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32歳の美人より、24歳のダサい女が選ばれる!?オーバー30歳女の、非情すぎる現実

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32歳の美人より、24歳のダサい女が選ばれる!?オーバー30歳女の、非情すぎる現実

「30過ぎてまで、何やってるの?」と、時に人は言う。

東京における平均初婚年齢30.5歳を境にして、身を落ち着かせる女性が多い一方で、どうしようもない恋愛から抜け出せない人がいるのも事実。

他人には言えない心の葛藤、男女の関係――。

30歳を過ぎた。でも私は、やめられない。

少し痛いけれど、これが東京で生きる女のリアルなのだから。

▶前回:社内チャットで上司に誘われた!職場恋愛の沼にハマった32歳女は、同僚の忠告を無視して…



Vol.6 早織、32歳。彼のことが、本気で好きなのに…


「広尾橋の交差点までお願いします」

私はタクシーに乗り、運転手に行き先を告げた。

会社の同期の杏奈を含めた同僚たちと恵比寿で食事をしたのだが、食べる量を控えめにして正解だった。

― あぁ、眠い…。

32歳になり、明け方まで何軒も飲み歩くことも昔ほど楽しいとは思えず、帰って寝たい気持ちが勝ることがほとんどだ。

誘ってきたのが“あの人”じゃなければ、今日も帰っていただろう。

「ここで大丈夫です。PayPayで払います」

明治通りを抜けると、恵比寿の喧騒から離れて静寂に包まれる。しかし、私の鼓動は高まっていた。

私はバーコードを後部座席のタブレットにかざすと、素早くタクシーを降りる。

『イートプレイワークス』のイタリアンのお店には、すでに男女数人が集まり、赤ワインをボトルで開けていた。

「おつかれさまです~!」
「早織、こっちこっち」

飲み友達の麻実が、私に手を振っている。

「藤田さんの横、空けといたから」
「最高。ありがと」

私は麻実に感謝しながら、席に腰を下ろした。

「早織ちゃん、急なのに来てくれてありがとう。赤ワインでいい?それとも最初は泡にしとく?」

藤田に聞かれ、胸がキュンとなる。

彼こそが、私をトリコにしている“あの人”こと藤田佳久だ。


藤田佳久。49歳のバツイチ。広告代理店を経営していて、趣味は体を鍛えることと、全国のサウナ巡り。

腕が太くてぱっと見、近寄り難いが、本当はとても優しくて性格も可愛い。

「ううん、赤が飲みたいな。ありがとう」

― 藤田さん、今日も素敵…。

そんなことを思いながら、藤田が取り分けてくれたパスタの皿に手を伸ばす。



するとなぜか、目の前の女にキッと睨まれた。

「えっ?」

ここまであからさまに敵視されることはないから、思わず声が出てしまった。

― まったく、誰が呼んだのよ…。

これまでの食事会で、一度も見たことがない子だ。

私はあくまでも自然に、彼女を観察した。

座っていてもわかる低身長。顔も特に可愛くはない。なんなら少しぽっちゃりしている。

話し方からして若いのだろうが、肌もくすんでいて、私と並んでいたら、間違いなく公開処刑。

ただ、胸元にはハリー・ウィンストンのリリークラスターが光り、ヴァレンティノのピンヒールを履いている。

― 豚に真珠とはこのことね。

私は、そう思いながら彼女を視界に入れぬよう、赤ワインを飲んだ。

女は、24歳で真純というらしい。

さっきから自分のことをマスミン、マスミンとしつこく呼んでいて、こちらが恥ずかしくなる。

「藤田さん、今月の連休は何するの?」
「それ、マスミンも気になる!マスミンにも教えて~!」
「……」

私が藤田と話そうとすると、必ず真純が入ってくる。

― なんなのよ、うっとうしいなぁ。

「そろそろ帰りますね」

私は、マスミンの攻撃に体力を奪われてしまい、小1時間でその場を退散した。





『藤田佳久:早織ちゃん、今日はなんかごめんね!また今度ゆっくりごはん行きましょう』

家に着き、お風呂から上がると藤田から連絡が来ていた。

― やった!

『SAORI:来週は水木が空いてます♡』

私はすぐに返信して、髪を乾かしながら返信を待った。

がっついていると思われようが構わない。私は藤田のことが好き。どんなチャンスも無駄にしたくないのだ。

“飲みの場によくいる女”で終わりたくない。

そう思って、知り合ってから今日まで自分からわかりやすくアピールしてきた。

でも、仲良くなってからもう半年が経つ。

藤田も私のことを気にかけてくれているし、嫌われてはいないはずだ。

ならば、早く次のステップへ進みたい。

― 藤田さんとのデート、何着て行こうかなぁ。

私は、頭の中でコーディネートを組みながら、眠りについた。



そして、翌週の木曜日。

「えっ!?なんで…」

藤田が予約してくれた西麻布の『うしごろエス』の個室には、真純がいた。

しかも、ルイ・ヴィトンの大きな紙袋を店に預けることもなく、下品に椅子に置いている。


「っあ、早織ちゃん!わ~~い!」

― わーい、じゃないわよ。なんで真純が?

