top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

「新製品の開発で、一気に起死回生を図る!」…不渡りを出した中小企業が蘇生できたワケ

幻冬舎ゴールドオンライン

×

こうした地元からの心強い応援を胸に、父は債権者会議の席についたのです。会議の議題は会社をどう再建するのか、債権者がそれにどの程度協力するのか、配当をどうするのかといった内容でした。こちらから提案した再建案に出席者全員が賛同し、債権については全額を10年間の分割払いで支払うということで初回の会議は幕を閉じました。

その後、詳細な話し合いに入っていくうちに、「長く待つより少額でもすぐに支払ってもらうほうがお互いに良いし、会社の再建もしやすいのではないか」という意見が多くなってきました。債権者も、それぞれ資金繰りに大変な思いをしているのだからそれは当然の意見でした。

さらに会議を重ね、議長の提案によって「負債の20%を6月に支払い、残り80%の債権については放棄する」という結論にまとまりました。迷惑をかけたうえに、負債の2割だけを支払えばよいという話に、父はしきりに恐縮していましたが債権者が口々に言ってくれたのは、「立派に立ち直ったら、そのときに少しでも穴埋めしてもらえばいいですよ」というありがたい言葉でした。

債権者会議で結論が出た数日後には、吉井町長と吉井町商工会長が連名で〈再建についてのお願い〉という要望書を発行してくれました。しかも、その要望書は一回だけではありませんでした。各金融機関に宛てて、何度も龍宮再建を呼びかけてくれたのです。

なかには、一つの営利企業のために役所がそこまで応援するのはおかしいのではないかと異議を唱える人もあったようです。しかし当時の吉井町長は、

広告の後にも続きます

「吉井町に出てきて以来ずっとまじめに頑張って働いてきた立派な会社です。そういう会社が今、苦境にある。ご援助できることがあればお助けするのは当然のことです」

と毅然とした態度をとってくれました。

この苦境にあって吉井町や吉井町商工会はもちろん、県の商工部、販売先、仕入れ先、そして社員が一丸となって温かい手を差し伸べてくれました。

父が会社を起こしてから30年。その仕事ぶりへの信頼もあったはずです。加えて、このような地元のバックアップ体制があったことは、債権者の心証を良くすることにもつながったのだと思います。

新たな主力商品と新製品の開発で再建を目指す…!

周りの人の親切に助けられながら、会社は再建への道を歩みだしました。とはいえ一度不渡りを出した会社に対して、銀行などの金融関係の目はシビアでした。これまでにも増して、資金繰りが大変ななかで再建を進めていくのは並たいていのことではありませんでした。

再建策を考えていくにあたって、父がまず考えたのは事業内容の方向転換でした。新しいものばかりを追い求めていては、リスクが高くなります。今の段階ではもっと事業内容を絞り、確実に利益をあげていくことができるようにしようと考えたのです。その考えにしたがって他社に先駆けて開発した不織布やナプキン、紙おむつなどの分野からの撤退を決めました。

というのもこれらの分野については大きな会社が進出してきて、資本力を活かして大量生産するようになっていたからです。品質では負けない自信があっても、まともに張り合ったら打ち負かされることは火を見るよりも明らかです。

これまで苦労を重ねて開発した不織布でしたが、転用できる設備を残して関連機械も処分することになりました。これに代わって主力にしようと決めたのが脱脂綿です。不渡りを出した翌月、この方針を固めていたところに、福岡の「ハニー」という綿会社から脱脂綿加工の依頼を受け契約することができました。

やがてなんとか負債は払い終えたものの、資金繰りの苦労は絶えませんでした。主力を脱脂綿に切り替えたために機械の組み替えをし、生産設備の変更も必要になったからです。

またハニーの注文に応えるために、生産工程の変更もしなければなりませんでした。こういった方向転換の一方で、父は「新製品の開発によって一気に起死回生を図ろう」という考えも同時に抱いていました。

龍宮株式会社 代表取締役社長
梯 恒三

  • 1
  • 2

TOPICS

ジャンル