多くの少年少女が2022年の夏休みを迎える前、夏休みを迎えるために“共謀”を企てるふたりの男女を描いた短編漫画『放課後の隣人』がTwitter上に公開された。互いに課された宿題を交換して取り組むふたりであったが、意外なかたちでふたりの関係は終わりを迎えることとなる。
作者である田島青氏(@ao_tajima)は現役の漫画家として活動している人物であり、本作は田島氏のデビュー作品でもある。本作を創作したきっかけや描く際に意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと)
ーー夏休みがはじまるワクワク感、そして親しい人が去る喪失感を覚えた作品でした。創作のきっかけを教えてください。
田島青:当時投稿をしていた雑誌の、新人賞の読み切りを作ろうとしたことがきっかけです。言葉に対する苦手意識と、コミュニケーションの理想を物語にしてみようと思ってプロットを作り始めました。
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最初に作ったプロットは真夜中の廃校が舞台の幽霊と猫の話だったのですがうまくいかず、自分が学校の課題で特に苦手だった「作文」をモチーフにすることを思いつき、この話になりました。
ーー終盤に教室で晶さんがひとり過ごす場面から入道雲が立ち昇るほどの蒸し暑さや、ふな漕ぎをした椅子がきしむ音のなつかしさ、扇風機やカーテンの揺れから感じる夏の風の心地よさを感じました。
田島青:最後に教室で一人椅子を揺らしながら窓の外を見つめる晶のページは、夏の空気を出すことができたかなと個人的に印象に残っています。細かいところですが、シャーペンのプラスチックの透明感を描けたことがすごくうれしかったです。
あと、1ページ目から描き始めたのですがなかなか納得がいかず、何度も描き直して完成させた記憶があります。
ーー本作を描くなかで意識したことは?
田島青:プロットを作っている段階では、国語と数学、人工的な扇風機の風と自然の風など、対比関係を意識しました。分かり合えなくても共に過ごす時間自体に、正誤を越えた価値があるのではないかという考えを形にできればと思いながら描いていました。