
ロシアによるウクライナ侵攻は多方面にわたって悪影響が及んでいる。ロシアの軍艦や潜水艦が出す騒音のせいで、黒海で暮らすイルカたちが次々と命を落としているという。
キエフ・インディペンデント紙が報じたところによると、ば3月から7月にかけて、少なくとも5000頭以上のイルカが死亡したと推定されている。
このまま戦争が長引けば、黒海の生態系全体に大きな悪影響を及ぼすことが懸念されている。
ロシアのウクライナ侵攻以降、黒海のイルカの大量死が相次ぐ
黒海は、ヨーロッパとアジアの間にある内海で、バルカン半島、アナトリア半島、コーカサスと南ウクライナ・クリミア半島に囲まれている。黒海に面する国は、南岸がトルコで、そこから時計回りにブルガリア、ルーマニア、ウクライナ、ロシア、ジョージアとなっている。
ウクライナ、トゥズリー河口国立公園の環境科学者イワン・ルセフ氏は、「こんなこと初めてだ」「科学者が見たこともない、恐ろしいこと」と紙で語っている。
戦争前に行われた黒海のクジラ類を対象にした包括的調査では、かなり良好な結果が得られていたという。
ここ20年間クジラやイルカなどの個体数が減少しておらず、黒海のイルカ(マイルカ、ハンドウイルカ、ネズミイルカなど)の生息数は25万3000頭と推定された。
しかし3月になり、トルコ海洋研究財団(TUDAV)は、トルコが面する黒海西部で、マイルカの死亡数が異常に増加していると報告。2月以降、80頭が海岸に打ち上げられていることを明らかにした。
トルコ海洋研究財団は当初、漁業との関連を疑ったが、4月に戦艦から漏れる油やガスが沿岸部の魚やイルカの生息地に与える悪影響について警告。くわえて機雷・ミサイル・弾薬などが黒海を汚染していると指摘した。
軍用ソナーがイルカの聴覚を傷つけている
ウクライナの黒海沿岸の一部は、初期からもっとも激しい戦闘が繰り広げられているところだ。2月24日の時点で、ロシア軍がズミイヌイ島を占拠。しかし7月にウクライナが島の奪還に成功。さらにウクライナ軍はロシア艦隊の旗艦撃沈にも成功し、現在さらなる反撃へ向けて準備を進めているところだ。
ウクライナ生態・天然資源省は5月、ロシア軍の軍用ソナーがイルカの聴覚を傷つけていると発表。ソナーは、イルカのエコーロケーションも混乱させてしまうため、イルカがパニックを起こし、海岸に打ち上げられている可能性があるという。
また英国の保護団体ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーションは、6月に発表した報告書で、ウクライナに面した黒海沿岸の重要な生息域6ヶ所が戦争によって脅かされていると指摘する。The constant underwater noise caused by submarines of Russia’s Black Sea Fleet, as well as explosions, is causing dolphins acoustic trauma, paralyzing the vital echolocation system that they use to communicate, find food, and navigate.https://t.co/cU3bnHQ6L8
— The Kyiv Independent (@KyivIndependent) July 20, 2022
ルセフ氏は、騒音による聴覚障害のせいで、イルカは病気や寄生虫にも弱くなっていると説明する。
健康なイルカは生命力が強く、そのような病気にかかることは滅多にない。間違いなく音響被害によるものだ(ルセフ氏)References:More than 5,000 dolphins die in Black Sea as a result of Russia’s war / written by hiroching / edited by / parumo