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地方に移住して農業をしながらサッカー。スポーツで地域貢献するアスリートの新しい生き方

パラサポWEB

「農業は初めてという選手ばかりなので多少不安はありましたが、意外に自分に合っていると思う選手がいたり、逆に単純作業の繰り返しに戸惑っている人もいます。やってみなければわからないですから、そんなものではないでしょうか。また、ほとんどの選手が、ここに来て初めてプロとしてのプレーを見たという状態だったので、どうしても実力差は顕著にあって、すでに辞めてしまった選手はいます。しかし、辞めた後も和歌山に残って働いてくれているのはうれしいですね。まだ始動して5ヵ月ほどですが、みんなチームの活動に愛着を持って、ここでの生活に順応しようとしてくれているので、来年も残ってくれそうです」

サッカーを知らない人でスタジアムを一杯にする

©Shutterstock

試合が開催されると、選手の職場の同僚たちがグラウンドに見学にやってくる。それまでサッカーなんて見たことがないという高齢者もいる。あるとき、応援しに来た農家のおばあさんが、ゴールキーパーのウェアを見て“なぜあの人だけ色が違うのを着ているの?”と尋ねていたこともあったそうだ。

「このチームに集まった選手は、もちろんサッカーが上手いんですが正直エリートではないので、関係者以外の人から応援されるという経験は、今までしたことがなかったと思います。でも、ここではそういう風にルールを知らないおばあちゃんからも応援を受けることができる。それは自分たちがここでみんなと一緒に働いているからこその結果なので、仕事も真面目にやろうという気持ち、そしてサッカー選手としての自覚が芽生えてきていることは感じますね。選手たちが、ただサッカーをするだけじゃなくて、農業などの仕事はもちろん、地域に向けた活動をすることによって、人としての価値が生まれる。そうなれば勝ち負け関係なく応援されるクラブになっていきますし、選手が仮にサッカーを辞めたとしても、その後の人生も諦めずに生きていくことができるようになるのではないでしょうか」

まさに、森永氏が南紀オレンジサンライズFCを作るに当たってもくろんでいたことが達成されつつあるということだろう。

牟婁(むろ)とは、現在の和歌山県の一部と三重県の一部にわたって存在した郡。地元に根ざしたメッセージが選手を応援する

「まだまだ僕たちのことを知らない人は多いですから、これからはもっと認知度を高められるように活動していかなければいけないと思っています。最近は地域のイベントとか、小学校などで教えてほしいと言われることも増えてきました。そういった地道な活動を広げていく中で、農家さん以外の方にもチームのことを知ってもらい、農業以外でも人手不足で困っていることがあれば手伝いますよと言っていきたいですね。そんな風に地域の人との繋がりを深めていって、いつかサッカーに興味がない、ルールも知らないなんていう人でスタジアムを埋めたい。それが夢です」

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最後にちょっと意地悪な質問をしてみた。こんな森永氏の果敢なチャレンジに対して同じサッカー界の反応はどうだったのだろうか。ネガティブな意見はなかったのかと。「陰で何を言われているかは分からないけれど、一応、ポジティブな言葉はもらっています。ただ、チームが大きくなっていく過程では、賛否両論がないといけないと思っているので、“大丈夫なの?”なんて言われると、そういう意見があるんだと逆に勉強になります」と、森永氏は答えた。賛成の人ばかりだと、怖くなるのだという。ネガティブなことを言われても心が折れない強さがあるのだろう。“メンタルの強さ”と、“なにがあっても引き摺らない切り替えの早さ”が自分の持ち味だという森永氏の夢が叶うのは、そう遠いことではないような気がした。

text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
photo by 南紀オレンジサンライズFC,Shutterstock

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