
本記事は、川口雅裕氏の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。
キレる高齢者が失っているのは「世間」
高齢者と「世間」や「共同体」の関係について、昨今の話題をひいてもう少し話をします。
飲食店や小売店でアルバイトをしている学生たちは、一様に「高齢男性は怖い」と言います。
店内でマナー違反をしたり、些細なことで文句を言い始めたり、怒鳴ったりする人が少なくないからです。
接客のシーンにおいて、高齢男性は極めて面倒くさい、警戒したほうがいい存在になってしまっています。もちろん高齢女性にもそのような人はいるでしょうが、圧倒的に高齢男性が恐れられているというのが現状です。
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「世間」をキーワードにすれば、これは分かりやすい現象です。
マナーというものには(少なくとも日本人にとっては)「世間を安定的に維持する手段」という面があります。
あるいは、世間に馴染み、世間の一員として共同体を乱す意思を持たない者であると証明するための手段とも言えるでしょう。
私たち日本人はそのときに属している世間の中で、その安定を乱さないような言動を選択し、その安定に寄与する役割を演じ続けてきています。
つまり、世間というものの存在が日本人のマナーをよくしている。
逆に言うと、日本人は世間を失うとタガが外れやすくなる。そう考えると、高齢者にマナーの悪い人が多くいることも説明がつきます。