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ダメ男に惹かれる高学歴女子。デート代は自分持ち、プレゼントも毎回20万以上だが…

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ダメ男に惹かれる高学歴女子。デート代は自分持ち、プレゼントも毎回20万以上だが…

女医の世界には「3分の1の法則」というものが存在する。

「生涯未婚」「結婚した後、離婚」「結婚生活を全うする」それぞれの割合が、ほぼ3分の1ずつとなるというものだ。

男性は「仕事で成功すれば、恋愛・結婚がついてくる」傾向にある。

しかし、女性の場合、仕事での成功は、しばしば幸せな恋愛・結婚を遠ざけることもある。

彼女たちを取り巻く一種異様な環境は、独特の生活スタイルを生み出し、オリジナリティーに富んだ生き方を肯定する。

それぞれの女医は、どんな1/3の結末をむかえるのか…。

▶前回:結婚1年目から夫に愛情をもてなくなった女。満たされない思いを、こっそり他の男で埋めていたが…



Vol.3 血液内科・紗奈(32歳)の場合【前編】


「誕生日、何を買ってもらおうかな~」

直太朗がノートパソコン開き、機嫌よくネットで検索をしている。

彼は、29歳の誕生日プレゼントを選んでいるところだ。

「これいいかも!紗奈、見て!」

― うわ、またこんな高級品をねだるなんて…。

紗奈が画面をみると、そこには『ビアンキ』というイタリアブランドのロードバイクが掲載されていた。価格は20万円以上。

紗奈は本心とは裏腹に「へー、オシャレで可愛いね」と返事をした。

「だよね!これだったらどこまででも乗っていっちゃうな~。痩せちゃうかも!」

直太朗が、少し脂肪のついてきたお腹を擦りながら笑顔で言う。

「あぁ~、悩む。どのロードバイクを買ってもらおっかな~。こっちもいいよなぁ…。そうだ!紗奈も1台買ったら?それで一緒にツーリングに行こう!」

名案とばかりに提案するが、支払いに関しては、紗奈に頼りきっている。

― はぁ、いつまでこんなことが続くんだろう…。

貢ぎ物を物色している直太朗を横目でみて、紗奈はこっそりため息をつく。

これまでも、紗奈はいろんなものを買い与えてきた。

30万円以上するギターは、数回弾いただけ。ほかにも、ゴルフセットやスノーボード一式なども、数回使った程度で埃をかぶっている。


ダメ男、直太朗との出会い


彼との出会いは、2年前。

広告代理店に勤める高校時代の友人主催の飲み会だった。

直太朗は、当時27歳の自称ライター。

自己紹介の際、紗奈が自分の職業を医者だと告げると、男性陣から「おお~」と感嘆の声が上がるものの、なんとなく距離を置かれるのを感じた。

― また、この反応ね。やたら尊敬はされるけど、女として見られないのよね…。

さらに、当時の紗奈は30歳。その場で最年長だったことも、男性たちを遠ざけたのかもしれない。

しかし、1人の男性が、興味津々に食いつてきた。

「女医!?すごいね!なに、手術とかするの?ドラマみたいに糸で練習したりするの?」

クリっとした大きな目を輝かせながら矢継ぎ早に質問を投げかけてきたのが、直太朗だった。彼は、職業の話に留まらず、休みの日の過ごし方や好きな映画の話など色々と紗奈に尋ねた。

