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映画エクソシストのモデルとなった人物に実際何が起きたのか?

カラパイア


 1973年に公開された映画『エクソシスト』の原作・脚本はウィリアム・ピーター・ブラッティ氏が手掛けたものだが、実は、悪魔に憑りつかれた子どもののモデルとなる人物が実在した。

 14歳当時、悪魔祓いを受けたというその男性は、生きている間は正体不明とされていたが、86歳の誕生日を目前に亡くなったことで、誰なのかが明らかとなった。

 それは、ロナルド・エドウィン・ハンケラー氏でNASAのエンジニアとして働いていた。スペースシャトルのパネルに耐熱性をもたせる特殊技術の特許をもち、1969年にアメリカの宇宙飛行士を月へ送り出したアポロ計画に貢献した。

エクソシストのモデルとなった少年

 ロナルド・エドウィン・ハンケラーは、1949年、メリーランド州コテージシティとミズーリ州セントルイスで、10代の若さで悪魔祓いを受けたが、それ以来ずっと彼の身元は秘密にされてきた。

 何十年もの間、ハンケラーのことは、”ローランド・ドゥー”あるいは”ロビー・マンハイム”としてしか知られていなかった。

 彼の身元は、悪魔祓いに関わった神父たちと近しいイエズス会や、1970年代に始まった悪魔憑き現象の研究に携わった一握りの学者や記者の間では、公然の秘密だったが、本人はたくさんの人々に真実を知られるのを怖れながら、ひっそり生きていた。

 ハンケラーの29年来の友人によると、彼はNASAの同僚に、自分が『エクソシスト』のモデルだったことがばれないか、いつもビクビクしていたらしい。彼は40年近くNASAに勤めた後、2001年に退職した。

「ハロウィンには、彼はいつも出かけて留守にしていました。誰かが彼の住まいを突き止めてやって来て、そっとしておいてくれないと考えたからです」知人の女性は証言した。「常にひどく不安にさいなまれた、悲惨な生活をしていました」

 だが数年前、The Skeptical Inquirer誌の記事で、ハンケラーのことが明らかになった。

 この雑誌は、ニューヨーク州北部を拠点とする隔月刊行誌で、超常現象など異常な出来事を科学的に厳密に説明することを目的としている。

 調査員のJD・ソードが、ハンケラーの身元を確認したという記事を書いたのだ。

少年はなぜ、悪魔に憑りつかれたのか?

 『エクソシスト』は、映画の脚本も原案となった1971年の小説も、作者のウィリアム・ピーター・ブラッティが書いたものだ。

 彼は、ジョージタウン大学4年だった1949年頃、悪魔に憑りつかれた14歳の少年の話を初めて聞いた。

 そのときの教授のひとりで、イエズス会の司祭だったユージン・ギャラガーが、ニューヨーク出身のブラッティに、悪魔に憑依されて苦しんでいた少年が、一連の悪魔祓いによって救われたという驚くべき話を聞かせたのだ。

 1935年生まれのハンケラーは、メリーランド州コテージシティの中流家庭で育った。

 14歳のとき、自分の寝室の壁を叩いたりひっかいたりする音が聞こえ、部屋中を物が飛び交ったり、ベッドがひとりでに動いたりする超常現象が始まった。

 ソードは、これらを”古典的なポルターガイスト現象”だと呼んでいる。

 ハンケラーの母親は、一連の奇妙な出来事は、息子にウィジャボードを使って霊と交信する方法を教えたおばの死と関係があるのではないかと考えた。

photo by Unsplash

 1949年3月、一家の神父であるルーサー・シュルツが、デューク大学の超心理学研究所に手紙を送り、ハンケラーになにが起こっているのか、詳細を知らせた。

「座っている椅子が勝手に動き出して、彼を振り落とした。彼が寝ていると必ずベッドが揺れた」

 さらに、ひとりでにテーブルがひっくり返ったり、重い家具が勝手に滑って、床が傷ついたとか、壁にかかっていたキリストの絵が、ハンケラーが近くにいると揺れる、などの現象もあったという。

 ハンケラーの母親は、最近亡くなった叔母のティリーとなにか関係があるのではないかと恐れた。

 叔母のティリーは降霊術師で、ハンケラーにウィジャボードを使って霊と交信する方法を教えたという。

 調べると、ハンケラーの父方のおばに、マチルダ・ヘンドリックスという女性がいたことがわかった。ティリーはマチルダの愛称だ。

 ハンケラーは、医療検査や心理テストを受けたが、なにも異常は見つからなかった。家族は宗教家を探し、プロテスタントの牧師に相談した。

photo by iStock

家族はルター派の信者で、映画の中で再現しているような段階を踏んで、なんとかしようとしました。

彼らは何人もの医者に診てもらい、病院に通い、ついにはルター派教会で牧師に泣きつきました。

その牧師から悪魔祓いができる聖職者に会うよう勧められたのです
 2012年に、映画監督のウィリアム・フリードキンは語っている。

20回以上の悪魔祓いが行われる

 ウィリアム・ボウダーンはイエズス会の神父で、3ヶ月以上にわたって20回以上の悪魔祓いを行って、ハンケラーを救った。

 ボウダーンは、悪魔祓いの手引きにするつもりだった『イエズス会神父によるケーススタディ』の中で、ワシントンDC郊外に住む「R」とだけしか明かせない少年の悪魔憑きについて述べている。

