top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

「もう彼氏はいらない」不特定多数の男と遊ぶ31歳女。そんな女を変えた、秋夜の“ある出来事”とは

東京カレンダー

×

「もう彼氏はいらない」不特定多数の男と遊ぶ31歳女。そんな女を変えた、秋夜の“ある出来事”とは

「30過ぎてまで、何やってるの?」と、時に人は言う。

東京における平均初婚年齢30.5歳を境にして、身を固める女性が多い一方で、どうしようもない恋愛から抜け出せない人がいるのも事実。

他人には言えない心の葛藤、男女の関係――。

30歳を過ぎた。でも私は、やめられない。

少し痛いけれど、これが東京で生きる女のリアルなのだから。

▶前回:32歳の美人より、24歳のダサい女が選ばれる!?オーバー30歳女の、非情すぎる現実



Vol.7 麻実、31歳。彼氏は不要、グレーな関係が一番落ち着く。


「ねぇ、私のどこがすき?」

なんてことない平日の22時。いきなり私の部屋にやってきた和馬に聞いた。

「どこって…別に欲しい答えなんかないくせに、そうやって聞いてくるところとか?」

そう言いながら、和馬は私にペットボトルのコーラを渡してきたが、私は口をつけることなくサイドテーブルに置く。

「君は本当にコーラ大好きだね。私は水があればいい人だから、理解できないよ」
「水とウイスキーしか飲まない麻実の方が、変だけどな」

和馬は、笑いながら言った。

「…っていうか、もう帰っていいよ」
「はいはい、言われなくても。じゃあまた近々な」

私は玄関まで行き、あくびをこらえながら、去っていく和馬に向かって手を振った。

和馬は、彼氏ではない。アプリで見つけた、ただの見た目がタイプな男だ。

― 彼氏じゃないけど、友達でもないよな…。

さっきまで彼が横たわっていたシーツの上で寝るのは嫌じゃないし、この飲みかけのコーラだって、飲めと言われたら飲める。

でも、朝までそばにいてほしいわけじゃないし、朝ごはんを一緒に食べたくもない。

コーラのペットボトルをシンクにボトボトと流しながら思った。

私は、いつから彼氏がいらなくなってしまったのだろうと。


平日の仕事終わり。同じ音大を卒業した友美と、虎ノ門で食事をすることになった。

友美が予約してくれた『虎ノ門とだか』はお酒が進むメニューばかりだ。

私たちは結局、お互いに音楽と関係のない企業に就職したのだが、私は西麻布のラウンジで時々ピアノを弾いていて、友美は週に2回、実家で子どもたちにピアノを教えている。



友美は何年も同じ人と付き合っていて、私は3年も彼氏がいない。

お互いの現状が違いすぎて、それだけで話が盛り上がる。

私は友美の、友美は私の恋愛スタイルを良く思っていない。でもそれを否定したり説教したりせず、酒のツマミにして楽しんでいるのだ。

無駄に介入しないほうが、女の友情はうまくいく。

「ねぇ、久しぶりにアンダーズの上のバーでも行ってみる?」
「いいね!涼しくなってきたしテラス席最高かも」

私が2軒目を提案すると、友美も乗ってくれ、『ルーフトップ バー』へ向かった。



― 今が気楽でいい。男なんかいらない。

私は、アンダーズ東京のエレベーターに乗っている間、そう自分に言い聞かせていた。

私が彼氏を作りたくない理由は、過去の恋愛においてすべて浮気されてきたから。

浮気される側にも原因があると落ち込んだり、男を見る目がない自分にいら立ったりするのはもうこりごりなのだ。

それに、もう男のことで傷つきたくなかった。

この年齢で嫌な目にあったら立ち直るのに何日かかるか、計り知れない。

そんなことをぼんやり考えていると、エレベーターはバーがある最上階に到着した。

残暑が長かった今年の夏もようやく終わりを迎える。秋の香りがする、外の席が心地いい。

「外で飲むのは気持ちいいね」
「うんうん!」

私はウイスキーのロック、友美は季節のフルーツの洋ナシを使ったカクテルで乾杯する。



「よかったら、一緒に飲みませんか?」

その直後、二人組の男性に話しかけられた。

「いや、私彼氏いるんで」
「ちょっと友美!別に彼氏いたっていいじゃん。お酒飲むだけだし」

私は、笑いながら友美の肩をぽんぽんと叩いた。

友美とは1軒目で存分に語り尽くしたので、他の人とも話したかったのだ。

それに、男たちの顔は悪くなかったし、マトモそうだった。

「颯太です。IT関連の会社で営業してます」
「あ~。だからスーツなんですね」

“私担当の男”が話しかけてくる。

第一印象は、可もなく不可もない無難な人といったところだろうか。

ユーモアに長けているわけでもなく、会話のセンスもない。和馬の方がよっぽどマシだ。

