今大会で最もカナダからの助っ人ザチャリー・マデルも、Okinawa Hurricanesの予選1位通過に大きく貢献。「若い才能のある選手へのサポート体制もあるOkinawa Hurricanesは強いチーム」と評し、日本選手権に向けて「大会前に沖縄で数日間練習して臨む。質の高い試合ができるようにしたい」と意気込みを語った。
「チームは僕が正確にゲームプランを理解するために、常に通訳を僕のそばにつけてくれた」とチームに感謝したそのOkinawa Hurricanesの好敵手となったのは、東京パラリンピック日本代表の橋本勝也を擁するTOHOKU STORMERS。20歳の橋本は、パリ2024パラリンピックで日本代表のエースになるべく、今年4月から企業の雇用アスリートとして新たなキャリアをスタートさせている。そんな橋本の「本気度UP」もチームを刺激したのだろう。TOHOKU STORMERSの円陣は、他を寄せ付けない強固なエネルギーが静かに蓄積されているようだった。
「ナンバーワンとしての自覚という面で、チームのキーになると思うので、もっと伸ばしてチームの助けになりたい」と生き生きと語る橋本は、「練習してきた(中町)俊耶さんとの連係プレーを試合で発揮できた。今、TOHOKU STORMERSのラグビーが楽しい」と手ごたえと収穫を口にした。
2日間の最後を飾るOkinawa Hurricanes 対 TOHOKU STORMERSは延長にもつれ込む接戦だった。TOHOKU STORMERSは、持ち味のスピードを駆使してマデルらキーマンの体力を奪おうと畳みかけたり、ハイロー(ハイポインターとローポインターが組むライン)で戦うOkinawa Hurricanesに対し、タンデム(2.0クラス選手4人)でミスマッチを生み出したりした。しかし、“日本一”になった経験で勝るOkinawa Hurricanesはプレッシャーのかかる場面でミスをしない。試合は62対61でOkinawa Hurricanesが制した。
東京パラリンピック以降、トレーニングを見直した橋本。マデルと競り合っても当たり負けしなかった有観客ならではの雰囲気
代表選手にとってはジャパンパラ車いすラグビー競技大会以来となる有観客試合。さらに日本車いすラグビー連盟主催大会は、コロナ禍以降、縮小開催していたため、観客の中でクラブチームの試合が行われるのは久しぶりだ。
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東京2020パラリンピック銅メダルメンバーの倉橋香衣(AXE)は笑顔で客席を見上げた。
「近くに観客のいる雰囲気で試合できるのが本当にうれしい」
立ち見が出るほどの観客数だった来場していたのは、選手の家族、所属先の同僚、大会関係者、そして東京パラリンピックで日本代表を知ったファン。
ラグビー日本代表のファンで、知り合いに誘われれて初観戦だという男性は「車いすでどうラグビーをするのだろうと思っていたが、実際に見ると迫力がすごい。頭脳プレーの競技で奥深いと感じた」(60代・三鷹市から来場)と身を乗り出して観戦していた。
今大会のハーフタイムはキッズチアリーダーが会場を盛り上げた。小学2年生の娘の付き添いで来た女性は、「車いすラグビーは東京パラリンピックの活躍で知ってはいたが、生で見るとぶつかりあう音にとにかく驚く。使用するボールは楕円でなく丸だったのですね」(40代・渋谷区内から来場)とコメント。
TOHOKU STORMERSの主力である中町がゲームをコントロールした来場理由はさまざまだが、初観戦の観客も多く、会場は実にぎわっていた。
そんな雰囲気の中、今大会はレベルの高い試合が繰り広げられたが、Okinawa HurricanesもAXEも今大会はベストメンバーで戦えていない。TOHOKU STORMERSの20代なかばの選手らまだ力を見せていない選手もいる。そんなクラブチームの伸びしろが、来年1月の日本選手権をますます面白くさせるだろう。
2018年以来2大会ぶりに日本一を目指すOkinawa Hurricanes。渋谷区長杯のタイトルを獲得したtext by Asuka Senaga
photo by Atsushi Mihara