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「1万円札の絵」を描いてわかる子供の投資センスとは? お金の授業の現場から

日刊SPA!

「1万円札の絵」を描いてわかる子供の投資センスとは? お金の授業の現場から

◆お金の話をタブー視してきた日本

 2022年4月から、文部科学省が出した新しい指導要項にならい、高校で「金融教育」がスタートしている。しかし、すでに社会に出ている私たちの多くは、きちんと金融を教わった経験がない。それがビハインドとならないためにも、金融教育が必要になった背景と、資産や投資の基礎を「超簡単」に学んでみよう。

 日本ではこれまで、はっきりとした金融教育を行ってこなかった。それは「お金の話をタブー視」してきた文化だと語るのは、一般社団法人マネーリテラシー推進協会(以下、マネリテ)の代表理事を務める濱田智幸氏だ。

「高度経済成長期は、国が『貯金をしましょう』と呼びかけていました。積立をたくさんした学校に、大蔵大臣が表彰に行ったりしたこともあったみたいです。だから、昭和世代は、お金の話をせずに、コツコツと貯金をすることが美徳だと思っている人が多いですね。そこでまずは、お金のことについて向き合ってもらうことが重要だと思います」

◆中学校でのお金の授業は?

 そう話す濱田氏が代表理事を務める同協会は、高校での金融教育開始に先立って、東京都や千葉県の公立中学校で「お金の授業」というものをスタートさせている。その中で、お金に向き合ってもらうためにどんな授業を行なっているのか。

「まず、一万円札の絵を描いてもらいます。小さく描く子もいれば、紙いっぱいに描く子もいます。それで何がわかるのかと思われるかもしれませんが、ここから『お金の価値は変わるんだよ』という話をします。何十年も前に比べて物価が上がっていることはご存知だと思いますが、昔の一万円札の存在感は大きく描いた子の絵くらいありました。しかし、物価が上がっていくとそれがどんどん小さくなるということを理解してもらいます」

 消費者物価指数からみると、昭和40年の1万円の価値は、令和3年の4.2万円に相当するという。物価から見れば上昇だが、これをお金の側から見ると価値が4分の1以下になっているということになる。

◆なぜ金融教育が必要になったのか

 これまで触れられなかったお金の話が、高校教育にまで導入されるようになったのか。そこにはいくつかの時代背景があるが、主要なものについて濱田氏は次のように話す。

「私はいわゆる『団塊ジュニア世代』ですが、私の親世代くらいまでは『結婚をして子供を作って、家まで持って一人前』というような意識がありました。しかし今は、多様性の時代なので人生の目標は人によって様々になっています。そうなると、一律で人生にいくらかかるかという教育はできませんよね。なので、学生ひとりひとりがお金について自分で考える必要が出てきたということがあるでしょうね」

 多様性の広がりによって、個人の判断が求められる時代が教育にも反映されているようだ。また、そのほかにも昨今の国の金融政策からみても、早いうちからの教育が必要になってきているという。

「日本は今、ご存知の通り金利がすごく低いですよね。これは何となくそうなっているわけではなくて、国の政策で金利をあげていないんです。預金金利だけではなく、借り入れする際の金利も低いと言う事です。例えば、住宅ローンの金利も今はとても低いんですが、それによってこれまで住宅ローンが組めなかった年収の人でも住宅ローンが組みやすくなって家を買えるようになるなど、経済を回すという面では良い面でもあるんです。ただ、預貯金を中心にお金をやりくりしようとする人にとっては、金利が低いからお金が増えていかないですよね。

 その結果、投資をする人も増えてきています。そうしたこともあって、学生のうちから学ぶ必要があると考えられるようになったのではないでしょうか」

◆まずは生活設計、家計管理の話から

 学生にとっても、将来的にひとりひとりが考える必要が出てきたと言う事実はあるだろう。しかし、大人になって収入を得るようになってからの方が実感が湧いて身につくのではないのだろうか。

「お話したような時代背景もあって、金融庁が2014年に『金融リテラシーマップ』というものを作ってるんですよ。そこには『小学生、中学生、高校生、大学生、若年社会人、一般社会人、高齢者のそれぞれの世代で必要なお金のことについて理解しましょう』というような内容が示されています。同じく金融庁が作成した『高校生のための金融リテラシー講座』の内容を見ると、いきなり投資の話はしていなくて、生活設計や家計管理の基礎からお金について学んでいく構成となっていますね」

