収録作品のなかに『ショートショートの主人公』というタイトルの読み切りが存在する。『あしたのジョー』を思い起こすような画風で描かれた父と、まるで少女漫画のキャラクターのような容姿をした母。お仕事系漫画に登場しそうな姉と、千年に一度の「対魔師」としての才能をもつ兄。そんな家族として生まれたのは“ショートショートの主人公”である少女。彼女がひょんなオチで死んでしまうことを不安に思う家族が、少女の結末を考えるという物語だ。
可笑しさも感じてしまうこの作品には、以下の台詞が描かれる。
ショートショートって難しいな
上記は『ひきだしにテラリウム』だけでなく、多くの漫画家の声を代弁したものではないだろうか。
限られたページ数のなかで起承転結を組み立てる作業は、連載作品とは異なるむずかしさがあるのだろう。連載作品とは異なる苦労のなか、作家から絞り出されるからこそ、連載作品とはひと味違った濃厚さや味わいを感じるのかもしれない。