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ホリプロのダメダメプロデューサーがダメ小説家【西村賢太】を語る

ホンシェルジュ

華やかな芸能界には、必ず「裏方」と呼ばれる人々の試行錯誤の跡がある。ホンシェルジュではその「裏方」=「仕掛け人」が、どんなインスピレーションからヒットを生み出しているのかを探っていく特集を立ち上げました。

初回、筆を執るのはドラマや映画などの制作に長年携わってきた藤原 努。未完の長編『雨滴は続く』を遺し、54歳で世を去った西村賢太という人物を偲んで綴ります。
特集「仕掛け人」コラム

西村賢太という“社会的弱者”の未完結物語

はじめまして。僕は1987年に大学を卒業して(株)ホリプロという会社に入り、来年(2023年)定年になる予定の藤原と申します。

わかりやすく言うとバブル世代のなれのはてです。

かつては、タレントのマネージャ―をやっていた時期もありますが、1997年1月以降現在にいたるまで、テレビ番組を中心とした映像制作にずっと携わっています。

小説、ノンフィクションなど割とジャンルを問わず読むほうなのですが、本の中にも「なんだか上手く生きられない」みたいな人物を探し求めてしまいます。

自分で言うのもなんですが、僕の人生は公私ともに失敗続きでありまして、それでもこの会社で定年までいられそうなのはもはや奇跡なのか、あるいは会社自体が鷹揚(ゆったりとしている様子)であるせいなのか……。

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そんな僕でありますので、これまで会社でいわゆる管理職というものについたことがなく、世間的に言う“出世”というようなものとは無縁なのです。すごくカッコをつけて言うと僕の仕事は“クリエイティブ”であったりもして、それはそれで楽しくもあるのですが。

しかしどちらかと言うと“社会的弱者”(これ、いろいろ総合的な意味ですが)ではないかという自覚が結構あるので、個人的志向としては、ついこれも“弱者の物語”に惹かれがちなのです。

2006年に『どうで死ぬ身の一踊り』という私小説でデビューした西村賢太という作家もそういう一人でした。

著者西村 賢太 出版日

作家として名を成したいのに、ある意味自分の才能を過信して周囲と上手くつき合うことができず、好きで一緒に住むようになった女性にも肉体的精神的なDVに及んでその一方ですぐ別の女性に気を向けるし、人からお金を借りる時だけちょっと小賢しくなったりもする……

つまりはもし近くにいたら、大半の人はおつき合いを避けようと考えるであろう主人公です。まあ西村氏自身が私小説以外自分は書けないと言っているので、この主人公(作中では北町貫多)はすなわちほぼ西村賢太自身なわけですが。

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