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「『ゆるキャン△』の世界はずっと続く」京極義昭監督が語る、映画化の覚悟と溢れる原作愛

MOVIE WALKER PRESS

女子高生たちがキャンプをしたり、日常生活を送ったりする様子をゆるやかに描く漫画「ゆるキャン△」。2018年にテレビアニメ第1作目が放映され、その後もスピンオフ作品「へやキャン△」や「ゆるキャン△ SEASON2」、さらに福原遥主演で実写ドラマが放送されるなど、様々なメディア展開で人気を集めてきた。その待望のシリーズ最新作『映画 ゆるキャン△』が公開中だ。

MOVIE WALKER PRESSでは、本作のメガホンをとった京極義昭監督にインタビューを敢行。映画初監督となった本作の制作経緯についてや、大人になったキャラクターの描写や関係性を想像する過程を尋ねていくなかで、京極監督自身が”「大好き」”だと語る原作への熱い想いや、「ゆるキャン△」に感じている”楽しみ方の自由さ” まで浮かび上がってきた。

■「1本の独立した作品を作りたい」

テレビシリーズのスタッフが再集結した本作では、原作者あfろ監修による完全オリジナルストーリーが展開する。高校卒業後、それぞれの道を歩んだ各務原なでしこ、志摩リン、大垣千明、犬山あおい、斉藤恵那ら5人。山梨の観光推進機構に勤め、数年前に閉鎖された施設の再開発計画を担当していた千明が、名古屋の小さな出版社に就職したリンの何気ない一言から、高校時代の友人たちを集め、キャンプ場開発に動き出すところから物語は幕を開ける。

映画化の話はテレビアニメ第1作目の放送が終わった頃に出ていたと、京極監督は振り返る。「単純に続編を作るのではなく、ショートアニメ、SEASON2、そして映画と3本一気に企画を立てるという話で、『そうきたか』と驚きました。チャレンジングだと思うと同時に、すごくおもしろいと感じて。テレビアニメから映画にメディアを変えることで、また違う層に『ゆるキャン△』が届くかもしれないと思うと、やってみたいという気持ちになりました」と映画化の経緯を明かした。

映画化で意識していたのはテレビシリーズの延長でもなく、拡大版でもないことだという。「1本の独立した作品を作りたいというのがスタッフみんなの共通認識でした。僕が原作を最初に読んで感じたのは『ゆるキャン△』の“ポテンシャル”です。ただキャラが可愛いだけではない、幅広い層に届く普遍的な魅力がある作品だと感じました。既存の熱心なファンの方によろこんでいただくのはもちろん、映画をきっかけにテレビシリーズを観てみよう、原作を読んでみようと思ってもらえることが一番うれしいこと。1本の映画作品として観ていただける話にしたいという想いがありました。単純にテレビシリーズの続きではないよ、という気持ちで作ったつもりですが、実際にうまくできていたかどうかは、観たお客さんに判断していただきたいです(笑)」と微笑む。

■「なでしこたちがどう動くだろうと想像することで、自然と物語になっていきます」

原作では、一つ一つのキャンプを丁寧に描くことで、キャンプを経て主人公たちがなにかを感じとり、成長しているさまが表現されていると説明する。「あfろ先生の原作は非常に緻密。ストーリーは毎話きちんと完結していますが、よく読むと次のキャンプでは前回の経験とのつながりが感じられます。映画化の話が出たのが、『SEASON2』の終わり方も決まっていなかったタイミングだったので、必然的にオリジナルストーリーにするしかないと考えました。高校生のままでも作ろうと思えば作れたかもしれません。でも、ストーリーのなかで、『映画で描かれたキャンプで得た経験はなんだったのか』と、原作と齟齬が出てしまう。それだけは避けたかったので、思い切って大人になったなでしこたちを描こうという話になりました」と、”その後の話”を選択した理由を語った。「ちょうど、なでしこの妄想シーンで大人になった5人の話が、第1作目の12話に出てきたこともあり、おもしろいものが描けそうだと思いました」。

大人になったなでしこたちを演じる声優陣には、明確な指示やディレクションを出さず「思うようにやってください!」と伝えたそう。「『ゆるキャン△』のキャストは、実力のある方ばかり。ずっと一緒に作品を作ってきたし、絶大な信頼を置いています。だからこそ、キャストがイメージする大人のなでしこたちを演じてもらうのが一番だと思いました」とアフレコを振り返る。「僕自身もそうですが、大人になったからといって大きな変化があるわけではありません。もちろん、仕事をするうえで、言葉遣いやマナーなどには大人としての変化はあると思います。だからといって、大人としてどう描くか、どう演じるかを強く意識しなくても、脚本が出来上がり、画が出来上がりと作業が進む過程で、自然と成長を感じる演技になりました。いつも通り演じていただくなかですばらしい演技になったことは本当によかったと思うし、改めて感謝しています」。

