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“戦争を聞くこと”を物語にした『ちむどんどん』 幸福を求め続ける暢子の生き方を考える

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 おいしいものは正義であって、食べればみんな幸せというざっくりした考えに陥りがちだが、何を美味しいと思うかは人それぞれだし、味覚や嗜好は、その人の生まれ育った環境で変わってくる。

 たとえ、魚肉ソーセージでもクジラのカツレツでもおからを米代わりにしてこんにゃくを乗せたような寿司でも、得も言われぬ感情を呼び起こすこともあるのだ。

 できれば、料理人の暢子には、これらの料理を作りながら、いまの自分たちが知り得なかった戦争時(戦後)の大変さを実感するようなシーンがあったら良かったと思った。ただ、暢子にとってはやんばるの食生活も粗末なものだったから、さほど驚きはないのかもしれない。だからこそ、沖縄の外の世界で美味しいものをたくさん食べたいと強く願ったのだろう。

 ともあれ、このエピソードで重要だと感じるのは、遺骨収集を続けている嘉手刈(津嘉山正種)の話を聞いたエピソードと同じく、主要人物が、先人の体験談を聞くという形をとっていることだ。

 これまでの朝ドラは、戦争中の物語で、主人公が戦争を経験するものが多かった。それが本作では、若者が年上の人たちの体験談を聞くのである。しかも、それを、真摯に丁寧に正確に受け止めて……という申し分ない聞き方ではなく、かなり未熟な聞き方だ。そのうえ“自分ごと”に置き換えるのだ。戦中を生きた先人の不幸を受け止めて、いま生きている自分たちは幸福であろうとする。

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 愛する人の手を絶対離さないと誓い、住む世界が違うと言われ悲しい別れをした三郎(片岡鶴太郎)と房子の気まずさを解消し、ひとり相撲で失恋し気まずくなった智(前田公輝)とも元通りの友情を取り戻し、みんなで幸せになろうとする暢子。

 つらい目にあった人たちがいる、その人たちの分まで自分たちは幸せになろうと思う。それもまた、史彦の残した「そして思い出は必ずそれぞれに違います。その違いを知って互いに尊重してください。その先にだけ 幸せな未来が待ってると私はそう思っています」という言葉の実践なのではないだろうか。

 戦争を物語のなかのことにするのではなく、戦争を聞くことを物語にする、これがこれからの物語になっていく。(木俣冬)

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