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これまでは考えられなかった“攻撃的2番”の活躍で勝利。聖光学院が見せた伝統からの脱却<SLUGGER>

THE DIGEST

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これまでは考えられなかった“攻撃的2番”の活躍で勝利。聖光学院が見せた伝統からの脱却<SLUGGER>

 斎藤智也監督が漏らした本音と裏腹な試合運びに、ちょっとした期待を感じた。

 8月9日、3大会ぶりの夏の甲子園となった聖光学院高が、4対2で強打の日大三高をねじ伏せて2回戦進出を果たした。

 夏の甲子園を2度制覇している強豪・日大三を相手に、小技ではなく長打攻勢でモノにした試合運びに聖光学院の成長を見た。

「勝ちパターンなったときはこういう風になればいいなと思い描いていましたけど、点数の取り方がウチらしくないというか。もう少し機動力をうまく使いながらランナーを進めてというイメージがあったんですけど、意外な下級生の援護射撃(2本のホームラン)が大きかった試合でした」

 快心の勝利に斎藤監督は複雑な心境を漏らしたが、この勝利こそ、今や甲子園の常連となった聖光学院が目指していくべき野球なのかもしれないと思った。

 昨年夏に出場を逃すまで、聖光学院は13年連続で甲子園進出を果たしてきた。好投手を中心とした堅実なスタイルと、ベンチやスタンドを含めたチーム全体が一体となって戦う形で、福島を制し続けてきた。
  しかし、甲子園では実力相当の相手には通用しても、強豪校の前には力なく敗れることも少なくなかった。守備重視の堅実なスタイルだけでは勝ちきれない相手がいることを痛切に感じた13年でもあったのだ。

 今年の初戦の相手となった日大三も甲子園常連。それこそ序盤から圧倒的な打力を発揮してくるチームだ。

 事実、初回から先制点を許し、4回にも1死一、三塁と攻め立てられると、二塁ゴロの間に生還を許して0対2と劣勢を強いられた。

 しかし、ここからの粘りがいつもの聖光学院とは一味違っていた。

 4回裏、先頭の高中一樹が2球目の変化球を一閃してレフトへの二塁打。ワイルドピッチで三塁に進むと、4番・三好元気のサードゴロの間に生還し、まずは1点を返した。

 そして5回裏、二死から1番の赤堀楓が二塁打で出塁すると、高中が今度は左翼スタンドに飛び込む逆転本塁打。長打攻勢で逆転に成功したのだった。これが斎藤監督が言うところの「本来とは違う野球」というわけである。

 8回裏には4番の三好がこちらも左翼スタンドに飛び込む貴重なダメ押しソロ本塁打。またも長打で試合を決めてしまったのである。
  聖光学院の打線の組み方はセオリー通りで、最近増えてきたメジャー流を意識した打順の組み方をするチームとは一線を画す。それだけに面白いのは、この日ホームランを含む2本の長打を放つ活躍を見せた高中が「2番」であると言うことだ。聖光学院らしくないとも言える打者なのだ。

 斎藤監督は高中を2番に起用した理由をこう明かす。

「攻撃型という狙いもあって高中を2番にしました。パンチ力がついてきて、今や1番から6番まで、どこでもこなせる選手に成長してきた。ここんとこの練習で一番調子が良かった。でも1番の赤堀に代えてというわけにいかないですし、2番に置いとくのが一番いいと。犠打だけじゃなくて“打てる2番”という考え方。初回にバントしましたけど、エンドランで行こうかと思ったぐらいなんです。それくらい攻撃型の2番として使えるようになってきたのは非常に大きいです」

 指揮官の考え方も堅実なところから変化してきているとも言える。

 高中は「つなぎを意識している」と言いつつも、指揮官からの期待をこう受け止めている。
 「監督からは全部つなげというふうには言われてないんです。冬からバッティングが良くてずっと練習してきたんで、結果で出たのも嬉しいです」。

 2012年、聖光学院は1回戦で同じく日大三と対戦して勝利している。だがこの時は、2対1と競り合いを制したゲームで、それこそ過去の聖光学院が得意とした粘って守り切った試合だった。

 同じチームに対する勝利でも、異なる戦いで勝利できたことに聖光学院の成長を感じる。

 次戦の相手は横浜高だ。またも甲子園の強豪校との戦いに斎藤監督は目を輝かせた。

「今まで神奈川勢には勝ったことがないので、うちとしては、非常にやりごたえのある対戦になると思います」

 さらなる高みを目指して聖光学院が「打倒・神奈川」に立ち向かう。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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