メインキャラクター5人が乗る車にいたるまで、細部の描写にキャラクター像が浮かんでくるのが魅力な本作。制作するうえで、テレビシリーズでの経験が大いに役立ったと説明する。「『ゆるキャン△』の制作では、自分たちがキャラクターを動かすというよりも、キャラクターがどう動くだろうと想像することで、自然と物語になっていきます。なでしこやリンならこんなふうに動く、こういう選択をするとイメージするんです。テレビシリーズでも、オリジナルシーンを作る際にはなでしこたちが動き出すのを待っていました。自分たちが作っていて、キャラクターが動くのを待つというのも、ちょっと変な表現かもしれないけれど(笑)。やっぱり、キャラクターたちの自然な行動は、キャラクターにまかせたいという想いがあります。自分たちが作っているのですが、なでしこやリンがこう動いたからそれを追っている、そんな不思議な感覚があります」と語り、「なるほど、そう動くのか!」という錯覚のようなものが頻繁に起きるとも教えてくれた。

また、本作は”音”もポイントだと京極監督は胸を張る。「映画館の音響で聴くのはやはり特別。5.1チャンネルで最適に聴こえる形で収録しました。キャンプをしているとき、夜は本当に静かです。そのなかで、焚き火の音や料理する音、食べる音が響く。そういった効果音は、映画館では本当に繊細で立体的に聴こえます。テレビシリーズより遥かに手間もかかり、収録も大変でしたが、音響チームがものすごくがんばってくれたので、こだわって良かったなと思っています。聴きごたえのある“音”を堪能してほしいです」。

■「原作が大好きだからこそ、世界観に入っていただく可能性を狭めたくなかった」

”メインキャラクターたち5人のその後”を描いた本作は、原作にないオリジナルストーリーゆえ、公開前にはファンのなかで期待と不安の声が入り混じっていた。京極監督は公開後の反応を見て、「オリジナルストーリーで描くと決めたときから、賛否両論は覚悟していました。でも、思ったよりも受け入れられているという印象があります」と安堵した様子。テレビシリーズのファンを喜ばせることも大事だが、それだけではコンテンツの可能性を狭めてしまうのではないかと懸念したそうで、「映画にすることでたくさんの方に観てもらう可能性があるなら、それを広げていきたいという想いがありました。『ゆるキャン△』にはまだまだ新しい魅力もあるよ、こんな楽しみ方もあるよと提案したい。原作が大好きだからこそ、世界観に入っていただく可能性を狭めたくなかったんです」と映画化するうえでの“覚悟”を振り返った。

テレビアニメ、スピンオフ、映画化を経て、改めて作品の魅力を強く感じたという京極監督。「作り手として、作品の核となるものを考えていきましたが、『ゆるキャン△』のおもしろさって、うまく言語化できないんです。でも、原作を読み込んでいくうちに、キャラクター、キャンプ、美しい風景、グルメ、バイク…などなど、いろいろな要素が複合的に絡みあって構成されていることに気づき、結果的に“全部魅力だよね”というところに落ち着きました。5年以上作り続けても1つに絞りきれない、それこそが『ゆるキャン△』の魅力だと思っています。キャンプの楽しみ方が様々であるのと同じで、絞りきれない魅力のなかでその人なりの楽しみ方をすればいいということも、作品から教えてもらった気がします」。

そして、原作者の作風こそが”楽しみ方の自由さ”を作り出しているのだと、あふれんばかりの原作愛と共に語る。「現状に留まらないで常に変化していくあfろ先生の作風は、いまの時代にマッチしていてとても多様です。自分たちが考える『ゆるキャン△』の魅力を、アニメですべて出しきったと思っても、新たな魅力がまだまだ発見できる原作なんです。この多様なあり方が、楽しみ方の自由さにつながっているのだと思います。だから、今回の映画のように主人公たちを大人にした物語でも受け入れてもらえたのでしょう。僕たちがアニメを作り終えたあとも『ゆるキャン△』の世界はずっと続いていって、また新たな魅力に気づかされるのだと思います」。

取材・文/タナカシノブ
 
   

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