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猫のにゃん太郎大反省…「えびせん」を飼い主に差し出した結果

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、榎本ひとみ氏の書籍『おもしろうてやがて悲しき』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

泥棒猫か孝行猫か

 

榎本さんちの前の道を挟んだはす向かいには、駄菓子や日用品雑貨を商う山川商店がある。時代が昭和から平成に移り変わる頃までは、駄菓子屋さんは身近にたくさんあったそうだ。だが、今では探しても殆ど見つからないので、子供達は遠方から自転車を漕いで山川商店に押しかけて来る。この店の前を通ると、子供達が楽しそうにはしゃいでいる声が聞こえて来るんだ。それで、俺も一度店を訪ねてみたいと思っていた。

ある日、店の中をチラリとのぞくと、お客は誰もいない。子供は猫を見るといじめにかかるので、子供がいない今がチャンスだ。躊躇する暇はない。即座に店の中に突入した。棚にはところ狭しと駄菓子やくじ引き用品が並べられ、賑やかだ。匂いも様々入り混じって、食欲をそそってくる。

「あ、はっぱえびせんがあるぞ。榎本さんがお酒のおつまみでよく食べているものだ」。どうりで海老の匂いがした訳だ。俺は咄嗟にお店のおばさんの姿を探した。おばさんは後ろ向きになって、棚の駄菓子の点検に没頭している。お客は誰もいないから何も気にしていない。俺がいることも感づいていない。俺は動くのも歩くのも忍者のように音を立てないからな。

「今だ!」。俺は一袋を口にくわえ、急いで店を出て、榎本さんちに向かって一目散に帰って来た。庭に着いて家の方を見ると、サンルームの戸が開いていたので、はっぱえびせんをくわえたまま、そこから入って行った。タイミングよく榎本さん夫婦がサンルームにいた。俺は喜び勇んで二人の前に行き、自慢げにポトリとはっぱえびせんを床の上に落とした、いや、置いた。

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「榎本さんのお好きなお酒のおつまみをお持ちしました。どうぞ、今夜召し上がってください」と心浮き浮き弾んだ声で言ったんだ。きっと、榎本さんは喜んで受け取ってくれるものと思っていた。なのに、事態は思いがけない方向に展開していったのだ。

 

榎本さんの奥さんは驚いて、

「にゃん太郎。これどこから持って来たの?」

「自分で食べないで、私達に持って来たの?」と語気荒く詰め寄って来る。

榎本さんも同様に驚いているが、状況が分かってきた様子で、ニヤニヤしている。「もしかして山川さんの店からくわえて来たのかもしれないな。これは困ったぞ。山川さんに確認すべきだな。にゃん太郎君」と言うんだ。

食べてくれるどころの話ではない。俺がはっぱえびせんをくわえて持って来たことが問題になっている。すぐに榎本さんの奥さんが山川商店に確認に行き、はっぱえびせんの代金を払って戻って来た。

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