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「なぜパソコン教室で働いていたの?」旧知の男が持っていた脅威の能力とは…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は、そのこ+W氏の書籍『マグリットの馬』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

パソコン・オタク

麻衣はその日の昼食時に近くのファストフード店で見覚えのある若い男とばったり顔を合わせた。背が高くて太った、周りから浮いた外見、飛び出た額にギョロついた眼球、その場の雰囲気にそぐわない動作や素振り、彼女が通っていたパソコン教室の助手だった男だ。

彼女がパソコン教室に通う気になったのはパソコンからしばらく離れている内にすっかりテクノロジーの世界が様変わりしたからだった。若い頃の経験は彼女が別の商売に携わる間にすっかり錆びついて役に立たなくなっていた。

彼女が声を掛けると彼は振り向いた。初めは誰だか分からなかった様だったがやっと思い出したらしい。彼はあたりをキョロキョロ見回して落ち着かない様子だったが麻衣は彼を引っ張って店の端っこの目立たない席に陣取った。

彼は“スーパージャンボ・バーガー”にかぶりついた。飲み物をストローで音を立てて飲んで相手が一息ついたところで麻衣は彼にどうしてあの教室を辞めたのかと問いかけた。

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彼はあそこの空気が自分に合わなかったと言った。

麻衣は「後で来た助手は気が利かず、ソフトの事が何も分かっていなくて良くない。でも愛想はいいので生徒には受けがいい。あなたの方が良かったのに」と言った。

彼は奇妙な表情を浮かべ、そんなことを言われたのは生まれて初めてだと言った。子供じみた笑いを浮かべたが泣いている様にも見えた。彼女は理由もなくこの若者が気の毒になった。彼女は名前を名乗ってもっとパソコンの事を教えて欲しかったのにと言った。そこで初めて相手の名前が河野輝之だと知った。

彼女が輝之を覚えていたのは彼が驚くほど数字に強く、しかも記憶力も抜群だったからだ。彼は教室を回って生徒がうまく機械を操作出来ない時に手助けをしていたが、彼らのパスワードやIDなどを一目見るだけで覚えられるらしかった。当の本人が忘れていても、だ。

一方で愛想が良くないので生徒間では人気はなかった。しかし本人にそれを気にする様子は全くなかった。彼はどこか異世界から来た様な印象の若者だった。麻衣があなたの記憶力は素晴らしい、何かこつでもあるのかと聞くと自分の見た事を凡て数字化することが出来るからだと言った。

「それってどういう事?」

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