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イイ男だと思ったのに、200万円の詐欺にあってしまった…。ダメ男に惹かれる女の顛末

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イイ男だと思ったのに、200万円の詐欺にあってしまった…。ダメ男に惹かれる女の顛末

女医の世界には「3分の1の法則」というものが存在する。

「生涯未婚」「結婚した後、離婚」「結婚生活を全うする」それぞれの割合が、ほぼ3分の1ずつとなるというものだ。

彼女たちを取り巻く一種異様な環境は、独特の生活スタイルを生み出し、オリジナリティーに富んだ生き方を肯定する。

それぞれの女医は、どんな1/3の結末をむかえるのか…。

◆これまでのあらすじ

紗奈は、ダメ男に惹かれやすい。現在同棲中の直太朗も、働く気のない自称ライターだ。しかし、同じく恋愛傾向にある妹の友紀奈から、ハイスペ男と付き合うことになったと報告を受ける。焦りはじめたある日、同僚の長谷部に食事に行ったが…。

▶前回:ダメ男に惹かれてしまう32歳女。デート代は自分持ち、プレゼントも毎回20万以上だが…



Vol.4 血液内科・紗奈(32歳)の場合【後編】


「ねえ、紗奈。俺のスーツ知らない?」

長谷部との食事を終え、紗奈が部屋に戻ると、直太朗がクローゼットのなかを漁っていた。

「ええ?スーツ…?」

紗奈が怪訝な表情で聞き返す。

年中スウェット姿の直太朗にとって、もっとも縁のないものだが…。

「うん。俺がここに来たとき、持ってきてたと思うんだけど…」

確かに、2年前に直太朗がこの部屋に転がりこんできた際に持ち込んだ、数箱の段ボールのなかに入っていた気もする。

「あ、こっちにあるかも!」

紗奈は寝室に移り、ウォークインクローゼットのなかをのぞく。

もう着なくなった流行から外れた服が並び、研修医時代に使っていたケーシーまで出てくる。

さらに奥を探ると直太朗のスーツを見つけた。ワイシャツにネクタイにと一式そろっており、一応クリーニング済みではある。

彼に手渡し、探していた理由を尋ねると、意外な発言が飛び出す。

「面接を受けに行こうと思って。俺、就職しようと思っててさ」

「ええっ!?急にどうしたの…?」


「ほら。俺ももう30歳も近いしさ。いつまでもフラフラしてられないなって、前から思ってたんだ」

直太朗が迷いのない晴れやかな表情で言った。

― 直太朗なりにちゃんと考えてたんだ!

毎日ゲーム三昧の堕落しきった生活のなかに、何かしら危機感を抱いていたのだと思うと、紗奈は嬉しくなる。

「でも直太朗、小説は…いいの?」

「それは…。まあ、仕事しながらでもできるし」

― 今まで散々時間があったのに、執筆している姿みたことないけど、仕事をしながら小説を書くなんてできるのかな…。

疑問は残るが、前に進もうとする彼の姿に、紗奈は成長を感じた。

妹の友紀奈にしても、幸せになろうと新たな道を歩き始めている。

― みんな、人生の転機を迎えているのかな。私も、ちゃんと自分の将来のことを考えないと…。

ふと、自分に好意を持ってくれている整形外科医の長谷部のことを思い出す。

もしかしたら、直太朗と別れて、彼と一緒になること本気で考えるタイミングなのかもしれない、と紗奈は考え始めていた。





直太朗が就職活動を始めて、2週間ほど経ったある日。

20時半ごろ、紗奈は仕事を終え病院を出て、駅に向かっていた。

「紗奈さん、今帰りですが?」

下の名前で呼ばれてドキッとする。声の主が誰であるかはすぐにわかった。

「あ、長谷部…先生…」

実は、初めて一緒に食事をしたあと、もう1度デートに行き、紗奈はそのとき交際を申し込まれていたのだ。

まだ、返事はしていないが、なんとなく気まずい。

告白をしたあとの長谷部は、積極的だった。アメリカ帰りというのも影響しているのだろう。

毎日のようにLINEを送ってきては、まるでもう付き合っているかのような愛の言葉を囁いてくることもある。

紗奈としてもそんな大胆なアプローチを受けた経験はなく、だいぶ心も長谷部のほうへと傾きかけていた。

「会えてよかった。実は…」



― ええ…なに!何を言われるの…!?

紗奈は身構えるが、告げられた内容は予想していたものとは違った.

「また、アメリカに行くかもしれなくて…」

「ええ…。海外赴任てことですよね。それは、確定なんですか?」

「おそらく…。でも、半年ぐらいでいったんこっちに戻ってくるとは思います。その先はまだ…」

長谷部へと心が傾きかけていただけに、紗奈のなかに落胆はある。ただ、どこかホッと息をついている自分がいるのも感じる。

「本当は、紗奈さんにもアメリカに来てほしいけど、すぐにそんな都合もつかないだろうし…。だから、半年待ってもらえませんか?日本に戻ってきたら、結婚してほしい」

結婚という言葉を聞いて、紗奈に再び緊張感が走る。

そして、長谷部は視線を合わせ、力強く見つめる。

「僕はあなたに支えてほしい」

そう言うと、彼は軽くうなずくように頭を下げた。

時間にして5分間ほどしかなかったが、濃密なやり取りをしたように感じ、紗奈は疲労感に襲われる。

長谷部の真剣な思いは伝わった。しかし、彼の言葉に引っ掛かりを感じた。

それは、長谷部の発した「支えてほしい」という言葉だ。

彼は、自分を陰で支えてほしいというようなニュアンスの言葉をよく口にする。

良くも悪くも、医師としての“ワガママさ”や“傲慢さ”が見える。しかも、そこに、女は仕事を二の次にして、男を支えるものだという固定観念があるように紗奈には聞こえてしまう。

― 私だって医者として、バリバリ働きたいんだけど…。

実際に、医師同士の結婚は多いが、お互いの働き方や理想に対する不満が、不仲の原因となるケースをよく耳にする。

返答に迷っていたとき、鞄の中のスマホがブルッと震えた。

友紀奈からの着信だ。

― ナイス、タイミング!

