top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

【名馬列伝】見事な復活で天皇賞を連覇!闘志を取り戻したスペシャルウィークが、現役最終戦で見せた気迫のレース<後編>

THE DIGEST

×

【名馬列伝】見事な復活で天皇賞を連覇!闘志を取り戻したスペシャルウィークが、現役最終戦で見せた気迫のレース<後編>

 前年のジャパンカップ(3着)ののち休養に入っていたスペシャルウィークがターフに戻ってきたのは翌1999年1月、アメリカジョッキークラブカップ(GⅡ、中山・芝2200m)だった。

 久々の出走ながら、単勝オッズ2.0倍の1番人気に推されて臨んだこのレース。米国へ遠征中の武豊に替わってオリビエ・ペリエを鞍上に迎えたスペシャルウィークは、先行馬3頭を先に行かせて4番手の好位をキープ。直線で先に抜け出したサイレントハンターが粘り込もうとするが、それをあっさり交わすと、ほとんど追うところもなく3馬身差を付けて快勝。上々の滑り出しを見せた。
  武豊に手綱が戻った次戦は阪神大賞典(GⅡ、阪神・芝3000m)。ここでは前年の天皇賞・春(GⅠ、京都・芝3200m)を制したメジロブライトとの初対決となり、1番人気は1歳上のライバルに譲ったスペシャルウィークだった。しかし、道中は3番手を追走し、直線手前で先頭に立つという積極策に出ると、追撃するメジロブライトを3/4馬身制してゴール。順調なステップを踏みながら、いよいよ”大一番”へと駒を進めることになった。

 迎えた天皇賞・春。ここにはメジロブライトのほかに、前年の皐月賞と菊花賞で煮え湯を飲まされたセイウンスカイが待ち受けていた。

 ステップの日経賞(GⅡ、中山・芝2500m)を制して臨んできたセイウンスカイは流れを見ながら1周目のスタンド前で先頭に立ち、メジロブライトも定石どおり中団をキープ。対するスペシャルウィークは阪神大賞典で新味を見せた先行策を取り、セイウンスカイを外からマークするようなかたちで3番手を追走した。

 馬群はペースを上げながら直線へ向くと、セイウンスカイが先頭に躍り出るが、ワンテンポ遅らせて仕掛けたスペシャルウィークがそれを交わし、さらに外からメジロブライトが追撃。阪神大賞典の再現のような競り合いになり、結果、スペシャルウィークがメジロブライトを半馬身抑えて優勝。自身二つ目のGⅠタイトルを獲得し、ダービー馬としての威厳を表した。
  天皇賞・春の勝利後、スペシャルウィーク陣営から二つの発表があった。

 一つは、本年いっぱいで現役を引退させること。これは生産界からサンデーサイレンスの後継種牡馬を求める強い要望を受け、早期にスタッドインさせる方向で話し合ったオーナーの臼田浩義と社台グループの意向が一致しての決定だったとされている。

 そしてもう一つは、10月にフランスで行われる凱旋門賞(GⅠ、ロンシャン・芝2400m)への挑戦プランである。
  春シーズンの締め括りとして次走に選んだ宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)は、そのための“壮行レース”の意味合いもあった。

 だが、大望を抱いて臨んだ宝塚記念には、これが初対戦となる新たなライバル、2歳チャンピオンにして、前年の有馬記念(GⅠ、中山・芝2500m)を3歳で制した外国産馬、グラスワンダーが待ち受けていた。

 1番人気にはオッズ1.5倍という圧倒的支持でスペシャルウィークが推され、前走の安田記念(GⅠ、東京・芝1600m)を2着に取りこぼしていたグラスワンダーは2.8倍となったが、3番人気のオースミブライトの15.9倍という数字を見れば、このレースが“2強対決”に注がれていたことが分かるだろう。

 しかし、2頭の激闘をひと目見ようと詰めかけたファンの期待を裏切るように、勝負はあっさりと着いた。

 スペシャルウィークが4コーナーを先頭で回る積極的な競馬で逃げ込みを狙うが、それを追走したグラスワンダーが直線の半ばで捉えると、さらに末脚を伸ばし、3馬身もの差を付けて勝利を収めたのである。

