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伊東歌詞太郎、『シン・三千世界』2ステージをレポ。楽曲と歌の深淵に踏み込む姿

DI:GA ONLINE

伊東歌詞太郎 ワンマンLIVE 2022「シン・三千世界」
2022年7月25日(月) Veats Shibuya

“〇〇に身を捧げる”とはよく言ったものであるが、伊東歌詞太郎という人物は間違いなく音楽に喜んで積極的に身を捧げている。それを確信するライブだった。
今年、キャリア初のベストアルバム『三千世界』をリリースした彼。それを受けて開催された全国15箇所を回るワンマンツアー(※3箇所が今年12月へ延期)は『三千世界』『Re:三千世界』と命名された。前者は16時より、バンド編成でライブならではの迫力とバラードの緩急で翻弄するような内容、後者は19時より、アレンジを変えテンポを落としアンプラグド風にしっとりと聴かせるパート、yoshi柴田(Gt.)との掛け合いトークも楽しい日替わりアコースティックパート、そしてバンドでパワフルに締めくくるパートの3部構成で、異なる編成の元、伊東歌詞太郎のヴォーカルを存分に味わうという主旨の内容。演奏曲に被りもなく、趣向の全く違う2つのツアーを同時進行するという、前代未聞の内容だった。

伊東歌詞太郎の誕生日の7月25日に2ステージ開催される、全国ツアーの追加公演が『シン・三千世界』だと受け止めていたら、“シン”と謳っているだけあり『三千世界』『Re:三千世界』とはセットリストも違い、内容も別。しかも1日限りのライブなのに1部と2部も別のセットリストになっており、お客さんをとことん楽しませようというサービス精神とともに、そこには常に新たなものに挑戦していく意志が感じられた。

まず1st Stageはツアー『三千世界』を凝縮したイメージでセットリストを構成。1曲目の「北極星」を伸びやかで力強い歌声で魅せると、「誰よりも先に言っちゃうもんね、お誕生日おめでとう!」と照れくさそうに笑う。自分の誕生日にライブをするのは恥ずかしいと話す彼が今回の開催を決めたのは、「一緒にお誕生日をお祝いしたいというファン心にもっと歩み寄ったほうがいい」という親しい人からの説得が影響しているという。
「自分の音楽には自信があるし、本気でやっているし、ずっと“本物の音楽”を続けていきたいし、それが実現できている自分の音楽が好きなんです。でも自分から音楽を取っ払ってしまうと、果たして何に価値があるんだろう……?と思ってしまうところがあって」と彼が心中を告白した後、彼の考える“本物の音楽”を体感することができた。

「帝国少女」、「小夜子」、「少女レイ」、このボカロP名曲のパートでは楽曲が憑依するような歌唱を響かせる。歌い切ると同時に膝から崩れ落ちたかと思うと、次の曲の歌い出しでは頬の筋肉を震わせて発声。楽曲の持つ切実な思いを全身で表現する。楽曲と自身の心情が彼の身体のなかで融合することで発信される瞬間も多々あった。楽曲と過剰なくらいに向き合う熱烈な姿、その並々ならぬ気魄には、畏怖に近いものを感じた。
「さよならだけが人生だ」では心の奥底にしまってある大切な気持ちを放出するような歌を届け、「Heeler」ではたくましさから生まれる優しい笑顔と強いまなざしを観客へと向ける。ライブでしか感じられない伊東歌詞太郎の世界があることを目の当たりにし、彼にとってライブは“表現”の場のひとつであることをあらためて噛み締める。
毎日さぼらず一生懸命音楽をやっていくと、想像していた以上の世界があることを知ったと話す彼は「普段の生活では味わえない世界を、ライブに来てくれた人に伝えることができる。それは僕がとてもやりたいことなんだなと、今回のツアーを通して思いました。自分も毎回“今日どんなふうに歌うんだろう?”とまったく読めないんです」「いい歌を歌うためなら、僕は鼻の穴が広がってようが、くそダセえ表情で歌っていてもいい」「ボーカリストとしてもっと(音楽の)奥に行かないといけない。説明できない、なんなのかわからない、マジカルな世界があると思う」と音楽への熱意を語る。

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「これから先も絶対、抜群の歌を届けるので。意味わかんない位、すげえ歌届けるんで!」と堂々と語ると、フロアからは拍手が湧いた。彼が音楽に対してここまで貪欲になれるのは、「歌えない」という環境に直面した経験があるからだろうか。最後まで命を燃やすように歌うその姿に、目をそらすことなどできるわけがなかった。
そんな彼の音楽家としての矜持が大きく反映された1st Stageとは全く違う世界が展開された2nd Stageはアップテンポのロックナンバー中心のセットリスト。
観客との一体感をより強く感じるとともに、よりハードな環境に自分を置いてさらなる高みを目指す、といった気概を感じる選曲とパフォーマンスだった。

