top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

世界初、精子も卵子も子宮も使わず、幹細胞だけから人工胚の育成に成功

カラパイア


 世界で初めて、精子も卵子も子宮も使わない「人工胚」を育成させることに成功したそうだ。

 イスラエル、ワイツマン科学研究所のグループは、マウスの「幹細胞」をペトリ皿で培養し、精子や卵子に頼ることなく、子宮の外に設置された機械の中で数日間成長させた。

 学術誌『Cell』(2022年8月1日付)で発表されたこの成果は、将来的には移植用の臓器や組織を育てて作る開発にもつながるかもしれないとのことだ。

幹細胞で人工胚を成長させる難しさ

 成熟した細胞を幹細胞に戻す方法はすでに確立されている。だがその逆のプロセス、つまり幹細胞を分化させて、それぞれの役割に特化した細胞や臓器に成長させるのは、はるかに難易度が高いそうだ。

 ヤコブ・ハンナ博士は、「これまでのほとんどの研究では、特化した細胞は作りにくいか、異常であることが多かった。移植できるようなきちんとした構造ではなく、ごちゃ混ぜの組織になってしまう」と述べる。

 そんな難題を、幹細胞にプログラムされた自己組織化能力を解放することで突破することができたという。

世界初の合成胚が発達する様子(1~8日)/Weizmann Institute of Science

合成胚を人工子宮で成長させることに成功

 今回の成果は、この分野における2つの重要な進歩がベースになっている。1つは、幹細胞を再プログラムして無垢な状態、つまりさまざまな細胞に分化する最大限の可能性を秘めた、一番最初の状態に戻す効率的な方法だ。

 もう1つは2021年に発表された、マウスの自然胚を子宮の外で成長させる電子制御の人工子宮だ。

 お腹の胎児には胎盤を通じて常に血液が供給されている。人工子宮はその仕組みを真似たもので、ビーカー内の胚に常に栄養液を与えつつ、酸素交換と気圧を細かく調整する。

 過去の研究によって、この人工子宮でマウス胚を5日から11日間成長させられることがすでに実証されている。

 だが今回の研究では、受精卵は一切使われていない。ペトリ皿で数年間培養したマウスの幹細胞を、精子も卵子も使わず、人工子宮の中で成長させることに成功したのだ。

 受精卵が使われない意味は大きい。それにまつわる技術的・倫理的な諸問題を回避できるからだ。

 成長した合成胚は、内部構造と遺伝子発現パターンの95%がマウスの自然胚と一致していたという。また内臓もきちんと機能しているらしいことが、各種指標から確認されている。

幹細胞から合成マウス胚を成長させる方法 / image credit:Weizmann Institute of Science

先天異常などの研究や、移植用臓器開発に期待

 幹細胞や胚発生をテーマにする研究者にとっては、まったく新しい研究分野が誕生したことになる。

 ハンナ博士は、「次の課題は、幹細胞が自分の役割を知る仕組みを解明すること。幹細胞はどうやって内臓に自己組織化し、胚の中でしかるべき位置に移動するのだろうか」と話す。

 人工子宮は、本物の子宮と違って透明なので、胚の先天異常や着床障害のモデル化に役立つ可能性があるとのこと。

 また動物実験を減らすことにもつながり、ゆくゆくは人間に移植する組織や臓器の供給源になるとも期待できるそうだ。

References:1st synthetic mouse embryos — complete with beating hearts and brains — created with no sperm, eggs or womb | Live Science / Without an egg, sperm or womb, scientists create synthetic embryos in world first – ABC News / written by hiroching / edited by / parumo

TOPICS

ランキング(動画)

ジャンル