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北島博士のおもしろ映画講座 第86回 今後カルト・クラシックとなるのは間違いない!カンタン・デュビュー監督『地下室のヘンな穴』

cinefil

第72回ベルリン国際映画祭正式出品、カンタン・デュピュー監督最新作『地下室のヘンな穴』が9月2日(金)に新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国公開となります。

「地下室のヘンな穴」

 二、三十年前、映画批評を書く際にカルト映画なる表現を多用したことがあった。カルトといえば、宗教がらみの反社会的集団をさすが、カルト映画もそれに似ている。世間一般からは愚作、凡作とみなされるような作品に美点をみいだし、熱狂的にまで称賛する少数派が存在する映画のこと。僕の好きなSF、ホラー、スリラーにカルト映画が多く、必然的にそうした映画を取り上げることとなり、カルト映画という表現を多用した。それらの多くは傑作にほど遠いと自覚はしていた。でも、自分が面白ければいいじゃないかとも思うし、今から思うに英米の批評にちょいちょい出てくるカルト映画なる表現を使って見たかっただけかもしれない。

© ATELIER DE PRODUCTION – ARTE FRANCE CINÉMA – VERSUS PRODUCTION – 2022

 アランとマリーの中年夫婦が引っ越した郊外の家には、不思議な特徴があった。不動産屋が秘密めかして打ち明けたのは、地下室にある穴から下に降りると、そこはなんと地上一階、しかも時間は一挙に12時間進んでいる、なのに身体の方は二日分若返るという。アランはばかばかしいと言うが、マリーは興味津々。リンゴを持っていくと、明らかにリンゴの皮の色が薄くなっていた。だが、アランがかじってみると、果肉から多数の蟻が出てきた。マリーはモデルになりたいという願望を満たすべく、アランの反対を押し切って何度も穴の中へ入り、若さを取り戻していくが……。

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 この穴は地下室の床にあいていて、その上に無造作に木の板がおいてある。穴に入ると、その木の板で蓋をしないと、若返りの魔法は作動しない。不動産屋いわく「洗濯機と一緒で、ふたがしてないとダメなんですよ」。究極のアンチ・エイジングと思われたが、世の中いいことばかりではない。見る人の驚きを減じないために詳しいことは書かないけれど、結末であっと驚くことは保証しておく。 アランの上司は若い女性と同棲しているが、ペニスを電子化し、思いどうりに動かせるようになる。この手術を行ったのが、日本の科学者という点が注目で、珍妙な日本語のやり取りに大笑い。

© ATELIER DE PRODUCTION – ARTE FRANCE CINÉMA – VERSUS PRODUCTION – 2022

 へんてこな設定・ストーリー展開、すっとぼけた演技……どれをとっても奇妙な要素にみちており、往年のB級作品に似かよった味のする映画である。上映時間も1時間13分と今どきの映画にしてはとても短いが、過不足なく語られており、見ていて充足感を味わえた。本作品が今後カルト・クラシックとなるのは間違いない。

  製作国フランスではカルトどころか、6 月に公開され、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」「トップガン マーヴェリック」に次ぐ初登場3位、フランス映画では No.1 大ヒットを記録したという。自動車のタイヤが意志を持って人間をなぎ倒して殺すという「ラバー」(2010)で見る者の度肝を抜き、その後も奇想天外な作品を作り続けているカンタン・デュビューが監督。出演はアラン・シャバ、レア・ドリュッケール、ブノア・マジメル。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。 

『地下室のヘンな穴』本予告

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