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「鎌倉殿の13人」前半戦を彩った、頼朝、義経、上総広常ら“生き様”が魅力的な英傑たち

MOVIE WALKER PRESS

鎌倉幕府を開いた源頼朝(大泉洋)がその生涯を閉じ、息子の頼家(金子大地)へと“鎌倉殿”が引き継がれたことで、新たな章がスタートしたと言えるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。「新選組!」「真田丸」に続いて三谷幸喜が3度目の大河ドラマの脚本を手掛ける本作は、歴史書「吾妻鏡」をベースに、源平合戦や鎌倉幕府で繰り広げられる権力闘争を北条得宗家の祖となった北条義時(小栗旬)の視点で描いていく。

本作の見どころとして、魅力的な登場人物が次々と登場しては歴史の彼方へ消えていく展開や演出の妙、俳優たちの真に迫る演技などが挙げられる。そこで今回、より多くの視聴者の心に残ったと思われる登場人物をピックアップし、彼らの“生き様”を振り返ってみたい。

■豪放ながらお茶目なところも魅力的だった上総広常

物語の前半戦で欠かせない登場人物といえば、佐藤浩市演じる上総広常だろう。上総国の豪族である広常は2万騎におよぶ兵力を持ち、平家打倒を目指す頼朝陣営にとっても必ず仲間に加えなければならない男。そういった経緯もあり、頼朝の挙兵にもあえて遅参するなど登場時は食えない男で、一筋縄ではいかない豪放さが印象的だった。この男を従えるには相当な苦労があるだろう…。そう思われたが、広常はしだいに頼朝の人柄に惹かれ、周りにはどう見えていようと、心のなかで強い忠誠を誓っていた。その距離感はほかの御家人よりも近い。広常にとって頼朝は、同志であり、自分たちを引っ張っていってくれる頼もしい棟梁であったのだろう。

なにかと頼朝に振り回される義時の相談相手にもなっていて、不器用さとお茶目さが垣間見えた広常。亀の前事件で、頼朝の愛妾、亀(江口のりこ)を預けられた時は、「ああいう女は好かねえ」と弱り顔を見せ、いつか、頼朝と京に上ることがあれば、文字の読み書きができないと恥をかく、と懸命に手習いをしていた。頼朝に対して、心から信頼していたのがわかり、その様子に心打たれた人も多いのではないか。そんな人間味あふれる広常だからこそ、頼朝に反感を抱く御家人たちへの見せしめとして、謀反の首謀者という名目で粛清されてしまう最期は、義時はもちろん、視聴者にも大きな衝撃を与えたに違いない。

■源氏の争いに翻弄された悲劇のプリンス、源義高

信濃源氏の棟梁、木曾義仲(青木崇高)の息子である源義高(市川染五郎)の短い生涯も忘れられない。頼朝とは別に兵を挙げた義仲に対立する意志がないことを証明するため、人質として鎌倉に連れてこられた義高。表向きは頼朝の娘、大姫(落井実結子→南沙良)の婚約者ということで、若い2人の仲睦まじい様子は、苛烈さを増す物語のなかでちょっとしたオアシスのようになっていた。

そして、市川染五郎演じる義高がまた美しい。政子(小池栄子)や実衣(宮澤エマ)が彼のことを「良いお顔立ち」と言って褒めたが、あの言われ慣れている様子!そつのない振る舞い、それでいて蝉の抜け殻集めが好き、という少年らしいところがあったのもいい。が、大姫と義高の穏やかな日々は続かない。後白河法皇(西田敏行)の命によって義仲討伐が決まり、源義経(菅田将暉)が出陣していく。

鎌倉を発つ義経と義仲が最後に言葉を交わした場面は、本作の名シーンの一つだろう。自分が出陣するからには義仲に待っているのは死だと信じて疑わない義経。父が負けるはずがない、と義経に哀れみを抱いていた義高。静かで穏やかな義高の、実は激しい心の内が描かれていたからこそ、そのあとに彼に待ち受ける悲劇がより際立ったのかもしれない。

■戦の世でしか生きられない…純粋すぎる軍神、源義経

「こんな義経を見たことがない!」と話題になっていたのが菅田将暉演じる源義経である。戦の天才だが、それ以外のことに関しては不器用。裏で悪いことをしようとしても詰めが甘くて露呈するタイプだ。戦場では水を得た魚のようにイキイキとしていたが、平家との戦いに終わりが見えてくるとその表情に陰りが見えてくる。戦がない世で、自分はどのように生きたらいいのか。そしてなにより、兄である頼朝のために戦っていたのに彼に会えない。それどころか、頼朝は自分を殺そうとしているのだ。

