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これからの強いチーム作りに欠かせない「自問」と「言語化」の文化

パラサポWEB

事実、中竹氏は早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任した際、選手たちに「どんな選手になりたいのか?」「どんなプレーがしたいのか?」「なぜそうしたいのか?」と問いかけ、一人ひとりと面談を繰り返したという。これまで自分らしさを問われたことのなかった選手たちは、最初は困惑し、「それを考えるのが監督の仕事では」と反発したそうだが、自分の頭で考えて自分の言葉で答えられるようになるまで選手たちの気持ちに寄り添った問いを投げかけ続けると、「監督に頼るのではなく、自分たちで考えて行動しなければならない」という自覚が芽生え、勝てるチームへと生まれ変わっていったという。

中竹氏が大学選手権優勝に輝いた早稲田大学ラグビー蹴球部のチームづくりの秘訣を解説した著書『監督に期待するな 早稲田ラグビー “フォロワーシップ”の勝利』(講談社)より。チームメンバーが自主的な判断や行動でリーダーを支え、チームの勝利に貢献するフォロワーシップの大切さを説いている

キーワードは言語化! 指導者がするべき有効なサポート方法とは?

これからの時代に必要とされるのは、選手自身で自ら考える自立したチームづくり

このように中竹氏は選手たちが自ら問い続けることの重要性をわかりやすく説明してくれたが、理解はできても、それを実際に選手たちに実践してもらうのは難しいと感じる人も多いかもしれない。そこで、指導者としてどんなサポートをしていくのが有効かを尋ねると、中竹氏からは次のようなアドバイスをいただいた。

「キーワードは言語化です。自らを問うことに慣れていない選手たちは、言うなれば、自分で考えたことを言葉にしていくことに慣れていないわけです。そのため、まずは選手たちが答えやすい『問い』を投げかけながら、自分の考えを言語化し、適切な意識決定を下せるようにする練習からスタートするのがいいと思います。私も選手たちに『パニックになったときこそ、言葉にしよう』と言い続けてきました。ミスが起きたときに、その原因を選手同士で言葉にできていないと、また同じミスを犯すことになります。『ミスした理由を言葉で確認し合おう』という指導を繰り返すうちに、それが自然と習慣となり、同じミスを繰り返さないチームへと変貌を遂げていきました」(中竹氏)

また、練習が始まる前と終わった後に、選手たちが言語化する機会をつくるのも効果的だという。練習前に選手自身に「今日はどこまで何をやるか」という目標を言葉にしてもらうと、練習中もその達成に向けて「どのように時間を費やしたらいくべきか」と意識が集中し、自分ゴトにしやすくなるからだ。練習後も目標が達成されたかを振り返ることで、脳に言葉を通した意味づけが行われ、練習経験をより自分のものにする効果も期待できる。

選手たちに問いを続けてもらうには、指導者自身が誰よりも学ぶことが重要だと語る中竹氏

「私たち大人だって『自分はどうしたいのか?』と問われても、すぐに答えられるものではありません。『君たちが取り組んでいることはすぐに答えの出ない、難しい課題なんだよ』ということを伝えたうえで、最初は選手たちが答えられないのも当たり前だという考えのもと、選手たちに寄り添いながら問いを投げかけ続けることが大切です。そして、もしも選手が回答に困ってしまったときは、『例えばね〜』と自分なりの見本を見せてあげましょう。『自分が選手のときは〜だった』『今はコーチとして〜したいと考えている』など、例え話があると選手たちもイメージが湧いて、考えやすくなりますから。それには日頃から指導者も自分の経験に裏打ちされた考えを用意しておく必要があります」(中竹氏)

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世界最強のラグビーチーム、ニュージーランド代表のオールブラックスにも、自らを問いかけ続けるカルチャーがあることが知られている。彼らは代々受け継がれている15の行動規範に則って、常に自分たちを疑い、自己点検しているからこそ、進化をやめず、王者の地位を維持することができているという。

「どうしたら勝てるか?」「そのために何をしたらいいのか?」。正解のないこれからの時代を勝ち抜くカギは、そんなチームの勝利に向けた問いを自発的に投げかけられる自律型の組織文化なのかもしれない。

【プロフィール】 中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所勤務後、2006年に早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会において初めてとなる「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチも兼務。2019〜21年は理事を務めた。2014年には、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックスを設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、一般社団法人スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、日本車いすラグビー連盟 副理事長 など。『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)や『自分を育てる方法』(ディスカヴァー21)など著書多数。

text by Jun Takayanagi(Parasapo Lab)
photo by TEAMBOX,Shutterstock

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