしてあろうことか、恒星くんに絡み始めたのだ。

「で、恒星くんはどういう子がいいの?」
「僕ですか?僕は、落ち着いている女性ですかね…」
「またまた〜。どうせモデルとか女優とか、インフルエンサーみたいな子がいいんでしょ?こんなカッコよくてお金もあったら、いろんな女性が寄ってきそうだし」

イヤな絡み方をしているので、止めてあげようかなと思ったときだった。彼はとても上手に、理恵さんをあしらったのだ。

「そんなことないですよ。僕、肩書で女性を選んだりしないので。むしろ、そういう考え方しかできない男性ってダサくないですか?」

まっとうすぎる意見に、何も言えなくなる。そして次の一言に、私も理恵さんもしばらく黙り込んでしまった。

「肩書にこだわっている男性って、僕たちよりだいぶ上の世代な気がします…」



たしかに、私たちの世代は“肩書を持っている美女”が強かった。

港区に生息する男性陣は夜な夜な網を張り、そんな彼女たちをどうにかして狩ろうとしていたものだ。

モデルや女優。タレントに、女子アナ…。それは女優の卵、女子アナ予備軍でも良かった。

とにかく男性陣は容姿端麗なことに加えて、一緒にいることで自分の価値が上がるような“アクセサリー的な女性”を求めていたのだ。

それは女性陣にも言えることで、自分の価値を十分理解していた。そして、それを生かす方法もまた熟知していたのである。

けれども、今はどうだろう。ひと昔前だったら港区のフロントラインに立っているような、若手港区男子たちからも、一切のギラつきは感じられない。

むしろ皆、カジュアルでスマート。お酒は飲むけど人に無理やり飲ませたりはしないし、会話を楽しんでいる。

「…ちなみに恒星くんって、今は彼女とかいるの?」

話しているうちに、彼の人柄が素敵だなと思えてきた。しかし恒星くんの回答に、私も理恵さんも再び驚いてしまったのだ。

「はい、いますよ。もう4年くらい付き合ってますね」


永遠の愛を誓えますか?


「えっ!彼女、いるの…?」

私も理恵さんも、同じタイミングで同じセリフを言ってしまった。たしかに、こんな素敵な人ならば彼女くらいいるかもしれない。

でも堂々と宣言する人は、久しぶりに見た気がする。そして何より、交際期間が長い。

― 26歳で4年ってことは…。22から付き合ってるってこと!?

「で、でもさ…。遊びたいとか思わないの?ずっと彼女だけってこと?」
「そうですね。あんまり遊びたいとかないかもです。今日も先輩に呼ばれたので来ただけですし。でも、飲むのが嫌いなわけじゃないんですよ」
「そうなんだ…」

これまで出会った港区おじさんの中に、ここまで爽やかで一途な人などいただろうか。

もちろんどこかにはいるんだろうけれど、少なくとも西麻布界隈で毎晩シャンパンを開けまくっている人たちの中にはいないと思う。



「なんか素敵だね。彼女とはどこで出会ったの?食事会?」
「いや、食事会とかほぼしないので…」
「そうなの!?じゃあどこで出会うの?」

未知の世界すぎて、わからなくなってきた。でも優しくて真面目な恒星くんは、私のくだらない質問にも丁寧に答えてくれる。

「アプリが圧倒的に多いですね。あとは仕事先で、とか…」
「そうなんだ」

出会いといえば、食事会だった。

いい人に出会うためには、そもそもいかに“いい人脈”を作るかが大事で、男女問わず太いパイプを持っている人に群がったものだ。

でも今はそんなことしなくても、簡単に出会えてしまうらしい。

「恒星くんの彼女は幸せだね、こんなに素敵な人と付き合えて。…私ももっと、女を磨かないとだわ」

思わず、本音が漏れてしまった。すると照れたように笑いながら、彼はこう言ったのだ。

「そうですかね?まあ女性を、容姿とか肩書で判断しないってだけです。それに今って、みんな可愛いですし。それより気が合うとか、優しいとか…。中身のほうが、はるかに大事です」

― 待て待て。港区は、いつからこんな健全な街になったんだ!?

一旦落ち着くために、私は手に持っていたシャンパンを一気に飲み干した。



「じゃあ、また」
「はい。ありがとうございました」

連絡先は交換したけれど、もちろん恒星くんから連絡など来るわけがない。翌日お礼のLINEを送ってみたけれど、社交辞令だけ返ってきて終わってしまった。

「もしかしてだけど…。私って、港区でオワコンなのかな」

そもそも“オワコン”という言葉自体が古いのかもしれないけれど…。私の知識や経験は、自分より年上の人たちに培ってもらったものだから、もうどうしようもない。

昔は皆、もっとギラギラしていて欲にまみれていた。

でもそれがパワーとなり、そして様々な化学反応を起こして、西麻布という街の独特なカルチャーを生み出していたのだ。

そこが面白かったけれど、今はギラギラしていたら「カッコ悪い」と言われてしまう。そもそも男女が、お互いの魅力をアピールし合って全力でぶつかり合うなんてことは、もうないのかもしれない。

「ガッツリと、方向転換が必要なのね」

そう思った途端、居ても立ってもいられなくなった。

私はクローゼットの扉を開け、時代遅れの洋服をバサバサとゴミ袋に詰めていったのだった。


▶︎前回:ソファでゴロゴロしていたら、ついに…。同棲解消を告げられた後も、居候を続ける女に起きた悲劇

▶1話目はこちら:同棲中の彼にフラれ、婚活市場へと舞い戻った33歳女。そこで直面した残酷な現実とは

▶NEXT:9月26日 月曜更新予定
動き出した“落ちぶれ港区女子”。ある相手とデートすることになって…?


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