 荒れた馬場状態が向かなかったという声もあったが、レース後に武が語った「完敗だった」というコメントが陣営のショックの大きさを表わしていた。

 この敗戦を受けて、スペシャルウィークの凱旋門賞への遠征プランは白紙に戻された。

 約3か月の休養を経て、秋シーズンを京都大賞典(GⅡ、京都・芝2400m)からスタートしたスペシャルウィークだったが、先行策から抜け出しをはかろうとするものの、ずるずると後退して7着に大敗。グラスワンダーにねじ伏せられた宝塚記念における負の印象もまだ強く残っていたため、ファンのあいだではにわかに”限界説”が囁かれるようになった。
  陣営も思わぬ大敗にショックの色を隠せなかったが、年齢的にズブくなって調教では条件馬に遅れることもあったスペシャルウィークを再び覚醒させるため、トレーニングの内容を強化するなど、思いつく限りの手を尽くして、予定どおりに天皇賞・秋(GⅠ、東京・芝2000m)へと進んだ。

 スペシャルウィークの体重は前走比-16㎏とすっきり絞れたものの、全盛期のような覇気が感じられず、厩舎スタッフも状態に関して半信半疑だったという。その雰囲気を反映してか、人気の面でもセイウンスカイ、ツルマルツヨシ、メジロブライトに次ぐ4番人気に甘んじた。
 
 しかしスペシャルウィークはこのまま終わるようなヤワな馬ではなかった。

 手綱をとる武が後方待機という思い切った策を取り、直線で外へと進路をとってゴーサインを出すと、ついに忘れかけていた闘志に火が灯った。鳴りを潜めていた爆発的な末脚を繰り出すと、直線だけで十数頭をまとめて交わし、2着のステイゴールドにクビ差をつけて勝利。大観衆の前で見事な復活劇を繰り広げ、1988年のタマモクロス以来、史上2頭目となる天皇賞の春秋連覇という偉業を達成したのである。

【動画】1999年 天皇賞・秋(JRA公式YouTube)

 蘇ったヒーローの勢いは増すばかりだった。

 当年の凱旋門賞を制したフランスのモンジュー、前年の英ダービー馬ハイライズらを迎えたジャパンカップでも、中団から切れ味抜群の末脚を使って抜け出すと、香港のインディジェナスに1馬身半の差をつけてGⅠを連勝。自身のラストランであり、春に苦杯を飲まされたグラスワンダーへのリベンジマッチとなる有馬記念へと突き進んだ。

 44回目を迎えたグランプリレースは史上に残る激闘となった。

 グラスワンダーが後方で折り合いを付けると、スペシャルウィークはそれを前に見る最後方にポジションをとって追走。2周目の第3コーナーから2頭が馬群の外を通ってぐいぐいとまくっていくところがターフビジョンに映し出されると、スタンドを埋め尽くした観客の熱気は最高潮に達する。
  内で粘ろうとする馬たちを他所に、外から2頭が追い込むなか、テイエムオペラオーが抜け出しかかるが、グラスワンダーが勢いにまさり、一完歩ごとに差を詰めてきたスペシャルウィークがそれに並びかけたところでゴール。

 スペシャルウィークの武豊は勝ちを確信し、グラスワンダーの的場均は負けと感じていたという。
  しかし、長い写真判定の末、掲示板の1番上にあがった番号は「7」。グラスワンダーが粘り切っていた。スペシャルウィークはハナ差で敗れはしたが、その差は約4センチしかなく、いわゆる「首の上げ下げ」で決まった火花散る死闘と言えるレースだった。

 この年のJRA賞年度代表馬の候補は、フランスでGⅠレースを勝ち、凱旋門賞で2着に入ったエルコンドルパサー、スペシャルウィーク、グラスワンダーの3頭に票が割れ、選考委員会での審議の末、エルコンドルパサーに決まった。そして、選から漏れたスペシャルウィークとグラスワンダーの2頭は、それに準ずるという意味を込めて「特別賞」が贈られた。

 種牡馬となったスペシャルウィークは、シーザリオ(GⅠ2勝)、ブエナビスタ(GⅠ7勝)という名牝を輩出。特にシーザリオは繁殖入りしてからエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアと3頭のGⅠ馬を産み、名牝シラオキの血をいまに繋いでいる。
(文中敬称略/後編・了)

文●三好達彦
【名馬列伝】奥深き血統的背景を持つスペシャルウィークが、武豊に悲願の称号を贈るまで<前編>

【名馬列伝】“日本競馬最強の2歳馬”の快進撃!グラスワンダーが見せつけた外国産馬のハイレベルな能力<前編>

【名馬列伝】衝撃の復活劇とライバルを差し切った名勝負! グラスワンダーが二度の有馬記念で魅せた底力<後編>

TOPICS

ランキング(スポーツ)

ジャンル