―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
◆弱点は1つだけ! やっと輸入車ファンにオススメできる、ハイブリッド車が登場
’97年にトヨタが初代プリウスを発売してから25年――。これまでも輸入車でハイブリッドカーを謳うクルマはあったものの、国産ハイブリッド車と比べてイマイチ燃費がよくなかったわけですが、ついに国産ハイブリッドカーに比肩する輸入ハイブリッド車が登場。やっぱりハイブリッドカーは、峠道や高速道路じゃなく一般道でこそ真価を発揮しますね。
永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
茂呂幸正=写真 Photographs by Moro Yukimasa
◆ガソリン価格だけでなく、クルマ本体もジワジワと値上げ
30年近くピクリともしなかった物価が、ついに上がり始めている。ガソリン価格だけでなく、クルマ本体もジワジワと値上げされている。納期も長くなる一方だ。つまり、クルマの購入は待てば待つほど不利になる。ランクルみたいに買えなくなることすらある。こんなの、バブル期以来初めて~!
「じゃ、急いでクルマを買おう!」という人がどれくらいいるかわかりませんが、中古車相場も上がりっぱなしなので、「いっそ新車か?」という状況ではある。中古車マニアとしては暗黒時代だが、是非もなし。
では、何を買いましょう。今後もガソリン価格は上がり続けそうなので、やっぱり燃費のいいハイブリッドか、さもなきゃEVでしょうか。ただ電気代も上昇中だし、電力不足も心配だ。航続距離の問題もあるから、やっぱハイブリッドが現実的な選択肢ですかねえ?
◆イーテック・ハイブリッドが出た!
ハイブリッドと言えば、圧倒的に国産勢が優位だ。輸入ハイブリッドなんてロクなもんじゃないので考慮の必要ゼロだったが、その状況が変わった。ルノー・ルーテシアの「イーテック・ハイブリッド」が出たのだ!
ルノーのハイブリッドは、まずSUVの「アルカナ」に搭載されて今年登場したが、当コラムでは「あんまりいいところがない」と酷評してしまいました。でもそれは、箱根周辺の山坂道で乗ったからで、改めて平坦な高速道路で乗ってみたらすごくイイ! 一番の美点はダイレクトな加速感! 国産ハイブリッド唯一の弱点は、高速巡行中にアクセルを踏み込んだ際の加速のかったるさだが、そこが特にイイ! 燃費も国産勢に遜色なし! ルノー様、私の第一印象が間違ってました! 申し訳ありません!
と思っていたら、ルノーは矢継ぎ早に次のハイブリッドモデルを登場させた。それが、ルーテシア・イーテック・ハイブリッドだ。アルカナと同じハイブリッドシステムが、160㎏も軽いルーテシアに積まれたんだから、走りも燃費ももっといいはずだ!
◆国産と完全ガチンコ勝負
ルーテシアのサイズは、トヨタ・アクアや日産ノートとほぼ同じ。つまり今度は、国産ハイブリッド勢の牙城と完全ガチンコ勝負である。
予想通り、走りはとてもステキだった。アクアよりパワー感はダイレクトで、ノートより高速巡行性能がイイ。燃費もノート以上アクア未満、リッター20㎞は走る。
◆国産車よりは高いけど輸入車としては安い
実際には、国産車と輸入車を並べて「どっちにしようかな」と迷う人はいない。輸入車を買う人は、最初から輸入車と決めている。つまり輸入車ファンにとって、初めて現実的な選択肢になりうるハイブリッドモデルが登場したわけです! 輸入車だけにハイオク仕様なのはハンデだが、見た目もインテリアもさすがおフランス車、センスがいい。ベンツやBMWだらけの東京・山の手の住宅地でも、オシャレ感でアピールできる。
お値段は329万円~。国産車よりは高いけど輸入車としては安い。うーむ、値上げされる前に注文しといたほうがいいのだろうか……。
◆【結論!】
サイズがデカくなる一方の輸入車だけど、ルーテシアの全幅は1725㎜で、アクアよりは広いけど、ノートオーラよりちょっと狭い。杉並区の細街路でも、幅が広すぎて困ることはなかろうて。
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
値上げ前に買いたい!国産ハイブリッド車と完全ガチンコの輸入ハイブリッド車
2022年8月1日