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「こんにちは、いぬです」の作者が『ハウ』に見た温かさ。「“寄り添う”ことの大切さが伝わってきて、心がポカポカしました」

MOVIE WALKER PRESS

『ジョゼと虎と魚たち』(03)、『のぼうの城』(11)などのヒット作や『グーグーだって猫である』(08)、『猫は抱くもの』(18)といった動物をテーマにした作品で知られる犬童一心監督。そんな犬童監督が、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)などの脚本家、斉藤ひろしの同名小説を映画化した『ハウ』が8月19日(金)から公開される。

「ワン!」と鳴けず、かすれた声で「ハウ!」と口にするのが精一杯な元保護犬のハウと、市役所で働く気弱な青年、民夫(田中圭)との絆を描いた本作。自身も大の犬好きで、「こんにちは、いぬです」など犬をモチーフにした多くの作品で知られるイラストレーターのじゅんは、民夫と幸せに暮らしていたのに、ひょんなことから青森に運ばれてしまったハウが、民夫と仲良く暮らしていた横浜まで798kmの道のりを目指すストーリーに心を大きく揺さぶられたよう。ひと足早く本編を鑑賞したじゅんに、映画の魅力や犬を愛せずにいられない理由を熱く語ってもらった。描き下ろしの感想漫画とあわせてチェックしてほしい。

■「ハウを演じたベックは細かい動きも自然で、人間みたいに考えているんじゃないかな?と思うほど」

「おいぬが好きな私にとっては、ヒヤヒヤしたり、“どうしよう?”って思う場面ももちろんあったのですが、民夫のもとへ帰ろうとするハウが798kmの道のりのなかで出会った人々を癒していくところに心を打たれました。悩みがあったり、寂しさを感じていたり、問題を抱えた人たちとハウは出会います。ハウは悩みや寂しさを直接解決するわけではないけれど、寄り添うことで彼らの心を温めていく。そんな“寄り添う”ことの大切さが伝わってきて、心がポカポカしました」。

本作の主人公は、映画初出演となる俳優犬・ベックが演じるハウ。婚約破棄され心に傷を負った民夫と、彼が上司(野間口徹)から勧められて飼い始めたハウとのコンビネーションが本当にピッタリで、じゅんも「とても驚きました!」と感心しきり。

「全速力で走ったり、楽しそうに遊んだり、眠そうな表情をしたりと、鑑賞中は驚きっぱなしでした。視線や細かい動きも自然で、人間みたいに物事を考えているんじゃないかな?と思うほど。ベックくんは私の愛犬でポメラニアンの“むっく”と同じ年頃みたいで、人間が大好きなところも一緒ですけど、むっくはこんなに堂々としたお芝居はできないな、スゴいなってずっと感動していました(笑)」。

■「本当にいいコンビ!ハウは、まさに相棒のような佇まい」

そんなハウ役ベックの名演を引きだしたのは、民夫を演じた田中圭。映画化もされた主演ドラマ「おっさんずラブ」「あなたの番です」や、『スマホを落としただけなのに』(18)、『総理の夫』(21)、『そして、バトンは渡された』(21)など話題作に次々と出演。その飾らないキャラで幅広い層のファンを獲得している彼が、本作でも、ハウとの交流によって成長していく民夫を自然体で好演している。

「民夫はハウと同じように、本当に優しい心の持ち主だと感じました。そう感じたのは、おそらく、田中圭さんのフワッとした優しい雰囲気も相まっていたからだと思います。田中さんのセリフの一つ一つの間や空気感がとても好きで、本作の前にほかの出演作も観させていただいたので、より感情移入ができました」。

映画の前半では、民夫が入浴中にハウが飛ばした水しぶきでベチャベチャになったり、一緒に走ったり、民夫のもとにハウが全力で楽しそうに駆けてくるシーンが連続。2人の仲のよさや、ハウが民夫にとってしだいにかけがえのない存在になっていく過程に、目が離せなくなる。

「本当にいいコンビだと思います。民夫はおいぬのことをあまり知らないところから一緒に暮らすことになったと思うのですが、ハウと同じテンションで元気いっぱい遊んでいて、微笑ましかったです。おうちで一緒にくつろいでいるシーンのハウは、まさに相棒のような佇まいでしたね」。