― ん?え?あれ。なんで今、和馬のこと思い出したんだろう…。

私は自分にツッコミを入れ、颯太の話に無理やり集中した。

「僕、ここのバーが東京で一番好きなんですよね。新しいところが次々とできるけど、結局ここに戻ってきちゃって」
「ふ~ん」

― どうせ、どこもそんなに行ってないんでしょ。

私は颯太にバレないように鼻で笑いながら、ウイスキーを飲む。

仕事ができるわけでも、できないわけでもない。恋愛も、身近にいる女で可愛ければ社内恋愛だって構わない。

数十分話しただけで、彼の生き方が手に取るようにわかったが、そんなのどうでもよかった。別に付き合うわけじゃないから。

「ねぇ、帰るの面倒くさいからここに泊まらない?」

私は颯太の話を遮ると、笑顔で言った。


「麻実ちゃんって、こういうのよくあるの?」
「別に。たまに、かな」

友美は私たちの状況を察して帰った。きっと一緒に話していた“友美担当”の男も一緒に。

「申し訳ないけど、僕、彼女いるんだよね。それでもよければ全然!っていうか、麻実ちゃん可愛いし、すごく嬉しいけど」

― はぁ…よく喋るなぁ。

颯太が話せば話すほどダサく見え、私はその気がなくなっていった。しかし、彼はすでにホテルのフロントの人と話している。



その時、スマホにメッセージが届いた。

『和馬:今日、家行っていい?』

その文字を見た途端、胸がキュッと痛んだ気がした。

『麻実:いま家にいないよ。虎ノ門にいる』

私は、素早く返信したが、自分でも驚くほど落胆していることに気づく。

それと同時に。

「じゃ、行こうか」

颯太が私に向かって言う。もう後戻りはできない。だって、誘ったのは私なのだから。

「会えない」でもいい、「それなら明日」でもいい。なんでもいいから早く、和馬からの返事が欲しかった。

どうしてそんなふうに思うのか、自分でもわからなかった。しかし、もうホテルの部屋の前だ。

颯太がキーをドアに近づける。

「ごめん、ちょっとバーに忘れ物してきたみたい!先に入ってて」

私はそれだけ言うと、その場を駆け足で離れて、エレベーターの前でスマホを見る。

『和馬:虎ノ門なの?じゃあ、ヒルトップバーにいてよ。数分で行くから』

― えっ、和馬も近くにいるの?

私は、颯太が待つ部屋のドアに1万円札を何枚か差し込み、心の中で何度も謝った。



気持ちを落ち着かせてバーに戻ると、カウンター席にはすでに和馬がいる。

「よっ!昨日ぶりだな」

和馬はラフな格好で、少年みたいに笑った。

私は彼のことを何も知らない。どこに住んでいるのか、どんな仕事をしているのか。



フリーなのか、そうじゃないのか。年齢すらも。

会うのはいつも私の部屋だし、付き合いたいわけじゃないから、見た目さえアリならなんでもよかったのだ。

だけど今は、和馬のことを知りたいと思っている。

「和馬…ありがとう」
「ん?何が」

会ったばかりの男と、無意味な時間を過ごさずに済んだことへのお礼だ。

もちろん、そんなこと口にはしないが。

「ていうか、虎ノ門のどこにいたの?」
「自宅だけど。言わなかったっけ、俺んちココなの」

和馬は自慢げに言った。

― うそ。虎ノ門ヒルズレジデンスに住んでるの!?

「そんなことより、麻実。俺と真剣に交際しませぬか」
「なによ。その言い方」

和馬の武将のような口ぶりに、思わず笑ってしまう。

きっと彼も私と似て、女を信用していない。だから肩書で寄ってくる人を排除してきたのだろう。



「笑われると傷つくんですけど」
「ごめんごめん、恥ずかしくてつい…」

私は水を一口飲むと、改めて和馬と向き合った。

染めていないのに茶色みがかった髪と、同じ色の瞳。鼻が高いのに、目は主張していないところが好きだ。

何度も体を重ねてきたはずなのに、初恋の時のような胸の高鳴りに自分でも戸惑う。

― もし浮気されて、傷ついたら…。私、立ち直れるかな…。

そんな考えも浮かんだが、それよりも今目の前にいる人ともっと親密になりたい欲が勝った。

「いいけど、コーラは自分で買ってよね」

私は照れを隠しながら、精いっぱい答えた。

家でシャワーを浴びてきたのだろう。抱き寄せられるとふわっと石鹸のいい匂いに包まれる。

それは、今まで和馬に感じた魅力とは別の、安心感に近い匂いだった。


▶前回:32歳の美人より、24歳のダサい女が選ばれる!?“オーバー30歳女の、非情すぎる現実

▶1話目はこちら:「生活水準は下げられない」港区にしがみつく32歳女が、副業先のバーで流した涙

▶Next:9月24日 土曜更新予定
結婚願望のない彼氏と、別れない女


TOPICS

ランキング(エンタメ)

ジャンル