top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

イイ雰囲気の男友達と、2人きりでドライブしていたら。彼の様子が、いきなりおかしくなって…?

東京カレンダー

×

イイ雰囲気の男友達と、2人きりでドライブしていたら。彼の様子が、いきなりおかしくなって…?

「あの頃の自分が思い描いていたオトナに、ちゃんとなれてる?」

高校卒業から12年。

これは様々な想いを抱えて上京してきた、男女の物語だ。

恋に仕事に、結婚に。

夢と現実の狭間でもがく30歳の彼らが、導き出した人生の答えとは?

◆これまでのあらすじ

12年前、恋人の大和を謎の死で失った千紘は、東京から実家のある愛媛へ戻っていた。同じタイミングで実家に戻ったムラタクは、弁護士だった父の書斎から”あるもの“を見つける。

それは大和が死んだ翌日、亜美が「逮捕されないか知りたい」と相談に来ていた記録だった。2人は亜美に真相を聞きに行こうと決意する。

▶前回:男友達が電話中に、2枚の画像を送りつけてきて…?写真を見た女が唖然としてしまった、その内容は



夏原千紘、29歳。知りたくなかった親友の秘密


「お母さ~ん。私、ちょっと出掛けてくるから」

「誰と?…もしかして、千紘の彼氏!?」

家に引きこもっていた私が突然「出掛けてくる」と言い出したせいか、母はニヤニヤしながら玄関を覗き込んでいる。

「ただのムラタクだよ!ほら、高校のクラスメイトの」

ずっとニヤケ顔の母に「そんなんじゃないから!」と告げ、私は彼が運転する車に乗り込んだ。

「ねえ、ムラタク。…亜美が、大和の死に関わっていたってことだよね」

「多分な。会って話してみないと、本当のところはわかんないけど」

彼はハンドルを握りながら、窓の外に目をやった。視線の先には、エメラルドグリーンの清流が広がっている。

「9月にもなると、ここらへんは涼しいな」

「…涼しいね。川が自然のクーラーになってる」

亜美と浩二の新居までは、ここから1時間ほどかかる。山道が続き、車酔いしそうになった私は窓を開け、大きく息を吸い込んだ。

まだ夕方だというのに、辺りはすでに暗くなり始め、ひぐらしが鳴いている。数日前まで東京で過ごしていたのが嘘みたいだ。

「そう暗い顔するなって!ほらドライブ、楽しもうぜ!」

うつむく私の心境を察してか、ムラタクは大音量でTM NETWORKの『Get Wild』を流し始める。

リズムに乗る彼を横目に、ぼんやり窓の外を見ていたそのとき。突然、後ろのタイヤから「バンッ」と破裂音が鳴り響いた。

「えっ?ちょ、なに?」


「うわ、やったなコレは…」

ムラタクがハンドルを大きく右に回し、車体は山側の路側帯でゆっくりと停車した。

「えっ、どうしたの?」

ムラタクは「やっべ~」と言いながら車を降り、後ろのタイヤを確認する。そして戻ってくるなり「パンクしちゃったぁ」とおどけてみせた。



「えー!嘘でしょ、どうするの…?」

暗闇を走り抜けることのできないBMWの中で『Get Wild』がサビに突入する。

「スペアタイヤがあるはず。でもレンタカーだから、わかんねぇな。とりあえず業者呼ぶかぁ」

素早く三角停止板を設置したムラタクは、スマホで対処法を調べ始めた。あたりをキョロキョロと見渡すも、人通りは全くない。

私も車を降り、亜美に電話することにした。

「もしもし?ごめん亜美、車がパンクしちゃって。着くの遅れそう」

「えっ、大丈夫!?どこにいるの?1人で向かってるんでしょ」

「あと20分くらいで着く予定だったんだけど…。大丈夫、ムラタクも一緒だし」

「あっ…。そ、そうなんだ。ムラタクも一緒、なんだね。そっか」

明らかに、亜美が動揺しているのがわかった。私は言葉を続けようと思ったが、そのまま電話を切る。

そして、川を眺めていたムラタクに声を掛けた。



「亜美と電話してきた。なんか『ムラタクと一緒にいる』って言ったら、動揺してたけど」

「あぁ、そうだろうな」

「ムラタクって、なんで亜美に嫌われてるの?」

「傷つくなー!その言い方。まぁでも、避けられてるのはほんと。…俺、見ちゃったから」

川を眺めていた彼が、振り返らずに言う。私は、震える声で尋ねた。

「…何を?」

「大和が海で溺れて死んだ日、亜美が港にいたんだよ。誰かと」

「えっ…。それって、誰だったの?」

「わからないんだ」

ムラタクの言葉に、私は高校最後の夏、亜美と大和が2人きりで教室にいたことを思い出す。

― 亜美は何かを隠していた。それは、大和の死に関わること?

「結婚式にも『ムラタクは呼ばないで』って、浩二に言ってたみたいで」

「そっか…」

私は掛ける言葉が見つからず、目の前に広がる岩壁をただ眺めていた。すると彼が、思いもよらないことを口にしたのだ。


「…高校時代の千紘はさ、大和たちと4人でいつも一緒にいたでしょ?あれ、羨ましかったんだよなあ」

いきなり語り出したムラタクは、スマホに表示された1枚の写真を見せてきた。

それは修学旅行の集合写真。亜美が私に寄り添い、その後ろで大和と浩二が手を上げてピースしている。

ムラタクは一番右側で、ポツンと控えめに微笑んでいた。

「実家で見つけて思わず撮った。俺はお調子者キャラだったけど、勉強漬けだったから友達が1人もいなくてさ。この修学旅行だって、1人で山手線乗って渋谷行ったからね」

「…そうだったんだ」

「そう。千紘たちを見ては『こいつら青春しやがって』ってムカついてさ。でも大和が死んだのを境に、4人の仲が崩壊したでしょ?そのとき思った。

『あ~あ。こいつら、ただの“青春ごっこ”してただけなんだな』って」



私は何も言えず、ムラタクの横顔を見つめる。

「みんなまだ“青春ごっこ”の中にいる。大和が死んだあの日から、時間が止まってるんだ」

そう言って彼が、私の目をまっすぐ見たとき。突然、明るい光が差し込んだ。

「あっ!修理車が到着したのかも」

光の差す方へ急いで向かうと、そこに1台のバイクが停車しているのが見えた。

「すみません!ちょっと車がパンクしちゃってて…。って、え?」

バイクに乗っていた男性がヘルメットを外し、こちらを振り向いた瞬間。私は声にならない悲鳴を上げた。



長いまつげと、少し癖のある前髪。そして弓なりの眉。

バイクのライトに照らされていたのは、18歳のままの大和だった。


▶前回:男友達が電話中に、2枚の画像を送りつけてきて…?写真を見た女が唖然としてしまった、その内容は

▶1話目はこちら:交際2年目の彼氏がいる30歳女。プロポーズを期待していたのに…

▶Next:9月20日 火曜更新予定
12年前、死んだはずの大和が生きていた…?


TOPICS

ランキング(エンタメ)

ジャンル