私が立ち尽くしていると、化粧室に行っていた藤田が帰ってきた。

「おっ、早織ちゃん!」
「マスミンもお肉食べたいっていうから、誘ったんだよ。人数いた方が楽しいし、ここの個室広いから、ふたりだと寂しいでしょ」
「そ、そうですね…」



食事を進めていると、真純は、わざわざ紙袋から品物を出して私に自慢してきた。

それは、私も欲しいと思っていたルイ・ヴィトンの新作のワンピースだった。

「試着したら、そこそこ似合ってたよね」
「そこそこって、もぅ。ひどぉい!」

ふたりの楽しそうな会話に、背筋が凍る。

真純は定職に就いておらず、ほとんど無職のようなものだ。自分で買えるわけがない。

― もしかして、藤田さんが買ったの?

私は、黙ってふたりのやりとりを見るしかなかった。

悔しい、悲しい、ムカつく、ずるい…。いろんな感情が、心をかき乱す。

「マスミン、汚れるからしまっておきなさい」
「は~い。フジたん優しいから大好き~!今度はバッグがほちいな」

真純は藤田に向かって、手でハートマークを作る。



その行為がダサすぎて失笑ものだったが、そんなことよりも、藤田と真純の関係が気になって仕方なかった。

― どういう関係なの?

藤田は鼻の下を伸ばして、とても嬉しそうだ。

藤田と真純の間には、男女が関係を持っている時の独特な空気感があった。

しかし、それは恋人同士の感じではなく、交際に金銭が発生している男女の不純な空気だ。

― まさかね…。藤田さんに限って、そんなことあるわけない。

そう思ったが、ふたりを見れば見るほど、私の予想が当たっている気がしてならない。

「え~!早織ちゃんって、8歳も年上なんだ!大大大先輩だニャ」

酔っ払った真純が、甘えてくる。

「ちょっと重い」

私は、私の腕に絡まりついている真純の手を払いのけて、そのまま席を立ち化粧室へ向かった。

― もう、帰りたい…。せっかく今日を楽しみにしていたのに…。

手を洗いながら鏡に映る自分を見つめていると、真純と目が合う。

なぜ同じタイミングで化粧室に来たのだろうか。そう思っていると、真純が鏡越しに言う。

「フジたんが言ってましたよ。早織ちゃんのこと、可愛いとは思ってるけど、責任取れないって」
「は?…なによ、それ。どういうこと?」

わざわざ化粧室までやってきて、伝えてくる真純にいら立ちながら、言い返す。

「30歳過ぎの女は、重いってことじゃないですか?付き合ったら、すぐに結婚を迫られそうで」

真純は、前髪を整えながら笑顔で答えた。

「そもそも、バツイチのフジたんに結婚願望がないことくらい、早織さんもわかってますよね?」
「……」
「だったら、若さと引き換えに欲しいものを搾取するだけしてサヨナラしないと。…って、早織さんには若さもないか」

真純は笑いながら言い放つと、個室に入り勢いよくドアを閉めた。

それは、“もう帰れば?”と言われているようだった。

「言われなくても、帰るわよ」

私は、自分にだけ聞こえるくらいの大きさでつぶやき、藤田に挨拶をして店を出た。

なんとなく時間をかけて帰りたくて、六本木通りを歩き、交差点で仕方なくタクシーを拾う。



私は、容姿に自信があるし、その辺のフラフラしている子と違って、まともな仕事にも就いている。

だから、私がその気になれば、藤田と付き合うことなんか簡単だと思っていた。

でも、そう思っていたのは私だけだったようだ。

家に着いたあと、何度スマホを見ても藤田から連絡はない。

真純は、藤田のことは好きではない。自分の物欲や承認欲求を満たすためだけに藤田を利用しているだけだ。

あの女も藤田のことを本気で好きなら、まだよかったのに。

「なんで、あんな女と…」

ふらふらしながらシャワーを浴びて着替え、ベッドの中で泣いた。

私は、お金目当てでも妥協でもなく、純粋に藤田に惹かれていた。

若い男にはない大人の余裕と寛容さ、常に周りを幸せにしようとする人柄に、惚れたのだ。

同年代との話はつまらないし、男女もどこかでマウントを取り合う。

だから、友達は理解してくれないけれど、昔から一回り以上年上じゃないと好きになれない。

お金目当てで年上男性にたかる若い女たちを蹴散らし、本気で好きになってもらうには、私ももっと自分を磨かなければいけないということだろう。

「でも、どうやって…」

私は涙を手で拭い、魅力的な女になる方法をスマホで検索し始めた。


▶前回:社内チャットで上司に誘われた!職場恋愛の沼にハマった32歳女は、同僚の忠告を無視して…

▶1話目はこちら:「生活水準は下げられない」港区にしがみつく32歳女が、副業先のバーで流した涙

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インスタントな恋しかできない女


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