 ボウダーンは1949年3月10日の日記に書いている。
14人の目撃者が見守る中、ハンケラーはトランス状態に陥り、彼の寝ているマットレスが動き、軍隊が行進するようなリズムで、なにかを引っ掻く音がし始めた。

誰も触れていないのに、留めてあった安全ピンがはずれて、聖マルグリート・マリーの聖遺物が床に投げ出された。「R」は恐怖におののいて立ち上がった


ハンケラーのもとを訪ねた神父のウィリアム・ボウダーン

 ハンケラーは、偶然にもおばのティリーが住んでいたセントルイスへ行って、治療を受けることになった。

 「どんな力なのか、これらの言葉はすべてセントルイス行きを示していた」ボウダーンは書いている。
ある夜、”ルイス”という言葉が真っ赤なひっかき傷の形で少年の肋骨に現れた。次にいつ出発するかということについては、”土曜日”という言葉が少年の尻に現れた。

滞在期間は、少年の胸に3週間半と出た。母親が厳重に監視していて、少年も手を動かしたりしていないのに、ひとりでに文字が現れたのだ
 1949年3月21日、ハンケラーはセントルイスにあるアレクシアン・ブラザーズ病院に入院したが、ここで激しいひきつけを起こして、抑えようとした神父の鼻を折った。

1949年3月21日ににハンケラーが入院した、セントルイスのアレクシアン・ブラザーズ病院

 4月半ばに、大天使ミカエルが炎の剣を持っている幻視を見てから、悪魔から解放されたとハンケラーは主張した。

「最近の宗教史において、これはおそらくもっとも注目すべき体験のひとつだったろう。悪魔に憑りつかれた14歳の少年が、カトリック神父によって解放されたのだから」1949年8月のワシントンポスト紙に、ビル・ブランクリーはこうした記事を書いている。

 イエズス会の神父が悪魔に少年の体から出て行くよう命じたとき、少年が「叫び、罵り、ラテン語のフレーズを口にして、激しいかんしゃくを起した」と記録されていた。

 これを、ジョージタウン大の学生だったブラッティが読んだのだ。

生存中は身元を明かさずに暮らしていた

 ハンケラーが『エクソシスト』の実際のモデルだったことを知っている者は他にもいたが、彼の存命中は身元が明かされることはなかった。

 2021年、ハンケラーはボルチモア北西にあるマリオッツヴィルの自宅で、脳卒中によって、86歳の誕生日を迎える一ヶ月前に亡くなり、荼毘にふされた。

 ブラッティの『エクソシスト』は、アメリカだけで1300万部以上売れ、映画は1974年にアカデミー賞、ゴールデングローブ賞を受賞した。アカデミー作品賞でオスカーにノミネートされた初のホラー映画となった。

 ユニバーサルスタジオは、2023年から、エレン・バースティンが悪魔に憑りつかれた少年の母親役を再び演じる、リメイク三部作を計画していると発表した。

 だが、映画のモデルとなったハンケラーの晩年は寂しいものだった。娘ふたり、息子ひとりの3人の子どもがいたが、長く疎遠になっていて、父親の葬儀には出席しなかったという。

迷信深い母親を騙すための少年のでっち上げだった可能性も●

 エクソシストの裏話に関する著作のある、作家のマーク・オプサスニックは、ハンケラーの周辺で起こった超常現象にいち早く疑問をもち、彼のことを”注目を浴びたいだけの甘やかされた子ども”だっただけだろうと結論づけた。

 2018年には、やはり作家のセルジオ・ルエダが、ハンケラー一家の友人から、家庭内の力関係の話を聞いている。父親はハンケラーを甘やかし、母親は厳格だったという。

 さらに、母親は迷信にとらわれるタイプで、神父は最初、ハンケラーがその思い込みを操って、学校へ行かなくて済む策略を練っていたのではないかと疑ったことを認めたという。

 ハンケラーの友人によれば、彼自身は自分が悪魔憑きの犠牲者だとはまったく思っていなかったし、宗教を避けていたという。

「本人は自分は憑りつかれてなどいない、すべてはでっちあげなのだと言っていました。自分は悪い子だったと」

 だが、まだ説明できていないことがひとつある。

 ハンケラーが亡くなる直前、誰も呼んだ覚えがないのに、ひとりのカトリックの神父がふらりとハンケラーの家を訪れ、最後の儀式を行ったという。

「どうして、神父さまがやってきたのか、まったくわかりません。でもおかげでロン(ハンケラー)は天国へ行けたのです。彼は今、天国で神と一緒にいるに違いありません」

References:Is ‘The Exorcist’ a true story? What happened to Ronald Hunkeler / written by konohazuku / edited by / parumo

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