頼朝と決別し、縁のある奥州藤原氏のもとで身を隠す義経。しかし、鎌倉からの圧力に屈した藤原勢による襲撃を受け、追い詰められてしまう。それでも、孤軍奮闘して敵兵をくい止める武蔵坊弁慶(佳久創)の雄姿に興奮し、最期を見届けに来た義時に鎌倉攻略の策を嬉々として語るなど、飄々とした様子で最後まで視聴者を楽しませてくれた。無垢で、人を信じやすかった戦の鬼。字面を見るだけで、いいように利用されやすいのでは、と想像できてしまう。もし義経に信頼できるブレーンがいたら、歴史は変わっていたかもしれない。

■我が子を失う悲しみを抱えながらも、慈しみを与え続けた八重

義時の最初の妻であり、物語開始時点から彼が一途に想いを寄せてきたのが、新垣結衣演じる八重だ。流人だった頼朝を預かった伊東祐親(浅野和之)の娘で、第1話「大いなる小競り合い」から頼朝との子である千鶴丸(太田恵晴)を祐親の命によって殺されてしまうなど、八重は決して幸せとは言えない人生を歩んでいく。

そんな八重を救ったのは義時の頑なな想いだったはず。伊豆で暮らす八重のもとへ、「女子はきのこが好き」という思い込みから大量のきのこを持っていったり、魚を持っていったり。気がついたら義時が見ている…などというストーカーの一歩手前のような行動で引かせることもあるが、そんななかで少しずつ、八重の心はほどけていく。

やがて夫婦になった義時と八重のシーンはどれも心温まるものばかりだった。頼朝に振り回され、傷ついた心を八重が励まし、支えた。八重はとても献身的な妻だった。そして、かつて我が子を殺された自身の心を救済するかのように、戦で孤児になった子どもたちの面倒を見るようになる。晩年の八重は愛を与え続ける女性だった。

■天と人に愛された一方で、残酷な決断も下してきた源頼朝

大泉洋演じる源頼朝は初登場時から、人たらしのイメージがあった。どことなく、キュートで憎めない。迷いながらも北条ら坂東武者をまとめる政治的手腕には、「この人についていきたい」と思わせるものがあった。一方で、実際には女たらしというか、女グセの悪さで周囲に混乱を巻き起こすことも。気に入った女性がいればすぐに手を出し、妻である政子を怒らせてばかり。それでも、政子から頼朝の愛が色褪せたようには思えなかった。最期まで、政子は頼朝を愛していた。

しかし、平家を滅ぼし、武士の頂点に立ったあとも、他人を信じられない頼朝の猜疑心は深まるばかり。出る杭を打つ、ではないが、自身を脅かす存在は、たとえ身内であっても次から次へと抹殺していった。そんな頼朝も最後は己の死期を悟ったのか、後継の頼家を支えてほしいと、義時と政子に伝え、そのあとすぐに意識を失い、危篤状態になってしまう。政子らによる献身的な看病にもかかわらず、静かにこと切れた頼朝。彼の死はあまりにも大きく、御家人らによる激しい権力争いを巻き起こすことになってしまう。

登場人物を最大限に魅力的に描いた脚本というのはもちろんだが、それを演じる俳優たちのキャスティングがすばらしい。広常は佐藤にしか演じられなかっただろうし、あれだけひどいことをしても大泉演じる頼朝は憎みきれない。放送直後にはよく「#全部大泉のせい」というタグがTwitterトレンドを賑わせていたが、それだけ視聴者の心に強く残る頼朝像だったのだろう。

後半戦に入った「鎌倉殿の13人」はますますヒートアップ。より強い権力を握ろうと義時の父、北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)の対立は激化し、年若い頼家を支えるために「十三人の合議制」が構成されるが、当の頼家はこれに反発する。そのなかで、頼朝に忠義を尽くしてきた梶原景時(中村獅童)が頼家によって罷免され、物語から退場することに…。今後、いかにして義時は鎌倉幕府における北条の権勢を固めていくのか?相変わらずのハイテンポな展開からはますます目が離せない!

文/ふくだりょうこ
 
   

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