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【RTA特集】『ゼルダの伝説 BotW』100%クリアRTA、16時間切りの領域へ突入。「アイテム999個増殖バグ」がもたらした革命とは

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【RTA特集】『ゼルダの伝説 BotW』100%クリアRTA、16時間切りの領域へ突入。「アイテム999個増殖バグ」がもたらした革命とは

2017年に発売され、日本ゲーム大賞やGame of The Yearを受賞した『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(以下『ゼルダBotW』)。丁寧に作り込まれたオープンワールドに豊富なやり込み要素が散りばめられた本作は、海外のゲームクリア時間まとめサイト「HowLongToBeat」によれば、その完全クリアに189時間かかるとされています。

では、日夜ゲームを早くクリアするための研究を重ねているRTA走者にとって、この大作を完全クリアするのにかかる時間はどれくらいでしょうか?

答えは、通常プレイの10分の1以下である「約16時間」です。本記事では、2022年7月21日に破られたばかりの「16時間の壁」に対して、本作のRTAコミュニティが如何にしてアプローチしてきたのかを紹介していきます。

アクションゲーム界屈指の超長距離走、100%RTAとは
はじめに、『ゼルダBotW』の100%RTAの基本的なルールをご紹介しましょう。100%の定義は、speedrun.com上にリストアップされている全ての要素をコンプリートすることです。

(画像は The Legend of Zelda: Breath of the Wild – speedrun.com より)

これらの条件の中には、マップ踏破率100%や全クエストクリアといった基本的な収集要素はもちろん、非売品の装備の最大強化なども含まれています。

100%カテゴリーは、アクションゲームのRTAとしては超長時間のカテゴリーということで『ゼルダBotW』のスピードランコミュニティでは、健康上の理由から休憩時間に関するルールを定めています。具体的には、プレイヤーはRTAの最中に合計18時間、最大3回までタイマーを停止して休憩することができます。

また、本カテゴリーでは、アイテム取り忘れなどのアクシデントから最短でリカバリーしたり、天候や風向きといったランダム要素に上手く対応したりするための臨機応変さも求められます。ゲームの総合的な知識やRTA技に対する深い理解を問われる点で、100%カテゴリーは、本作のRTAの集大成として位置づけられています。

現行のルートは、日本人走者のひとりであるikurapan氏によってドキュメントが公開されています(自分用安定チャート2022/06)。このドキュメントが1700行を超えていることからも、このカテゴリーの壮大なボリュームと、1本のゲームを最後まで走りきることの大変さが伺えます。

100%RTAルート開拓と変遷の歴史
ここからは、100%RTAのルート開拓の歴史を、メイン移動手段の変遷とともに紹介します。

本作発売直後の100%RTAは、通常プレイと同じように、馬に乗って真面目にフィールドを駆けており、この頃の世界記録は40時間前後でした。バグの利用が制限された「Bug Limit Categories – 100%」では、今なお馬による移動が現役で使われていますが、このカテゴリの世界記録は26時間台にまで縮められています。

また、当時は休憩ルールも設けられていなかったため、100%RTAは時間と体力のあるごく一部のプレイヤーだけが挑戦できる、非常にハードルの高いカテゴリーでした。

しばらくして、「ロケットローンチ」や「ステイシスローンチ」といった長距離飛行技が出現し、馬の代わりとなる移動手段として使われるようになりました。これらの技は、「ビタロック」で物を飛ばし、それを使ってリンクを吹っ飛ばす技術を応用したものです。これらの移動手段の出現やルートの改良により、世界記録は23時間半程度まで縮められました。

2019年9月、「ウィンドボム」と呼ばれる革新的な移動手段が登場します。発見者は、日本のグリッチハンターであるさとう菓子氏です。空中で弓を構えることで発生するスローモーション(バレットタイム)中にバクダンをリンクに当てることによって吹っ飛ぶこの技は、バレットタイムを起こせるだけの段差があればどこでも発動することができます。そのためウィンドボムは、100%カテゴリーの中でなんと1400回以上も使われるという汎用的な技として、現役で活躍しています。

実際、上位の記録を出すためには、このウィンドボムの仕込みの速さと、飛ぶ方向を決定する精度が大きなカギを握っており、本RTAの「基礎動作」ともいえる重要なテクニックとなっています。

また、ウィンドボムを軸に、Johnnyboomr氏が「Granatus」と呼ばれるルートを確立しました。Granatusはその後も改良を重ねて、今でも使われ続けています。このウィンドボム時代に樹立された最速の記録は、17時間35分でした。

ちなみに、本作においてRTAのルートを組む際には、有志が開発した便利ツール「BotW Object Map」がよく用いられます。以下の図を見ると、一部のエリアが移動の拠点となっており、ハブのような役割を果たしていることが見て取れます。

