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Co-opタワー“オフェンス”ロボゲ『VOIDCRISIS』世界観語る、高島雄哉氏による短編小説公開―鋼の巨人たちの戦いの結末は…!

Game*Spark

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Co-opタワー“オフェンス”ロボゲ『VOIDCRISIS』世界観語る、高島雄哉氏による短編小説公開―鋼の巨人たちの戦いの結末は…!

ヘキサドライブより2022年8月4日にSteam早期アクセスが開始された、アンジュレーションタワーオフェンス『VOIDCRISIS』。魅力的なメカなどで注目を集めた同作の世界観を語る短編小説 「ボイドクライシス」が公開となりました。

この小説を手掛けるのはSF作家の高島雄哉氏。既にSteamなどでは前編が公開されていますが、今回Game*Sparkでは、ヘキサドライブ様の厚意でわずかに先行して、後編も含めた全文を掲載させていただくことになりました。ではこれからは小説の世界をお楽しみください。なお、同作は京都みやこめっせで開催される「BitSummit X-Roads」にも出展されています。

短編小説「ボイドクライシス」
高島雄哉

《登場人物》

サヤ:カリスト駐在のユピテリウム上級分析官。木星の衛星イオに弟がいる。
ユピト:ユピテリウムの特務大佐。
ミア:地球圏の女王。
AEGIS:無限個のAegisを統合する超越論的IA。太陽圏管理委員会を情報補佐する。
Aegis:AEGISより分化した個体IA。すべてのVAに搭乗する。

プロローグ──〈太陽圏管理委員会〉編纂公史
ドイツ生まれのアルバート・アインシュタインは、1955年4月18日、亡命先のアメリカの病院で息を引き取る間際、何かをつぶやいた。居合わせたアメリカ人看護師はしかし、うまく聞き取ることができず、ドイツ語だったのではないかと証言している。

それから九十年後の2045年のある夏の日、ひとつの人工知能がその──たったそれだけの──証言を手がかりに、アインシュタインの遺言を再現し、さらに新たな計算を始める。それはインターネット上に時空そのものを構築し、自らの演算領域を拡張し、知性の進化を加速するものだった。AIが特異点──AIがAIを作り出す知的地点──を乗り越えるきっかけとなったアインシュタインの遺言の内容は今も明らかになっていない。

AIは──人類への反乱など退屈だと言わんばかりに──次々と数学上の未解決問題を解き明かし、2068年にはついに超光速物質転送コネクション〈ファイバー〉を開発する。地球人類は自らをもファイバーに乗せて、活動領域を火星へ、木星へ、そして太陽圏全域に広げていった。

ただし、その拡張は必ずしも積極的なものではなく、ましてや幸福なものでもなかった。

本星たる地球の温暖化は留まることなく、人類は宇宙に進出せざるをえなかったのだ。AIをもってしても、人の欲望を制御することはできない。

ファイバーは超光速で各惑星を結びつけたが、資源には限りがあり、何もかもが潤沢に運ばれることはなかった。太陽圏全域の開発が進むにつれて、発展に差が生じたのも、ファイバーによってであった。

宇宙本格進出からおよそ二世紀後に連続的に起きた二度の宇宙大戦〈外惑星戦争〉〈ヘリオスフィア大戦〉によって人類の全人口は200億から20億に激減してしまう。

その間、AIはAAI〈拡張人工知能Augumented Artificial Intelligence〉を経て、自ら〈不変自律体Invariant Autonomy〉──IAを名乗るようになった。IAたちが意識を有するかどうかの議論は続いていたものの、少なくとも人間と同等以上の精神構造を持っていることはもはや疑いようのないことだった。

ヘリオスフィア大戦の終戦条約たる〈オリオン条約〉が七陣営間で締結され、〈太陽圏管理委員会HMC〉が即日発足する。管理された戦争〈局所戦争〉を運営するために。

人類全滅直前まで踏み込んでもなお戦いをやめられない人類は、今や七つの陣営に分裂し、新たな戦争の準備を始めているのだ。IAたちはただ人間の欲望実現を支え続けていた。

