いつもより少ない量であっても、ビタミン、ミネラル、タンパク質を含む食材を中心にバランスよく取ることを心掛けましょう」
Q.それでは、食欲不振の際に食べた方がよい物、食べない方がよい物はありますか。
森さん「疲労回復の働きがあることで知られている『ビタミンB1』は豚肉、レバー、大豆などに多く含まれています。香りの成分である『アリシン』を含むニンニクやネギ、ニラなどと一緒に調理することで、ビタミンB1を吸収する効果が高くなるのでおすすめです。ビタミンB1を多く含むウナギも夏バテ防止で有名ですが、脂質も多いので、消化する際に胃に負担がかかるという一面があります。
おいしく、健康に食べるには、体調と相談することも必要です。ナス、キュウリ、トマト、カボチャなど夏が旬の野菜はビタミン、ミネラル、カリウムなどが豊富に含まれている上に、汗で失われた水分も補ってくれます。
また、レモンや梅干しの酸味、ショウガやミョウガなどの香りは食欲増進の効果があるといわれていますし、リゾットややわらかく煮込んだスープなどは胃に負担をかけずに消化できます。
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なお、『冷たいビールと揚げ物で元気を出すぞ!』と思う人もいるかと思いますが、飲酒は脱水症状につながりやすく、また先述の通り、脂質の多い食べ物は消化に時間がかかるので、夏バテの際は気を付けてください」
Q.「夏は汗をかくから、塩分を多めに取った方がよい」「多少、塩分過多になっても大丈夫」と考える人もいるようです。食事の際に、他の季節よりも塩分を多く摂取してもいいのでしょうか。逆に、夏に塩分をあまり摂取しないとどうなるのでしょうか。
森さん「汗をかくことにより、水分とともに塩分が失われますが、食生活がいつも通りであれば、食塩を多めに取る必要はありません。
日本人の食塩摂取量は必要量より多く、厚生労働省の2019年『国民健康・栄養調査』によれば、成人男性は平均で1日10.9グラム、女性は9.3グラム摂取しています。厚労省が推奨する1日当たりの目標値は、男性が8.0グラム未満、女性が7.0グラム未満なので、発汗によって多少失ったとしても不足するほどではないのです。特に、高血圧の人は夏であっても1日6グラム未満に控える“減塩”が大切と、特定非営利活動法人日本高血圧学会は注意を呼び掛けています。
ただし、気温が高い屋外での作業やスポーツで大量に汗をかいたときは、スポーツドリンクなどで水分とともに少量の食塩を含むミネラルを補給することが必要です。また、夏場の食欲不振から食事を抜いたり、食事量が著しく減ったりしていると、食塩の量が不足する場合があります。水分と塩分の両方が不足することにより、頭痛や嘔吐(おうと)、けいれんなどを起こすこともありますので注意が必要です」