◆預貯金から投資の時代へ

 濱田氏が話すように、将来への備えとして現在も貯金をしている人は多いだろう。しかし、投資に一種の「博打」のようなイメージを持ち、コツコツ貯金がすることが堅実であるという考えにはリスクがあるという。そうしたことも踏まえ高校でも投資の教育が盛り込まれている。

「月々いくらと決めて貯金をすれば、確かに額面上は増えていきます。しかしここで、先ほどの物価の話を思い出してください。例えば毎月5万円貯金していたとしても、物価が上がると額面通り増えていませんよね。場合によっては貯金しているのに、物価の上昇によって相対的に減っているということにもなりかねません。つまり、一番リスクなのは投資をすることではなく、預貯金だけしかしていないことです」

◆元本割れに感じる誤解

 とはいえ、自分でコントロールできないどこかの会社の株式を買うなどの投資をすることにもリスクを感じる。預貯金だけをしていることがリスクであるが、投資のリスクよりはマシだと考えている人もいるだろう。しかし濱田氏は次のように話す。

「確かに、株式や投資信託などは元本を割れてしまう可能性があります。ただ、運用の方法や期間などの考え方によってですが、預貯金しかしないことと比べたら投資をすることの大きなリスクはほぼないと私は思います。投資にリスクがあると感じている方の多くは、ある誤解をしている場合が多いんです」

◆投資は実質リスクゼロ?

 運用の方法や期間などの考え方によっては、投資をすることの大きなリスクはほぼ無しと話す濱田氏。投資にリスクがあると思っている人の多くがしている誤解とは一体。例として株式投資についての考え方を聞いてみた。

「ある企業の株式を購入したとして値段が上がったところでそれを売れば『儲け』で、値段が下がったときに売ると『損』。これが投資だと思っていませんか?

 例えで考えてみましょう。もし、牧場を買って儲けを出そうと思ったら、『1億円で牧場を買って翌月に2億円で売ろう』なんて思わないはずです。『その牧場でどのくらい牛乳が採れて売れるか』を考えると思いますが、それが投資の考え方なんです。

 どういうことかと言うと、もし、赤字の年が何度かあっても10年後には1億円の純利益が出たとしますよね? 考え方を変えると、1億円の投資に対して年率10%で運用ができたとも言えます。

 つまり、『その会社の株式がいくらで売れるか』ではなく『その会社が将来どれだけ利益を出すか』を考えるのが投資なんですね」

◆現金がなくても大丈夫?

 これで投資についての誤解が解けた人も多いだろう。しかし、持っている株式の価値が上がっただけでは、ライフプランの中でお金が必要になったときに、現金がないということもあり得る。まして、持っている株式の価値が下がっているタイミングであれば売ることもできないが、そのリスクについても濱田氏に聞いた。

「株式には『配当』というものがあります。例えば、わかりやすくざっくりの説明ですけれど1口100万円で買った株式に年率10%の配当利回りがあったとしたら、年10万円の配当金があるということですね。ここが、預貯金との差なんですよ。

 今の時代100万円貯金していても、1年で10万円の利息がつくことなんてないですよね。

 ですが、国内の上場企業の中でも10%前後の配当利回りを出している企業もいくつかあります。

そう考えると株価や配当利回りに変動があるとは言え、最初に言ったように考え方によってですが、デメリットはほぼないと思います。株式の価格だけを見て判断してしまう方も多いんですが、長く持ち続ける前提で中身を見ることも大切ですね。

 具体的にリスクを減らす投資方法として、金融庁も推奨する『長期積立分散投資』があります。投資信託を使って投資する方法ですが、株式以外の債券など種類の違ういくつかの資産へ分散すれば(資産の分散)価格の上げ下げのリスクを減らせるし、日本以外の海外にも投資先を分散する(地域の分散)ことで、将来の世界経済の成長からの利益を期待できます。また、積立なので毎月1,000円など少額で始められますし、始めるタイミングを考える必要も無くて『高い時には少しだけ、安い時はたくさん買える』ことを理解して、コツコツと長く続けるだけなので手軽に始められますよ」

 投資について学ぶ機会のなかった世代には、預貯金だけをしている人も多いのではないだろうか。昨今の急激な物価上昇はまさに、相対的にその価値を下げているものだ。これからの社会をより安全に生き抜くためにも、投資は必要になってくる。同記事をきっかけに、それに気づく人が増えることを願う。<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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