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エースの“ベストピッチ”でも「打倒・大阪桐蔭」はならず。旭川大高の健闘ぶりに感じた試合をコントロールする難しさ<SLUGGER>

THE DIGEST

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エースの“ベストピッチ”でも「打倒・大阪桐蔭」はならず。旭川大高の健闘ぶりに感じた試合をコントロールする難しさ<SLUGGER>

 ジャイアントキリングはならなかった。

 旭川大高が優勝候補の大阪桐蔭高に、3回表までに3対0とリードしながら中盤に追いつかれ、終盤にとうとう力尽きた。3対6の敗戦。30年間も甲子園で勝っていない歴史を考えれば大健闘とも言えるが、旭川大高の端場雅治監督は悔しさをにじませた。

「結果から言うと、よくやってくれたかなと思う。そう思いますけども、勝負なので勝ちたかった。うちが大阪桐蔭さん相手に勝つとすれば、100%のゲームをしなきゃ駄目だっていう思いがあって生徒にも伝えていたので、そこでミスが出てしまったところにうちの最大の敗因があるのかなと思います」

 とはいえ初回に先制し、3回表の時点では3対0。6回まで同点の展開を作れたのは見事な戦いぶりだったと言えるだろう。小技と長打の両方を絡めた攻撃と、先発したエース池田翔哉の奮闘は「番狂わせ」の期待を抱かせるものだった。

 旭川大高は北北海道大会からエースの池田と、この日も2番手でマウンドに上がった山保亮太の2人で勝ち上がってきた。ゲームメイクに優れる前者と、イニングを上回る三振を奪っている後者が、切磋琢磨しながら試合を締めていくというのがこれまでの戦い方だった。

 ところが、今日は池田を7回途中まで引っ張った。
  ここにジャイアントキリングの難しさが表れている。

 端場監督によれば、この日の池田は「3年間で、何本かの指に入るほど」のベストピッチだったという。ストレートの勢いもさることながら、変化球がことごとく低めに決まった。これが序盤の大阪桐蔭を苦しめた。

 大阪桐蔭・西谷浩一監督も想定していなかったと語っている。

「もう少しストレートが多いイメージを持って入ったんですけども、変化球をうまく使われて『打つ』というより『打たされてしまう』ようなバッティングになってしまったのが、うまくいかなかった原因だと思います」

 ミスなどが絡んで3回に2失点を喫するも、池田はマウンドでは表情を何一つ変えずに、淡々と投げ込んでいた。相手打線に恐れを抱いているような印象もないようで、堂々と対峙する見事なピッチングだった。

 やはり池田も、この日のピッチングに手応えを感じていたという。点数は「100」と答え、こう語っている。

「地方大会に比べてスライダーが低めに集まっていたので、そこが良かったと思います。点数を取られた時に同じテンポでいくのではなくて、流れを変えるために少し間を置いたりしたのがよかったと思います」 ただ、だからこそ難しかったのは、エースが好調であるがゆえの投手交代のタイミングだ。

 池田には完投能力があるものの、やはり大阪桐蔭打線は強力。一人で投げ切るのは難しいうえに、そもそもチームには池田に匹敵する投手がもう1人いる。このスイッチのタイミングをどうするかだ。

 端場監督は池田に7回までを任せた理由をこう説明する。

「僕の中では、本当は池田には5回ぐらい、その後を山保で行こうと。(北北海道大会では)そういう使い方が多かったので、試合前のプランとしてはそう思っていましたけど、池田がすごく頑張って投げてくれた。ただ、ホームランを打たれたのは僕の中では計算外というか。大事なピンチで逆転される前に、山保で行ければよかったかなと思っていたんですけど……」

 大阪桐蔭の打線に畳み掛けられそうになったら交代させよう。端場監督にはそういう算段があったが、そんな場面がこなかった。ただ、6、7回に1本ずつ浴びたホームランが致命傷になった。
  池田は言う。

「スライダーでは勝負できていたと思うんですけど、インコースに投げた真っすぐをホームランにされたのは少しびっくりしました。コースにしっかり投げれば打たれないと思っていたんですけど、それを打たれたのはやはり(大阪桐蔭打線は)凄いなと思いました」

 池田が悪かったわけではない。だからこそ端場監督は、いつものような継投は選択しなかったが、結局大阪桐蔭を抑え切ることはできなかった。7回途中から山保がマウンドに上がったが、勢いに乗る大阪桐蔭打線を止めることはできず、2点を失って3対6にまで差が広がった。

 8回表、旭川大は4番の鶴羽礼、山保の連打で無死二、三塁の好機をつかんだが、続く池田が放った一塁への痛烈なライナーで、山保が飛び出し併殺打。9回にもチャンスはあったが、攻め切ることができずに敗れた。

 あわやジャイアントキリングが起きてもおかしくなかった。

 だが、改めて継投策も含めて、試合をコントロールし続ける難しさを感じた試合だった。そして何より、すべてを跳ね返せる王者・大阪桐蔭に強さを感じたのもまた事実である。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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