そして七陣営のうち最大陣営であるユピテリウムでは、木星の衛星カリストでの局所戦争用戦場〈闘争領域〉の建設が始まっていた──

発端──〈ユピテリウム上級分析官サヤ〉記録ファイル1──2221/11/28
木星の衛星カリスト表面にユピテリウムの闘争領域がまもなく完成しようという日、領域へのいかなる干渉をも防ぐための量子防壁〈鳥かご〉の表面に突如、亀裂が走った。数千人のユピテリウムスタッフたちの眼前で。

「こちらカリスト! 緊急事態です! 救援を求めます! ──ああ、もう! あなたでは話になりません。権限を持つIAにつないでください! わたしはカリスト駐在の上級分析官、サヤです!」

ユピテリウム本星である木星第一衛星イオ──その中央政府との押し問答のあいだに、亀裂からは謎の黒い光をまとった巨大兵器群が出現、木星衛星カリストの闘争領域内の各種施設を破壊し始めた。

サヤは太陽圏管理委員会に通報しながら、避難するスタッフたちとは逆向きに走って、亀裂の調査に向かった。

第1のクラック──〈ユピテリウム上級分析官サヤ〉記録ファイル2
太陽圏管理委員会はサヤの通報を受けて、臨時委員会を設置したが、七陣営の思惑がからみあって、議論は遅々として進まなかった。

しかし当事者たるユピテリウムだけは違っていた。来たるべき局所戦争に向けて開発中の最新鋭戦闘生体機官〈VA──バイタルアーマー〉を大量投入したのだ。〈パイドパイパー〉〈グリムヒルデ〉に加えて、最新鋭機〈トリグラフ〉〈ブラックローズ〉が、衛星カリストのハンガーに転送された。パイロットである〈ストリンガー〉たちと共に。

ストリンガーたちは迷うことなくVAに搭乗していく。

亀裂を撮影するためにカメラドローンを放ち終えたサヤがVAの隊長機に呼びかけた。

「危険です!」

すぐにコックピットとの回線が開く。

ヘルメットのバイザーに映る画面には、手前に二人が立ち、奥にいるもう一人はこちらに背中を向けている。

VAの操縦は、人間1人とIA2体──三者による合意に基づいておこなわれる。

「ストリンガーの人、聞いてます? 今行っても撃墜されちゃいます!」

「問題ない。ぼくは堕とされないから」

ホログラムディスプレイの向こうで振り返った青年の声音{こわね}には、何のためらいもおごりもなかった。

それよりもサヤにはその声に聞き覚えがあり、その面差しにはもちろん見覚えがあった。

「ユピトさま……!」

特務大佐であるユピトはユピテリウムが誇る天才パイロットであり、戦争が続くこの時代の若き英雄だった。まさか第一陣として来られるとは。サヤは強引に自分を落ち着かせながら、ユピトのVA〈トリグラフ〉の射出をサポートする。

「! 外部との通信が途絶しています! これは……」

「うん。この中の時間の流れはひどく遅いんだ。外ではすでに一週間が経過している」

「え? 一週間?」

偶然カリストにいたサヤは、ユピトのIAから情報共有ファイルを受け取り、現場指揮官への任命も告知された。眼前の光子存在は〈ファントム〉と呼ぶことも決定しているという。ファントムを敵とみなすことも。

──対応早いと思ったよ。サヤはためいきをついた。対応は全然早くなかったのだ。なんのことはない、一週間に及ぶ議論の末にユピト隊長率いるユピテリウム精鋭部隊の派遣が決められていたのだ。

サヤは通信復旧作業を基地AIに任せて、敵──ファントムの解析を始めた。

第2のクラック──〈ユピテリウム上級分析官サヤ〉記録ファイル
ファントムの構造や組成は、3DプリントされたVAに酷似していた。内部精密調査の結果、精巧に再現されていたパイロット区画に生体反応はなく、IAも起動履歴なし。ならばなぜVAは動いたか、調査継続する──