■「本当にうれしそうに『ヘッヘッ!』と笑っていたので、こちらもつられて笑顔になりました」

愛犬家の人がきっと共感できる、じゅんの“推し”シーンも紹介してくれた。

「『わかる!』と思ったのは、ボールを投げて遊ぶシーンですね。むっくもボールが大好きで、よく投げて遊ぶのですが、尋常じゃないスピードで取りに行くので毎回驚かされます。『かわいい!』と思ったのは、褒められた時のハウのうれしそうな表情と息遣いですかね。本当にうれしそうに、舌を出して『ヘッヘッ!』と笑っていたので、かわいくてこちらもつられて笑顔になりました」。

■「“私が民夫の立場だったら…”と思った途端に涙がこぼれました」

それだけに、ハウが突然いなくなってからの民夫の苦しみと悲しみには計り知れないものがある。あらゆる手を尽くして捜しても見つからない。さらに、「ハウによく似た白い大型犬が事故死した」という最悪な報せも届くのだから。

「民夫がハウのいない家に初めて帰ってくるシーンでは、胸が張り裂けそうでした。いつもならお迎えがあるのに、ない。“私が民夫の立場だったら…”と思った途端に涙がこぼれましたね。と同時に、脱走対策などもしっかりしておかねば!と考えさせられるシーンでした」。

一方のハウは青森で迷子になっており、民夫のもとへ帰ろうとする。その道中、いじめに悩む中学生、最愛の夫を亡くした女性など、様々な事情を抱えた人たちと出会う。そんな人々とハウが紡ぎだす、それぞれの人間ドラマも本作の見どころになっている。

「印象的だったのは、修道院のシェルターに保護された、モトーラ世理奈さんが演じるめぐみさんのエピソードです。モトーラさんのことはこの作品で初めて知ったのですが、彼女が纏っている独特な雰囲気と吸い込まれるような表情に見入ってしまいました」。

■「『もっともっと、うちの子のことを考えよう』と思うきっかけになってくれれば」

じゅんが“犬にまつわる作品”を描こうと思い立ったきっかけは、「単純においぬが大好きだったから」だそう。

「でも、実は去年までの25年間、おいぬと暮らしたことがなかったんです。おいぬを好きになる前に唯一触れ合った経験は、小学生のころ、友だちの家に遊びに行った時に少し触らせてもらったくらい。それでもおいぬを好きになったのは、SNSなどで動画や画像を見て、『おいぬってこんなに愛くるしくて、おもしろくて、人間みたいで、かわいいんだ』と思ったから。それ以来ずっと、おいぬや動物の動画ばかりを観るようになりました」。

そんなじゅんの最新作はTwitterで共感と感動を呼び、ついに書籍化もされた漫画「こんにちには、いぬです」(幻冬舎/3巻まで発売中)。『ハウ』では石田ゆり子のナレーションが犬の心情を代弁しているが、本書も犬たちからの目線で描かれており、犬好きの読者の心をわしづかみにしている。
「『こんにちは、いぬです』を描き始めた時は、おいぬと暮らしたことがなかった時期なので、本当にたくさんのおいぬの動画や画像、エッセイや漫画などを見ました。そこからインスパイアを受けて、あの漫画は生まれたんです。でも、実際のところ、おいぬがどう思っているのかはわかりません。なので、ファンタジー作品にはなってしまうのですが、読んだ方が『おいぬがもし、こう思ってくれていたとしたら?』と想像を膨らませたり、『もっともっと、うちの子のことを考えよう』と思うきっかけになってくれればいいなという気持ちで描いています」。

■「大きな白い“モフモフ”が好きな方にもぜひ観ていただきたいです」

話を聞けば聞くほど、その言葉の端々から犬のことが大好きなのが伝わってきたじゅん。最後に、この作品をどんな人たちに観てほしいか聞いてみた。

「田中圭さんや(民夫の市役所の同僚である桃子を演じた)池田エライザさんなど俳優さんたちのファンの方はもちろん、おいぬに限らず動物と暮らす方、これからおいぬと暮らしてみたいと思っている方にも観てほしい作品です。とにかく、ハウを演じたベックくんがかわいいです!!大きな白い“モフモフ”が好きな方にもぜひ観ていただきたいですね(笑)」。

構成・文/イソガイマサト
 
   

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