「あ、すみません。急ぎの電話が入ったもので…」と断り、紗奈はその場を離れた。

ほっとしたのもつかの間、電話に出た瞬間、紗奈はフリーズする。

「私、また騙されちゃった…」


騙された…と聞いてすぐに察しがつくのも、やはり姉妹である。きっと、前回会った時に嬉しそうに話していた大企業に勤めている彼のことだろう。



「騙されたって、もしかして…。例の、大企業に勤めてる彼のこと…?」

「うん。急に連絡がとれなくなっちゃって…」

話を聞くと、彼と何度か会ううちに外貨投資の話を持ちかけられたいう。

最初は少額で始めたところ、儲けが出たので、額を上げていった。

― 典型的な詐欺の手口じゃないの。なんで気づかないかな…。

安易な行動をとる妹に、ついあきれてしまう。

「で、最終的にいくら投資したの?」

「200万円…」

「そんなに!?」

紗奈は、妹を責めそうになったが、気持ちを抑えた。

「そういったトラブルの相談窓口があると思うから、まず連絡してみたほうがいいよ。今度、私も話を聞くから」

電話を切ろうとすると、友紀奈がつぶやいた。

「慣れないタイプには手を出さないほうがいいのかな。やっぱりダメだね…私たち」

― 私たち…ってやめてよ!

そう言い返そうとしたが、ひとまずそのまま電話を切った。



― なんだか、どっと疲れたわ。

最寄り駅の表参道につき、『Essence(エッセンス)』で中華を多めにテイクアウトして紗奈は家に戻る。



「ただいま~。ゴハン買ってきたよ~」

玄関から呼びかけても返事がない。

リビングへと進むと、直太朗がスーツ姿のままこちらに背中を向けてしゃがみ込んでいた。

「直太朗…?」

振り返った直太朗の目には、涙が溢れていた。

「えっ!どうしたの!?」

紗奈は慌てて傍らに腰をおろす。体に手を添えると、直太朗は声を震わせながら言った。

「就職、全然うまくいかなくて…。俺、やっぱりダメだ…」

この2週間ほど、いろいろな会社に面接に出向いてはいるものの、箸にも棒にも掛からず、打ちのめされたという。

「俺のこと、もう見捨てるよね…?」

直太朗が頼りない声で訴える。紗奈は、それをすぐに否定はできなかった。

「知ってるんだ。俺、見ちゃったんだよ。紗奈が、男の人の車から降りてくるところ…」

長谷部と最初に食事に行ったときのことを言っているに違いない。マンションの前まで送ってもらったのを、目撃されていたのだ。

「焦ったよ…。紗奈がほかの男のところに行っちゃうかも…って。そりゃそうだよね。俺、遊んでばっかりだし。だから慌てて、『就職を考えてる』なんて言っちゃって…」

「そっか…。それでスーツを探し始めたんだね」

直太朗が顔を上げ、紗奈を見つめる。

「俺、紗奈のこと大好きなんだよ。だから、離れたくない。捨てないで…」

その目から、大粒の涙が次々とこぼれ落ちていく。

― 私、やっぱりこの人を放っておけない!

紗奈は、直太朗を強く抱きしめ、頭を撫でた。

「大丈夫。捨てたりなんかしないよ。安心して」

長谷部と一緒になれば、安定もしているし世間体もいいかもしれない。でも、それは自分の求めている幸せとは違う。

― 私は、支えたいんじゃない。こうして、狂おしいほどに求めて、甘えてほしい…。

紗奈は、かつて父親に褒めてもらいたくて、医学部を目指して勉強に打ち込んだ日々を思い出す。

愛情に飢え、その影響で欠落してしまった感情が、強く甘えられることで満たされる感覚をおぼえるのだ。

― 長谷部さんには申し訳ないけど…。

紗奈は、告白を断る決意をする。肩の荷がおり、体がフッと軽くなるのを感じた。

そこで、改めて直太朗の姿を眺める。お腹に肉がついたせいで、スーツのウエストがきつそうだ。

「お腹パツパツじゃん…」

紗奈がそう言うと、直太朗が顔をクシャクシャにしながら照れ笑いを浮かべる。

「ロードバイクを買ったら、一緒にツーリングしようね」

直太朗は嬉しそうに頷いたが、「あ、でも…」と思い出したように言う。

「ロードバイクじゃなくて、電動バイクもいいなと思ってて…」

紗奈は思わず吹き出してしまう。

「もう、なんだって買ってあげるよ」

― 私はきっと結婚に向いてないんだな…。

でも、今はそれでいいと思える。


▶前回:ダメ男に惹かれてしまう32歳女。デート代は自分持ち、プレゼントも毎回20万以上だが…

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