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“戦争を聞くこと”を物語にした『ちむどんどん』 幸福を求め続ける暢子の生き方を考える

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『ちむどんどん』写真提供=NHK

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』の第18週「しあわせのアンダンスー」は、おいしくない料理の思い出という興味深いことが描かれた。

参考:『ちむどんどん』重子「私も琉装にすればよかった」に波子も二度見 2人は癒し系コンビに

 暢子(黒島結菜)との結婚を許可しない和彦(宮沢氷魚)の母・重子(鈴木保奈美)を説得するため、房子(原田美枝子)のアイデアで、戦後、闇市がマーケットに変わった頃、重子が亡き夫・史彦(戸次重幸)と和彦と食べたおいしくない料理を再現。かなり攻めた作戦ながらこれが成功し、重子は結婚を許す。

 箱入り娘だった重子は史彦とうまくいかず、和彦も史彦に懐いていて、史彦の死後も変わらず孤独を味わっていた。そんな重子の唯一の家族団らんの思い出がマーケットで食べた代用食だった。どんなに仲が悪くても夫が戦争から生きて帰ってきたことは嬉しかった。その感情を、そしてどんなものでも誰かと一緒に食べれば美味しいということを重子は思い出し、いま一度、誰かと食事を共にすることを決意したのであろう。

 重子の結婚反対は、孤独な身ゆえの意地っ張りであって、心底、反対していたわけではないであろうことは、暢子に呼ばれると、あまゆにもフォンターナにもやって来ることからわかる。ほんとうにいやだったら呼ばれても頑として行かないだろう。

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 結婚を許した重子は暢子に「しーちゃんと呼んで」と条件をつける。お義母さん、おばあちゃんなんて呼ばれたくない、年齢に縛られたくないというような気持ちもあるだろうけれど、おそらく「しーちゃん」なんて気さくに呼ばれたことは彼女の人生でほとんどなかったのではないか。愛称で呼ばれることで孤独を埋めたいのではないだろうか。

 多様性が求められる時代、独りで生きることも肯定してほしいところだし、波子(円城寺あや)という忠実な家政婦もいるから重子は決して孤独ではないのだけれど、『ちむどんどん』は“家族”の物語なので、徹底して“家族”推しである。

 比嘉家は貧しく、粗食ではあるが、いつも家族がそろって食卓に向かい、楽しく食べた思い出を持っている。思い出すのはいつも、食卓の団らんである。そうやって培われた家族パワーは、暢子の結婚を許可してほしいと不器用ながら兄妹そろって頼み込む行為に注がれる。

 良子(川口春奈)は沖縄からはるばるやって来て、賢秀(竜星涼)も青柳家を訪ねる。歌子はカセットにメッセージと歌を吹き込んで良子に託した。住む世界が違うと毛嫌いした家族の、人の好さに触れた重子の心は大きく動いたことだろう。賢秀が、重子のオルゴールを壊してしまう粗相は、重子の閉ざされた孤独の世界を賢秀が壊した現れとも考えられそうだ。

 おいしくない料理の思い出の味で、視聴者を喜ばせたのは、亡き史彦が第9話で語ったセリフだった。史彦は自分が生業にしている民俗学とは「みんなの思い出なんだと思います」と暢子(稲垣来泉)たち小学生に説いた。

「そして思い出は必ずそれぞれに違います。その違いを知って互いに尊重してください。その先にだけ 幸せな未来が待ってると私はそう思っています」

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