紗奈は、彼に女として扱われている気がして嬉しかった。

何度か2人で食事に出かけ付き合うことになった。1ヶ月ほどたったとき、直太朗がある悩みを打ち明けた。

「実は僕、小説家志望なんだ。ライターの仕事をしながら文学賞に応募する小説を書いているんだけど、あんまり時間が取れなくって…」

それが何か含みのある言い方のように感じた。

「そうなんだ…。仕事に追われてたら、執筆もはかどらないよね?」

直太朗がコクッと頷く。

― 力になってあげたいけど…。

食事代などは自分が出しているが、過去の経験から、あからさまな金銭のやり取りは避けたいと考えた紗奈。

「直太朗って、ひとり暮らしだよね?」

「うん、そうだけど…」

それならば、家賃分だけも浮けばいいと、紗奈は思った。

「部屋も余ってるし、うちに来たら?」

直太朗の表情がパッと明るくなる。

紗奈の申し出を、直太朗はすんなりと受け入れ、2LDKの青山にあるマンションに転がり込み、交際と同時に同棲生活が始まった。

仕事量を減らせるから小説に打ち込むかと思われたものの、執筆に入る様子はない。

それどころか、毎日ゲーム三昧。甘えたい放題の生活を送っている。

いつのまにか、同棲して2年経ち、完全なダメ男と化している直太朗であるが、紗奈は別れたいとは思っていない。





「お姉ちゃん、まだあんな男と付き合ってるの?」

恵比寿の『Le Parc(ル・パルク)』でランチ中、妹の友紀奈が、呆れたように言う。

彼女は、今は目黒に住んでいて、フリーで翻訳の仕事をしている。こうして、ときどきゴハンを食べながら近況報告をしている。

「いやいや…。あんたも人のこと言えないでしょう」

友紀奈も同様にダメ男に惹かれやすいところがある。

それもあり、彼女は、紗奈より3歳下だが、すでに戸籍にバツが2つ付いている。

「でもさ。私たちのこういうところって、お父さんのせいもあるよね?」

父親は外科医で、手術後の患者の合併症などを気にして、当直でなくても病院に泊まっていた。休日でも、入院中の患者の様子をみるために、必ず病院に顔を出す。

「お父さん、ほとんど家にいなかったもんね。遊んでもらった記憶なんてないもん」

「ホントそう。でも、お姉ちゃんは可愛がられてたよね。勉強できたし。私、羨ましかったよ」

「そんなことないよ…。私は勉強を頑張るしかなかったのよ。試験の成績がいいとお父さんに褒めてもらえるから」

紗奈はとにかく父に褒めてもらいたくて、同じ医師の道を志した。青春時代は、勉強に捧げたと言ってもいい。

一方友紀奈は、父親の注目を引きたくて中学に入ったころから夜まで遊び歩くようになった。

両親が友紀奈について話し合っているのを、紗奈は何度も耳にしたことがある。



「私たち、父親の愛に飢えてたよね…」

友紀奈の言う通り、少しでも構ってほしくて、それぞれの方法で父親の気を引こうとしていた。

そして、当時の感情が、今の男の趣味にも影響を及ぼしている。

いつも家に居てくれて、構ってくれて、寄り添ってくれる、そんな男性を求めてしまう。それは必然的に、ダメ男となるのだ。

するとそこで、友紀奈が顔を上げ、意味ありげな笑みを浮かべて言った。

「実はね。お姉ちゃんに報告があるんだ…」

「まさか、またダメ男と結婚とかじゃないでしょうね?」


「今ね、いい感じの人がいて…」

「え、また!?先月別れたばかりでしょう!?」

紗奈も友紀奈もダメ男に惹かれやすいという共通点はあるが、大きく違うのはそのサイクルだ。友紀奈はダメ男と短期間付き合って別れたあと、またすぐにダメ男を好きになる。

「違うの違うの!今度の人は違うの。ちゃんとした大手企業に勤めてるし、年収1,000万円以上ある人なの」

紗奈は不信感をあらわにしながらも、友紀奈の報告に耳を傾けた。

話を聞く限り、確かに相手は悪い男ではなさそうだ。同年代のサラリーマンで、過去に離婚歴などもなく、いたって真面目な男性だという。

― 本当に今まで付き合ってきた人たちとは違うのかも…。

悪い印象を抱かせないよう熱弁をふるう友紀奈の姿は、真剣に将来を見据え、幸せになろうとしているようにも感じられた。

しかし、妹の心境の変化を、素直に喜べない自分がいる。

― 私はこのままでいいのかな…。

紗奈のなかに、モヤモヤとした感情が生まれ、息が詰まった。





妹に触発されて・・・


友紀奈との食事から1週間後。紗奈は、ある男性が運転する車の助手席に座っていた。

「もうすぐ着いちゃいますね」

男性が少し残念そうに言う。

赤坂で食事をして、青山のマンションまで送ってもらっているので、距離も近い。

男の名は、長谷部といい、紗奈が働く御茶ノ水にある大学病院の医師だ。

昨年、アメリカの赴任先から戻って来たばかりの、スポーツ医学を専門とした整形外科医である。

まだ30代と若く、容姿もいいことから、看護師たちが噂しているのを聞いたことがある。

彼とは、院内のフロアが同じことから顔を合わせることも多かったが、まさか食事に誘われるとは思っていなかった。

「今日はありがとうございました。いい話がたくさん聞けて楽しかったです」

実際、長谷部の話は興味を引かれるものが多かった。

アメリカのスポーツ医学事情から身近な健康問題まで、特に女性アスリートのエネルギー摂取不足による骨密度の低下に関する話題などは、非常に興味深かった。

「それは良かった。また、ご一緒してもらえますか?」

長谷部がハンドルを握りながら尋ねる。

すると、紗奈の膝に置かれたバッグのなかで、スマホがブルッと震えるのを感じた。

― きっと直太朗だ…。

一瞬、彼のことが頭をかすめたが「はい」と返事をする。

「あ、そうだ。ロードバイクって、怪我とかしやすかったりしますか?」

紗奈は後ろめたさから、思わず直太朗に関係することを尋ねる。

「う~ん、長距離を走ると膝に負担がかかりますよね。サドルの高さやペダルの踏み方によっても膝を痛めやすくなることがあります。あとは、転倒による怪我ですかね。ロードバイク、乗られるんですか?」

「いや、ちょっと興味があって…」

そこで、車がマンションの前に到着した。

紗奈が礼を述べて助手席から出ると、長谷部も運転席からおりて見送り、軽く頭を下げた。



― やっぱり背が高くてカッコいいな…。シャツも似合ってるし。直太朗とは全然違う!

思わず、年中スウェット姿の直太朗と比較してしまう。

今日、長谷部の誘いに応えたのは、先日の友紀奈との会話が影響している。本気で幸せになろうとしている姿に、感化された部分もある。

同類だと思っていた相手に置いていかれそうだという、焦りもあった。

結婚を念頭に置いたとき、相応しい相手は長谷部だろう。それに、父親と同じ外科医というところにも、紗奈は縁を感じている。

女医という、男性から敬遠されがちな職業柄、これから先そんな相手と出会えるかどうかわからない。年齢を重ねれば、状況はさらに厳しくなる。

― でも、直太朗のことも放っておけないんだよなぁ。私がいなくなったら生きていけないんじゃあ…。

ペットのように従順で甘えん坊の直太朗への思いも確かに残っている。ただ彼と生涯を共にしたいかというと確信は持てない。

― はぁ、どうしよう…。

2人の男のあいだで、紗奈の心が揺れ動く。


▶前回:結婚1年目から夫に愛情をもてなくなった女。満たされない思いを、こっそり他の男で埋めていたが…

▶1話目はこちら:親が勧める相手と結婚したものの…。女は満たされず、つい元彼に連絡してしまい…

▶Next:9月18日 日曜更新予定
可愛い系のダメ男とクールな同僚医師。32歳女医が選んだ相手とは…


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