男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:幼稚舎出身、大手商社勤務の彼に気に入られてデート。絶対逃したくないと思ったのに…
「裕樹、なんで結婚を決めてくれないの?私と結婚したくないってこと?」
交際してもう1年半になる裕樹。彼に対して、私は何度この言葉を投げかけただろうか。
「いや、分かってはいるんだけど…」
喧嘩はするけれど、毎回なんだかんだ仲直りをしてきた。
先日35歳になった裕樹と、今年の11月で30歳になる私。結婚をするのにはもう十分な年齢だ。
そもそも日系のサラリーマンといえども、大手IT会社の社内ベンチャーで役員として働いている彼は、十分すぎるほど稼いでいる。生活も安定しているし、結婚に対して経済的な不安や障害は何もない。
それなのに、裕樹は結婚にずっと二の足を踏んでいる。
「彩美はまだ若いし、そこまで結婚を焦らなくてもいいんじゃない?」
そんな呑気なことを言い始めた彼に対し、若干の怒りさえ湧いてくる。
― 何を悠長なこと言っているんだろう?
結婚願望がないのは彼自身のせいなのか、私のせいなのか…。早く“結婚”という確約が欲しい私は、焦っている。
Q1:交際当初、男が見逃していた重要なキーワードは?
裕樹に出会ったのは、友達の沙里が開催した食事会の場だった。
沙里から事前に、裕樹のプロフィールは聞いていた。事前情報から軽い感じかと思っていたけれど、実際に会うと落ち着いていて、いい意味でイメージと違っていた。
そしてこの2対2の食事会の席で、裕樹は最初から私に積極的だった。
「彩美ちゃんは、何をしているの?」
「私は美容系のPRをしています」
現在、フリーランスでPRをしている私。仕事は不定期だけれども、楽しく働いている。
「ちなみに彩美は、フォロワーが結構いるんですよ」
そう言いながら、沙里が私のInstagramを裕樹に見せる。すると、裕樹は興味津々と言わんばかりに、スマホをのぞき込んだ。
「こんなにフォロワーいるの?すごいね」
「いえいえ、私なんて全然ですよ〜。他にもっとすごい子はたくさんいますから」
そう言っても、まだマジマジと私の投稿を見ている裕樹。すると真顔でこんなことを言い始めた。
「彩美ちゃんは、モデルもしているの?」
元々ゴルフが好きで、SNSでは一応、美容以外にもゴルフ推しで活動している。ゴルフ関連のPRをすることも多いので、必然的にゴルフウェアの投稿も多かった。
「まさか(笑)。ただの一般人ですから」
「そうなんだ。スタイルもいいし、モデルさんかと思った」
― この人、すごく褒めてくれる…。いい人だな。
そう思っているとこの会の翌日に裕樹から誘われ、二人で食事へ行くことになった。しかも彼が予約してくれていたのは『TAKAZAWA』だった。
「私、ここ来てみたかったんです…!!初めて来られて嬉しい♡」
ここを初デートで予約してくれた裕樹はセンスがいい。
「そんな喜んでもらえるなら、予約した甲斐があったよ」
裕樹はとても優しくて、そして大人の余裕もあり博識で話も面白い。また、旅行が好きということも発覚した。
「じゃあ『アマネム』も行ったことあるんですか?」
「うん。あるよ」
「いいなぁ…あそこへ泊まるのが、夢なんです」
「そうなんだ。……良ければだけど、今度一緒に行く?」
「え!!いいんですか!?」
まさかのお泊まり旅行が決まってしまった。でも裕樹のことをいいなと思っていたし、もちろん行くに決まっている。
「嬉しい!楽しみです」
「ちなみに彩美ちゃん、今彼氏はいるの?」
「それが今はいないんですよ〜」
「そっか…。僕さ、彩美ちゃんのことすごくタイプで。よければ付き合わない?」
こうして、私と裕樹の交際が始まった。
紳士的な裕樹はなんでもしてくれて、もちろん全額支払ってくれてるし、夢のように楽しい時間だった。
しかし交際1年が経った頃から、私はふと気がついてしまった。“結婚はいつするのだろうか”と…。
Q2:男が結婚を躊躇している理由は?
私と裕樹は喧嘩をすることもあったけれど、年上の余裕からなのか、いつも裕樹が折れてくれていた。
あれは裕樹の車で、鎌倉へ行った時のこと。喧嘩の内容は忘れてしまったけれど、私たちは食事中に喧嘩をしてしまった。そのまま車内へ戻っても、険悪なムードは続いている。
「今日のお店は彩美が『行きたい』って言うから予約したお店だよ?せっかくの楽しいドライブなんだから、もう機嫌は直そう!」
こうやって、いつも優しく諭してくれる彼に多少甘えていたのかもしれない。
でも私も、ズルズルと喧嘩を引きずるようなことはしなかったし、ちゃんと謝ってもいた。
「…そうだよね、もう何も言わない。ごめんね」
「うん。…ってヤバ。彩美、現金持ってない?」
タイミング悪く、駐車場の料金がクレジットカード非対応だったらしい。
「今日はお財布持ってきてないんだ〜。現金ないの?」
「1万円だったらあるんだけど、1,200円で崩すのもなぁと思って。まぁいっか」
「キャッシュレスが当たり前の時代なのに、現金のみって厳しいよね」
「本当それ。仕方ないけど…諭吉を崩すか」
悲しい顔をして一万円札を崩す裕樹が可愛くて、2人で車内で笑い合った。
そして家に帰る頃にはお互いすっかり喧嘩のことなど忘れ、いつも通りになっている…という、いつものパターンだった。
それに家事が苦手だったかと言われれば、そうではない。
毎回彼の家へ行っていたけれど、家でよく料理をした。スーパーで一緒に買い物するのも、私は楽しかった。
「裕樹、今夜は何が食べたい?」
「彩美のご飯美味しいから、なんでも嬉しい」
「じゃあ適当に買っちゃうね。スーパーでの買い物って、楽しいよね」
「そうだね。しかし彩美、そんなに材料いる?」
「大は小を兼ねるって言うし。余ったら冷凍しとけばいいから」
「冷凍してても食べる時間ないかもしれないから、全部買わなくて大丈夫だよ」
そう言って、裕樹はカゴの中に入れていた食材や調味料をいくつか戻してしまった。他のところは寛大なのに、裕樹は変なところで財布の紐が堅い。
「裕樹って、おうちのご飯嫌いなの?他のところは緩いのに」
「もったいないのが嫌いなだけだよ」
「ふ〜んそうなんだ。とりあえず、お会計してもらってる間に袋に詰めちゃうね」
週末はいつも一緒にいたし、料理もちゃんとしていた。
一緒にいる時は“楽しい”と言ってくれていた。それに私は、彼にとってある意味自慢の彼女だったらしい。
「そういえば、僕の友達が彩美のインスタ見ているみたいだよ」
「そうなの?」
「うん。可愛い子だねって褒めてた」
こういう話をする時の裕樹は、どこか鼻高々で嬉しそうだ。
「ふふ。嬉しいな〜♡」
「彩美は影響力があるね」
喧嘩もするけれど仲は良い。特に悪い点は見当たらない。それなのに、どうして彼は結婚を決意しないんだろうか…。
― もしかして、一生独身主義者!?
そんな疑惑と不安さえ抱いている。
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2022年9月17日