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「バレてないと思ったのに…」夫と一緒にいてもスマホが気になる妻。こっそり見ていた、意外なモノ

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「バレてないと思ったのに…」夫と一緒にいてもスマホが気になる妻。こっそり見ていた、意外なモノ

お金も時間も自由に使える、リッチなDINKS。

独身の時よりも広い家に住み、週末の外食にもお金をかける。

家族と恋人の狭間のような関係は、最高に心地よくて、

気づけばどんどん月日が流れて、「なんとなくDINK」状態に。

でも、このままでいいのかな…。子どもは…?将来は…?

これは、それぞれの問題と対峙するDINKSカップルの物語。

◆これまでのあらずじ

外資メーカーで働く彩奈は、大学のサークル時代の同期・祐樹と結婚。なんとなく子どもを持たないまま、2年経過。子育てに忙しい友人や、キャリアアップしている友達を見て焦りを抱く。

▶前回:「ママってそんなに偉いの?」同窓会で子持ち女にマウンティングされ、悶々とする32歳DKNKS妻は…



彩奈・32歳。DINKSライフが楽しくて…【後編】


大学時代の同級生で外資金融勤務・菜々の家にお邪魔した日。

着実にキャリアアップしていた彼女に少し引け目を感じた。

思わず1人になって開いたのは、ずっと気になっていた、有名セミナーの公式サイト。

「“30代女性のためのキャリア構築セミナー”か…」

私のように今後のキャリアに悩む女性を集めてグループワークを行い、キャリアを見つめ直すセミナーだ。

― このセミナーに参加すれば、“中途半端”な自分から抜け出せるかな…。

レイナのように子どもを持つ決心がつかない一方、菜々ほどバリバリと働いてもいない現実。

この中途半端さがもどかしく、「キャリアップくらいはしないと」という気持ちになったのだ。



1週間後、浜松町駅近くの高層ビル内にあるカンファレンスルームにいた。大きく広がる部屋の窓からは、浜離宮を一望できる。

今日は、申し込んだ全3回のセミナーの初日だ。

「すみません。隣、いいですか」

開始3分前、入ってきた人から不意に話しかけられた。「いいですよ」と答えようと顔を上げて、私はハッとした。

― な、なにこの人。すっごく美人なんですけど…。


身長170cmくらいでスラッとしたモデル体型。切れ長の目に、綺麗な鼻。薄い唇に、サラサラの髪…。

見るからに上質なパンツスーツに橙色のデルヴォーのタンペートを合わせて、上品なキャリアウーマンといった雰囲気だ。

「どうぞ。座ってください」

彼女は「どうも」とにこやかに微笑み、私の隣に腰掛けた。

その瞬間に司会者が話し始め、セミナーが始まった。



グループワークも交えたセミナーの内容は面白く、新鮮だった。

参加者は大手企業に勤める優秀な女性ばかりで、共感したり、刺激になることが多い。

中でも、隣に座っていた女性・絵梨花さんは印象的だった。彼女は37歳・今ノリにノっているITベンチャー企業のCHO。

幹部だけあって、彼女は話が抜群に上手だ。なんでも絵梨花さんの会社は今、絶賛採用活動中なのだという。

「彩奈さん、ウチの会社に興味ない?ちょうど今、マーケティングの経験がある人を募集していて」

「えー、ステキ。彩奈さん、いいじゃないですか!挑戦してみたら?」

横で聞いていた女性が、無邪気に勧めてくる。

「ぜひ考えておいて!また次回のセミナーの時にでも、答えを聞かせてください」

新卒からずっと大企業で働いてきた私にとって、ベンチャー企業は未知の世界。

でも話を聞く限り、魅力的な企業だ。勢いも話題性もある。少人数だから大変だろうが、相応のやりがいはあるだろう。

それに「何か変わらなきゃ」と思っていた自分にとって、「転職」は最適な手段に思えた。





セミナーが終わると、私は乃木坂のマンションに早足で帰宅した。早速夫に転職のことを相談したかったのだ。

しかし、祐樹はシャワー中のようだ。

冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを取り出し、ソファに座った。そして、何気なくスマホをいじり、Instagramを開く。

友人たちのストーリーズを見ていると、菜々のアカウントが流れてきた。

「“シンガポール出張”って…さすが菜々。ビジネスクラスよね、これ」

広々とした機内で、ワインを楽しむ様子がアップされていた。

― すごいな…。私も、頑張らなくちゃ!