「アストロ」で幕を開け、彼が拳を振り上げるとフロアからも拳が突き上がり、その景色に感情がリンクしたように彼の歌もシャウト混じりになるなど、3曲目に披露した「真夏のダイヤモンド」の歌詞どおり《精一杯フルスイング》の歌唱だ。クラップを促したり、バッターやピッチャーの仕草を取り入れたりしながら、音楽を通じて目の前いる観客と意思疎通を取っていく。
「神のまにまに」では解放感のある爽快な歌声で魅了し、軽快な「惑星ループ」では観客とともに指をくるくると回したかと思えば、「からくりピエロ」では一転、1部で多く見せたような狂気にも近い迫真の歌唱で観客を引き込んでいく。終盤では自身の背後にあったマイクスタンドをステージ前方に勢いよく打ち立て、歌い終わった後に「なんでこんなところにあるんだろうね、びっくりした!」と笑いながらいそいそと片付けていた。歌っている最中に意識が全くないとMCで話す、そんな彼の過剰なほどの純粋さが眩しい。

この後MCパートを1ヶ所削って、テンポの速い曲を8曲続けて本編を終えると語った彼は、「(ドラムの)田辺(貴広)をバテさせて、お前らもバテて帰れ~(笑)!!」と叫び、「革命トライアングル」を皮切りに「サイレントマイノリティー」「チルドレンレコード」などを畳みかける。「絆傷(キズナキズ)」ではステージのきわまで乗り出して身を焦がすように歌い、「magic music」では感情を吐き出すようなパフォーマンスで圧倒した。
「これから先も俺は素晴らしいライブをする! 最新の伊東歌詞太郎を観られるのが“ライブ”だろ!? どう考えたって一番いいだろ!」と声をからしながら叫んだあとなだれこんだ本編ラストは「僕だけのロックスター」。曲中でバックバンドのメンバー紹介兼ソロ回しを行うのだが、そのソロのお題が毎度、一筋縄ではいかないのが伊東歌詞太郎である。伊東からの「ツアーを回った思い出が、そのプレイには詰まっていると思う。〇〇公演をソロで表現してくれ!」という無茶ぶり系?のオーダーにメンバー4人が応え、そのソロについて伊東が自分なりの解釈で解説をするという定番の展開でメンバー紹介をしながらツアーを振り返る。エネルギッシュかつ和気あいあいとした空気のなか最後のサビを歌い切るとジャンプとガッツポーズで本編を締めくくった。
アンコールは1st Stageの1曲目に披露した「北極星」。そこではシン・三千世界の幕開けとして機能していた同曲が、この時には新しい伊東歌詞太郎の世界へとつながる扉を見せてくれるようだった。「絶対にこれからもいいライブをします。今日は月曜なのに来てくれて、誕生日祝ってくれてありがとう! でも僕の誕生日なんてどうでもいいんだ、あなたの誕生日が大事! 伊東歌詞太郎は今日だけじゃなくて365日、音楽を聴いてくれているあなたにいつも感謝をしているからね!」と告げてステージを去った。
この日の2ステージで体感した、音楽家としての高い目線と矜持、そして観客を最大限に思いやり共に楽しむ気持ちの二面性。音楽に対して無邪気かつ果敢に突き進む彼は、この先どんな感覚を得ることができるのだろうか。そしてどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。そんな未知なる物語に思いを馳せたくなる、プレミアムなライブだった。

SET LIST

■1部
01.北極星
02.キリトリセン
03.ミルクとコーヒー
04.帝国少女
05.小夜子
06.少女レイ
07.約束のスターリーナイト
08.さよならだけが人生だ
09.Heeler
10.Fairytale,
11.ピエロ
12.I Can Stop Fall in Love
13.magic music
14.パラボラ~ガリレオの夢~
EN 帰ろうよ、マイホームタウン~追想~

■2部
01.アストロ
02.ムーンウォーカー
03.真夏のダイヤモンド
04.神のまにまに
05.惑星ループ
06.からくりピエロ
07.革命トライアングル
08.WORLD’S END
09.サイレントマイノリティー
10.チルドレンレコード
11.絆傷(キズナキズ)
12.スプリングルズ・サワークリーム
13.magic music
14.僕だけのロックスター

ENCORE
01. 北極星

 
   

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