2021年9月には、17時間の壁を破ることになる新技が発見されました。BLSS (Bow Lift Smaggling Slide) と呼ばれるこの技は、ぴりかんてん氏が発見したBLSという現象をもとに、LegendofLinkk氏がスライドを加えて発見したものです。BLSSには、がんばりゲージを消費することなく、最高360km/hという超高速度でスライド移動できるという特長があります。従来はBTB (Bullet-Time Bounce) という別の技が知られており、この技も速度自体は360km/hを出すことができました。

しかし、BTBは難しいうえに飛行距離が短いので何度も決める必要があり、上位のRTAプレイヤーでさえ安定する技ではありませんでした。安定した超長距離のBTBを決めることはかなり難しく、上位のRTAプレイヤーでさえ安定する技ではありませんでした。安定した高速移動を可能にするBLSSの発見は、100%のみならず全カテゴリーに大きな影響を与えるものでした。

BLSS発見後、100%の世界記録は16時間36分まで更新されましたが、15時間台はまだまだ遠いものと考えられていました。2022年5月にはJohnnyboomr氏がルートを数分短縮する最適化を加え、上位プレイヤー達はその新しいルートを練習していました。100%RTAを根本から変える大発見が起こったのは、その翌月でした。

「アイテム999個増殖バグ」がもたらした革命

2022年6月、革命が起こりました。zxrobin氏によって発見されたIST (Inventory Slot Transfer) と呼ばれる新しいグリッチは、壊れたアイテムスロットを利用することで、所持している任意のアイテムを倍々に増やせるというものです。

発見当初は倍々にしかアイテムを増やせなかったISTですが、一週間後には中国コミュニティ内で進化を遂げ、一度に999個増殖できるようになりました。原理を一言で説明すると、アイテムに対して武器の耐久値(小数第2位まで存在)を移植することで、整数化するために100倍された耐久値の数字がアイテムの個数に置き換わって一気に増える、というものです。999個増殖に関しては、Direct Inventory Corruptionと呼ばれ、元のISTと区別されることもあります。

アイテム増殖に関するグリッチはいきなり誕生したわけではなく、初期の頃から古代素材999個増殖技が知られており、通常プレイでも金策手段として一部のプレイヤーに活用されていました。

また2022年2月には、「アイテム変換」とよばれる技術が既存のグリッチの組み合わせによって発見され、古代素材以外のアイテムも増殖できるようになっていました。しかし、仕込みに手間がかかることなどから、RTAにおける用途は限定的でした。

ISTの効果は絶大で、それまで使われてきた悪魔像におけるハート&がんばりの器増殖や古代素材増殖、アイテム変換増殖といった多くの技術を過去のものにしました(アイテム変換増殖については、龍素材稼ぎの際にのみ現役で使われています)。料理素材として必要だったフロドラ狩りの回数も、25回以上必要だったのが3回で済むようになりました。また、入手数が限られている爆弾矢や古代兵装・矢を節約する必要がなくなり、メインの武器であった「近衛の両手剣」も使われなくなりました。

「妖精」を増殖できるようになったことで、回復料理を作って使用する手間や、ゲームオーバーの危険性が無くなった点も見逃せません。ゼルダシリーズにおける「妖精」は、力尽きたときに体力を回復してくれるお助けアイテムであり、本作ではバランス調整のためか、3個以上所持している状態ではほぼ新規出現しなくなるアイテムです。妖精の無限増殖は、初心者ランナーが100%RTAに挑戦するハードルを大きく下げた画期的な技といえるでしょう。

ISTの発見で大いに盛り上がった100%RTAコミュニティでは、ルートの練り直しが24時間体制で行われました。ISTによるアイテム増殖をシミュレートする「Inventory Slot Transfer Simulator」も開発され、走者たちのルート検証を大いに助けました。

そして7月21日、Coensi氏によって15時間52分58秒という記録が達成され、16時間の壁がついに破られることとなったのです。ISTの発見による合計のタイム短縮幅は45分程度と推測されており、次なる15時間切りという大台はまだまだ遠いことが予想されています。

新たなグリッチの発掘、走者のプレイングスキルの向上、ルートの最適化という3つの要素が一体となってタイムを縮めてきた『ゼルダBotW』のRTA。今後どのように進化を続けていくのか、ますます目が離せません。





最後になりますが、本記事の執筆にあたり、日本国内の100%RTA走者であるあの氏には、取材を通じて多くの詳細な情報を提供いただきました。この場で感謝申し上げます。もしこの記事を読んで、100%RTAについて疑問や興味を持った方がいれば、あの氏のTwitterやTwitch配信で答えていただけるとのことなので、お気軽に質問してみて下さい。

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