ちなみに瀘州市古藺県の麻辣鶏は、3年以上育てた雄鶏を使い、30種類以上の香辛料を用いた滷水で調味し、最高級の”三椒”、すなわち辣椒(唐辛子)、花椒、胡椒を用いた特製の辣油をつけて食べるのが基本。
日本で一般的に流通している鶏肉は若鶏で、身も皮も軟らかいものが多いため、鶏選びにはかなり時間がかかったが、長野県の生産者と巡り合ったことで、理想に近いものができあがった。

美麗な皮目に刮目せよ!見た目を裏切らない麻辣鶏
実際に食べてみると、火の通し方や鶏の食感に至るまで、きちんとつくられた中国の鶏料理の魅力が感じられる。まず、鶏肉はしっかりと火が通っているのに硬くない。見るからに張りのある皮は肉厚で歯切れがよく、全体がしっとりと輝いている。

聞けば「一般的に流通している鶏肉は、締めてから3日ほど経っていますが、この鶏は締めたその日に送ってもらっています。到着は月曜日と木曜日。午前中に着いたらすぐに調理し、32種類の香辛料をブレンドした滷水で中まで味を染み込ませます」と孫麗さん。
ぶつ切りにした鶏に齧りつくと、なにかが突出することのない絶妙なバランスだ。これなら辛さが苦手な方や、香辛料が苦手な方も、このままむしゃむしゃと食べ続けられる穏やかな塩加減で、日本人にも食べやすそうだ。
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一方で、麻辣鶏というからには、麻辣要素も欠かせない。そこでつけだれの油辣子(ヨウラーズ)つけて食べると、たちまち麻辣鶏の名にふさわしい、香り高く赤く痺れる料理に激変する。

油辣子(ヨウラーズ)は、「四川省産と貴州省産の5種類の唐辛子と3種類の花椒をブレンドし、その上から熱々に熱した国産の菜種油をじゅ~っとかけて作っているんです」という自慢の味。
スパイスのよさはもちろん、菜種油の独特の香りと重たさは四川らしい味の表現に不可欠な存在だ。見た目からはわからないが、油のチョイスにも孫麗さんのこだわりが感じられる。
料理を並べてみんなで食べたい!四川南方の食堂気分になれる家常菜
そんな麻辣鶏と合わせて注文したいのが、四川の家庭料理の数々だ。
まず、前菜では夫妻肺片(フーチーフェイピィェン:fūqīfèipiān)をおすすめしたい。こちらはイカとエリンギの中間のような絶妙な歯ごたえのハチノスに、筋のぷるぷるとした食感をも感じられるスネ肉の取り合わせ。臭みもないので、内臓類が苦手な方も箸が進むこと請け合いだ。


また、辛さに耐性がある方なら、回鍋肉は注文必須。沖縄産の皮付き三枚肉を、青椒(チンジャオ:青唐辛子)をたっぷり使って炒めており、テーブルに運ばれるなり、青椒の細かい粒子が舞うように香り立つので、否応なしに気分が上がってしまう。
今の季節は青椒だが、別の季節はまた違う食材の組み合わせになると思うと、再訪の楽しみも増すというもの。テーブルの上に料理を隙間なく並べ、皆で箸をつついていると、まるでの瀘州の食堂に来ているような気分になってくる。



現在、メニューは滷味各種に加え、炒めもの、煮もの、スープなど20品前後を揃えているが、「10月に瀘州からシェフが来るので、さらに料理が変わりますよ!」というから期待は高まる。
将来は料理に使う野菜を栽培したり、キッチンカーで日本を巡ることにも興味があるという孫麗さん。故郷の麻辣鶏の再現にはじまった彼女の好奇心と挑戦の旅は、まだ始まったばかりだ。

茨城県つくば市天久保1-6-15 細田ビルD101(MAP)
TEL 070-1536-1888
ランチ11:30-14:00 ディナー17:00-22:00
月曜定休
★麻辣鶏は地方発送OK。真空パックで1羽3,960円(4~5人でシェアできる大きさです)。
TEXT&PHOTO サトタカ(佐藤貴子)