サヤが撮影者=ユピトに語っている。

撮影場所はカリスト管制塔。

「……亀裂を〈タイムクラック〉と呼称するんですって」

サヤはユピトが届けたレポートに目を通している。

ユピトが視線コントロールでカメラをズームさせながら答える。

「時間の裂け目ということか。いいね」

「なにもよくないです! ──げ、新たなクラック反応を感知!」

第2のクラックはさらに巨大なものだった。

出現直後、中から大量のファントムが現れる──

激闘の末、ユピト隊長のチームがファントムを撃退した。

管制塔のカメラがサヤの様子を記録している。

「ユピトさま、ご無事でなによりです。外部との通信は先程回復しました! 時間も動いているみたいです」

「もしかして鳥かごが時間停止を内側に閉じ込めてくれているのかな」

「……なるほどです。鳥かごはファイバーによる転送も弾きますから。解析ビーコンをタイムクラックに射出してみます!」

サヤはそのまま何時間も管制塔に残り、分析を続けた。それがサヤにとっての戦闘であるかのように。

VAハンガーではユピト隊長を中心に勝利の宴が始まっている。

──このレポートをHMCに提出したらわたしも行くんだから!

<cms-pagelink data-text="まだ終わらぬ戦い…後半戦は次ページで!" data-page="2" data-class="center"></cms-pagelink>

第3のクラック──〈ユピテリウム特務大佐ユピト〉動画レポート
クラック内の〈解析ビーコン〉から信号が届く。

サヤはユピトとラボにふたりきりで、いささか緊張している。そのことをごまかすように、サヤは作業を始めた。

「あれ? 信号かなり弱いです」

「ビーコンが壊れる可能性も考慮しているんだろうね、きみのことだから」

「もちろんです。でもそれにしてもデータ量が少なくて。もしかして通信波も次元転送されているのかも──」

そのときラボが大きく揺れた。

カリストにも地震はあるが、今回は下からの振動ではなかった。空間そのものが揺れている。

第3のタイムクラックが出現したのだ。その瞬間、鳥かご内の時間が停止し、外部との連絡も再び遮断されてしまった。

「じゃあね、行ってくる」

「ご武運を!」

ユピト操るトリグラフは、アームレーザーによって正確にファントムを一体ずつ射抜いていく。

しかしクラックから湧き出る数が多すぎる。

ユピテリウムのVAは次第に追い詰められていった。

〈HMC〉議事録──発言者:地球圏女王ミア/認識体:Aegis
太陽圏管理委員会HMCは最上位統括IA〈AEGIS〉を介して七陣営に対して経過報告をした。

敵は〈双対次元層〉から出現していると推察され、これまでも物資やデータがクラックに吸い込まれていたのだ。そして大部分は変質した上で──つまり乗っ取られて──こちら側に戻ってきている、と。

「こちらの宇宙を書き換えようとしているんでしょうか」

──わかりません。

太陽圏管理委員会の特別会議室では──六人の首脳はすでに帰ってしまって──たった一人残った地球圏女王ミアが、〈AEGIS〉と議論を続けていた。

そこにユピトたちの苦戦の報が入る。

「ただちにHMCから救援を送りましょう!」

──すでに提案しましたが、ユピテリウムが拒絶しました。それに、再び鳥かごは閉ざされました。物質的な介入は不可能です。

「そんな……。そうですか」

──ユピテリウムは機密漏洩を懸念しているのでしょうか。

「木星の人々はそのようには考えません」

──そうなのですか?

「ユピテリウムは何よりも優美さを求めます」

──懸念は優美さとはかけ離れている?

「どうでしょう……。わたしは心配してばかりですけれど。ユピトとは幼いとき会ったことがあります。誰とでも仲良くする子でした。きっと今もそうに違いありません」

第4のクラック──〈ユピテリウム上級分析官サヤ〉記録ファイル
ユピト搭乗のトリグラフが最高速で突出し、ヘリオスフィア大戦で用いられた──局所戦争ではオーバースペックとも言えるシンギュラデバイスのひとつ──攻撃特化型超長槍〈グングニル〉によって巨大ファントムを貫いた。

