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正直、ビビった。お風呂からあがった「赤ちゃん」に慄いた理由

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、香輪直氏の小説『君と抱く/夢想ペン作家日和』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

君と抱く

脱衣かごにバスタオルを布団のように敷きつめ、そこに赤ちゃんの上着、その上に肌着をセットした。その足元にはもう一枚のタオルとオムツの替えも置いてあった。するとおやじさんは服を脱ぎ一人風呂に入った。手早く体を洗うと湯船に浸かりながらおれにこう言った。

「華ちゃんの服を脱がせて連れてこい」

おれは正直戸惑ったが、必死で赤ちゃんの服を脱がせておやじさんの所へ連れて行った。さすがに服を脱がされた赤ちゃんは湯船に入るまでずっと大泣きしていた。結構大きな声で元気よく泣いていて……でも不思議とその元気な泣き声に安心した。

おやじさんは泣きまくる赤ちゃんに焦るそぶりもなく、温まった両腕でしっかり横抱きにして、それはそれはまた手早く赤ちゃんの頭や顔や体を洗い、ものの数分で湯船につかった。火が付いたように泣いていた赤ちゃんも湯船の中では泣きやみ、気持ちよさげにプカプカと浮かんでいた。

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おやじさんのごっつい手で赤ちゃんの首はしっかり支えられていて、体は魚のように左右にゆらゆら、プカプカと浮いていた。心から可愛いい♡ と思ったが、余韻にひたる間もなく、おやじさんはおれにタオルを持ってこさせて言った。

「タオルを両腕に渡すように広げて持ち、華ちゃんを受け取りに来い」

正直、ビビった。ぜったいまた、泣きわめくと思ったからだ。しかし、赤ちゃんは驚くほど静かで泣かなかった。蒸したての肉まんみたいに熱々でふっかふかでとても機嫌が良くて安心した。

おれは頑張っておお急ぎで赤ちゃんの体を拭き、おやじさんがセットしてくれた服の上に寝かせてオムツをしてやろうとした。おれがオムツに四苦八苦するうちにおやじさんはパンツ一丁でおれの後ろに立っていた。

「どれ交替だ! のんびりしてたら風邪をひかせちまうぞ」

そう言うと本当に手早く、またしてもほんの数秒で服を着せた。おやじさんは赤ちゃんを一旦バスケットへ寝かせると冷蔵庫から麦茶を取り出し、でかバッグの中から小さめの哺乳瓶を取り出した。そして、哺乳瓶の三分の一くらいの量まで麦茶を入れて、そこへポットから加減しながら湯を足し、ぬるくしたものをバスケットの中の赤ちゃんに飲ませてあげた。

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