ますます、「キャリアアップしたい」という気持ちが湧いてくる。

そのまま次々と流れてくる写真を眺めていると、今度はレイナの投稿が目に入った。

健司が撮影したのだろうか、ストーリーズには赤ちゃんと写るレイナの眩しい笑顔が投稿されている。

― “息子を連れて家族でお出かけ”か。

レイナの息子のふっくらとした白い頬を見つめていると、胸がチクチクと痛む。

さっきまで「私は仕事で充実した人生を送る!」と意気込んでいたのに。

仕事では到底手にできない、別の種類の幸福を、レイナはすでに手にしているように見えた。

― 赤ちゃん、かわいいな…。

ぼんやりと写真を眺めていると…。

「彩奈?おかえり、セミナー、どうだった?」

祐樹に背後から話しかけられて、ハッと我に返る。彼がシャワーから出たのに気がつかなかった。

「うん、ためになったよ。それに、転職のお誘いも受けたりしてね」

「転職?今日のセミナーって、転職セミナーだったの?」

怪訝な表情の祐樹に、絵梨花さんから会社に誘われたことを話した。

「すごく面白そうな会社なの。私の経験も活かせそうだし。今まで転職なんてあまり考えてこなかったけど、話を聞いたらアリかなって思えてきた」

祐樹の顔が、なぜだかあまり明るい表情でないことに、話し始めてすぐ気がついた。

焦りからか、思わず早口になる。

今の会社と絵梨花さんの会社の違い。そこで手にできるチャンス。目の前に広がる可能性を、自分でもおかしいくらいに必死に説明した。でも…。

「彩奈さ、今転職して、本当にいいの?」


ゆっくりと呟かれた言葉。

真剣な顔をした彼が、「彩奈、最近様子が変だよ」と続ける。

「いつも上の空っていうか…。しょっちゅうインスタを開いては、ため息ついてるし。

自覚ないかもしれないけど。彩奈、レイナの投稿を見る時、すごく怖い顔してるよ。特に、子どもの写真。いつも暗い表情で、黙り込んでじっと見つめてる」



「…」

「転職も大事だと思うけど…。俺たち、ちゃんと子どものことについて、話し合った方がいいと思う」

見ないようにしていた自分の本心を、祐樹に言い当てられた気がした。

今の生活は、自由で楽で、快適だ。お金も時間も、贅沢に使うことができる。

「子どもがいないから不幸だ」なんて、全然思わない。この日常がずっと続いて、祐樹と2人、楽しく歳を重ねていけるなら、それはそれで、私は満足だ。

でも…その一方で、私は「子どもを持つ幸せ」に憧れを抱いてもいる。その憧れは、歳を重ねるごとに少しずつ、でも確実に強くなっていた。

「キャリアアップしたいって気持ちも、否定しないよ。

でも俺、“なんとなくこのまま過ごす、ってこと”が本当にいいのかなって最近思うんだよ。“なんとなく”今の生活を続けているうちに、妊娠が難しい年齢になって、もしも後悔することになったら。取り返し、つかないから」

「そうだね…」

祐樹がそんなふうに考えていたなんて、知らなかった。

以前はもっと自然に、祐樹と「子どもができたら」の話をしていた。

でも、いつの間にか、そんな話もしなくなっていた。

最低でも月に1度、彼と行為をする。

毎月、生理がきて、“失敗”したことが判明する。けれど、それを特に祐樹に報告もしない。彼も、追及してこない。

そんな日々をずっと繰り返していたから、お互いに…自分自身でさえ、どれだけ子どもを望んでいるのか、わからなくなっていたのだ。

「祐樹、ありがとう。私たち、あまり話し合ってこなかったんだね」

「もっと早く気づけばよかったよな。でも今、一番大切にしたいことを、一緒に考えてみよう」

祐樹が、ギュッと私の手を握る。

その手は温かくて…「この人と結婚してよかった」と思った。





1年後


祐樹と話し合った夜から、ちょうど1年。

結局、私たちは本腰を入れて妊活に取り組むことにして、今に至る。

転職はしなかった。絵梨花さんの会社は魅力的だったけれど、仮に転職してすぐに子どもを授かったら、迷惑をかけることになる。キャリアと子どもを天秤にかけて、私は後者を取ることにした。

不妊治療で有名な病院を探し、治療を開始。

他にも整体に通ったり、漢方を試してみたり…できることはなんでもやった。

仕事で忙しくしている祐樹も、初めにきちんと話し合ったおかげで、協力的に取り組んでくれている。

そして…。

「祐樹、おかえり。あのね…報告があるの」

「え、ちょっと待って、当てさせて?まさか…」

「そう、その“まさか”!」

お腹を小さくさすると、歓喜した祐樹がギュッと抱きしめてくれた。

「安定期まで、安心はできないけどね。生まれる頃には34歳になってるし…慎重にやっていかないと」

「そうだね。俺もできることはなんでもやる!」

夫婦2人の暮らしをのんびりと続けていたために、若い時よりも出産のリスクは上がっているし、体力だって落ちている。

けれど、後悔はしていない。2人の時間を積み重ねてきたから、きっと私たちは協力しあってやっていけると信じている。

「祐樹、これから改めて、よろしくね」

「こちらこそ!」

新しい3人での暮らしを想像して、私たちは微笑みあった。


▶前回:「ママってそんなに偉いの?」同窓会で子持ち女にマウンティングされ、悶々とする32歳DKNKS妻は…

▶1話目はこちら:「子どもはまだ?」の質問にうんざり!結婚3年目、32歳妻の憂鬱

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ミニマリストの夫を持つ妻には、ある悩みが…。


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