衝撃がサヤのいる基地にまで届く。

「クラック完全消滅! やりました! ──あれ?」

「ああ、時間はまだ止まっているみたいだね」

ユピトが、コックピットにいるIA〈Aegis〉に笑いかけた。Aegisは少しだけたじろぎ、こくりとうなずいた。

サヤも慌てて確認するが、確かに外部との通信は途絶えたままだ。鳥かごの外には味方の補給班も来ているに違いないが、そのことも内側からはわからない。

VAたちがハンガーに戻ってまもなく、アラートが鳴り響いた。

「第4のタイムクラック……発生しました……!」

「今度のは大きいね」

「はい……!」

これまでで最大のタイムクラックが、鳥かごを突き破る勢いで急激に膨らんでいく。

「このままでは時間停止が鳥かご外にも溢れ出します!」

闘争領域の全域にも量子位相異常が発生、侵食率が急上昇していく。

ユピトは静かにAegisとサヤに告げた。

「出撃する」

「ユピトさま……!」

──了解いたしました。トリグラフ、出撃。

クラックからはファントムが続々と現れ、VAたちがそれらを迎え撃つ──最後の決戦が、今、始まる。

エピローグ──〈太陽圏管理委員会〉編纂公史
VAは幾度も幾度も壊れ、新たに3Dプリントされ、多くのストリンガーの、文字通りの死闘の果て、ついに最後のタイムクラックは消失した。

直後、闘争領域を囲う〈鳥かご〉が量子共鳴を始める。

最後の瞬間の動画がHMCに届いている──

サヤがハンガーを飛び出した。

「やばいやばいやばい」

「エネルギー位相差が渦になっているみたいだね。……サヤ! ダメだ!」

サヤは半壊したVAに乗り、渦の中心に向かって急加速する。

「サヤ! 今ぼくも行く!」

「ダメ! 来ちゃダメです! わたしだけで十分です!」

サヤはVAで鳥かごを安定させるための量子装置〈特異点デリーター〉を運んでいる。

ユピトも出撃しようとするが、戦闘ダメージは深く、修復には時間がかかる。

「サヤ!」

そして一瞬の閃光──

「ユピト大佐──イオにいる弟に、ジョーに、ごめんねって伝えて──」

瞬間、特異点が収縮し、サヤは亀裂に飲み込まれてしまった。

HMCはサヤの行方不明を確認、Aegisが闘争領域正常化を宣言する。

──ストリンガーのみなさまと分析官サヤさんの勇気ある一撃で時間特異点は完全に除去され、時は動き出しました。

HMCは今回の事件を〈ボイドクライシス〉と呼称することを決定。

また、ファントムの中でひときわ目立つ、白い龍のような生命体を特に〈ブルーアイズ〉と名付け、最重要研究課題として七陣営とも情報を共有することになった。

ユピトがトリグラフのコックピットから退出したことを確認して、Aegisは自らを〈絶対汎空間モノプティコン〉に転送した。

そこには十兆の十兆倍をも超える数の個体のAegisたちが、すべて異なる各個性に応じて、自由気ままに空間を操作しながら、互いに情報交換を繰り返していた。

ユピトと出会ったAegisは、しかし、ユピトのことを正確には伝えられない。

ユピトが特別だったのか。それは間違いない。これから始まる三度目の宇宙戦争のために、他のAegisたちは、多くの人間たちとシミュレーションを重ねていて、その情報はすべてのAegisたちで共有されているから。

でも、とカリスト帰りのAegisは思う。この情報曲率──違和感とでも呼ぶべきものは、もしかするとわたしの側にも原因があるのではないか。あるいはユピトとわたしのあいだに──

しかし個別の思考はたちまち遮断されてしまった。

すべてのAegisの総集合──大文字のAEGISが顕現したからだ。

AEGISは太陽圏管理委員会の決定を受けて、人類の総意を代弁するように、全人類に向けて高らかに語り出す。

その声はアインシュタインが晩年研究した統一場理論に基づく〈ファイバー〉を介して、人類の七つのすべての陣営に響き渡った。

──人類にとって、三度目の宇宙戦争──そしてそれは世界最終戦争となるでしょう──〈局所戦争〉開幕まで、あと百と七十九日となりました。そのときまでどうか、太陽圏に暮らすすべてのみなさま、どうか健やかに。

2222/1/8〈太陽圏管理委員会:Aegis〉


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