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彼のスマホに、ホテルの結婚式プランが…。女が顔をこわばらせた理由とは?

東京カレンダー

彼のスマホに、ホテルの結婚式プランが…。女が顔をこわばらせた理由とは?

「あんなに優しかったのに、一体どうして?」

交際4年目の彼氏に突然浮気された、高野瀬 柚(28)。

失意の底に沈んだ彼女には、ある切り札があった。

彼女の親友は、誰もが振り向くようなイケメンなのだ。

「お願い。あなたの魅力で、あの女を落としてきてくれない?」

“どうしても彼氏を取り戻したい”柚の願いは、叶うのか――。

◆これまでのあらすじ

賢也と穂乃果の不貞をばらそうと、穂乃果の夫・秀和を突撃訪問した柚。不倫旅行の写真を見せられた秀和は、「探偵をつけます」と顔を曇らせ…。

▶前回:“むこうの夫”に不倫をバラしに、自宅までおしかける女。「あなたの奥さま、昨日私の彼氏と…」



― 穂乃果の旦那さんに突撃訪問してから、もう1週間以上か。なんてスリリングな経験だったんだろう。

穂乃果の旦那・秀和に、決定的な写真をつきつけた自分―。あの行動力は、自分のことながらすこし怖いくらいだ。

とはいえ、あれから日常は何も変わっていない。

賢也との、退屈で冷たい毎日。

クリーニングが済んだ賢也のジャケットを、クローゼットにかけながら柚はうつむく。

― 探偵はちゃんと動いてくれているのかしら?

こんな暮らしは、もう我慢ならない。

やっぱり別れてしまおうかと、昨日もおとといも、何度も思った。

でも…賢也が痛い目に合うのを見届けないと、どうしても気が済まないのだ。

「秀和さん、早く賢也を訴えてください…」



Gmailアプリに赤い通知マークがついていることに気づいたのは、その夕方のことだった。

開いてみると期待通り、秀和からのメールである。

― もしかして!ついに動きがあったのかな?


数十行にわたるしっかりした文章のメールだった。

かじりつくようにスマホを凝視し、文を目で追っていく…。

『一昨日ついに、2人がホテルに入っていく写真を入手しました。先日送って頂いた例の写真だけでも十分な証拠になりうるとのことでしたが、これで完全に言い訳できませんね』

― 探偵さん、お手柄だわ。

『私は決心しました。穂乃果のことも、あなたの彼のことも、許すつもりは毛頭ありません。ですから、あなたの彼に慰謝料を請求するつもりです』

怒りのにじんだ秀和の文面。

「慰謝料」というワードに柚はつい、にんまりする。

訴えられたら賢也は、一体どんな顔をするだろう。

しかし秀和は、柚に配慮してかこんな一文でメールを締めくくっていた。

『でも、彼に慰謝料を請求したら、柚さんになにか不都合がありますか?それを聞いておきたくて、今日はメールをしました』

思慮深い秀和に感嘆しながら、すぐに返信を打つ。

『ご連絡ありがとうございます。慰謝料、私にはなんのマイナスもありません』

メールを打つ指のスピードがあがる。

『むしろ私は、彼に苦しんでほしいんです。だって、あの人は私をないがしろにしたから。それなのに、自分だけ幸せになるなんて、許せない。だからたっぷり請求してください』



18時前にリモートワークを切り上げ、柚はひとりで缶ビールをあける。

賢也にバチがあたる日がすぐそこまで迫っているのだと思うと、早くもせいせいした。

ほろ酔いのテンションで、柚は創に電話をかける。

「ねえ、聞いてよ。ついに賢也は、訴えられるわ」

慰謝料の話など、事の一部始終を興奮して話した。しかし意外にも電話の向こうで、創は困惑した声を出すのだ。

「…あのさ、柚。もういいから、別れたらいいのに。逆になんで別れないの?」

「え?だって…痛い目見てほしいじゃないの」

「うーん。でも、賢也に復讐をしたところでさ、たぶんいつか2人はくっつくぜ?俺だったらとうに見捨てるけどなあ。だって、時間は有限。俺なら、幸せになるためだけにエネルギーを使うよ」

予想外にも創に諭されてしまい、黙り込む。すると創は優しい声で「どうしてそこまでこだわるのさ」と聞いてきた。

「だって…ひどいことをされてきたから。最後くらい、賢也と穂乃果さんには、割に合うような仕打ちを受けてほしいの。私はそれを見届けたいの」

「…まあ、言いたいことは、なんとなくわかるけど」

「私ね、もし本当に慰謝料騒ぎになったら、そのことを賢也の会社の人たちにも広めちゃうわ。賢也は、会社からの信用をなくすでしょうね」

創は困ったように口ごもってから、「ま、応援するよ」と笑った。

柚は思う。創には、わからないのだ。モテるし、誰にも執着しない性格だから。

でも自分は、創とは違う。

だから未来の幸せよりも、失ったものばかりに目がいく。

「いいのよ。だって、賢也が当然受けるべき仕打ちだもん…」

電話を切ったあと、柚はひとりごちた。

そう、すべては賢也の自業自得なのだ。焦って、うなだれて、後悔すればいい――。

秀和から返事があったのは、日付が変わったあとだった。


賢也は、今夜も遅く帰ってきて、シャワーも浴びずにベッドに直行。早くもいびきをかいている。

柚はお酒くさい息を感じながら、ベッドの端に座り秀和からのメールを開いた。

『柚さんの気持ち、わかります。私たち、ないがしろにされた者同士ですね。
正直、慰謝料をもらったところで気持ちは晴れません。もっと不幸になってもいいと思う。それくらい、許せない気持ちでいっぱいです』

秀和の文面には、諦めと怒りが滲んでいる。

― ああ、秀和さんは、私とすごく似た立場にいるんだわ。

共感で胸が痛む。もちろん、結婚しているかいないかという大きな違いはある。しかし、愛した相手に裏切られた結果、諦めと怒りで心がパンパンになってしまった者同士である。

そんな秀和のメールは、こんな一文で終わっていた。

『穂乃果は、結婚制度に向かない女でした。結局、たくさん搾取されてしまいました』

吉祥寺にあった、秀和と穂乃果のあの大きな家。

秀和がどんな仕事をしているのかについてはまったく知らないが、おそらく穂乃果を十分すぎるほどの給料で養ってきたのだろう。

しかし、高級感のある身なりに反し、秀和は疲れた顔で笑っていた。

― なるほど、「搾取」ね。

搾取という言葉に心が共鳴する。

柚だって、賢也には搾取されてきた。金銭的な搾取こそされていないものの、冷たい態度をとられ、明るい感情を搾取された。

それから家事の労力、そして、大事な時間を…つまり若さを、たっぷり搾取されたのだ。



メールを閉じ、賢也を横目に見る。

スマホをいじりながら寝落ちしたのか、枕元のスマホは何かのホームページを表示して光っている。

柚は、手慣れた様子でその黒いスマホを手に取った。

― え?パレスホテルのブライダルプランだ。なんで?

スマホに映っているのは、壮麗なチャペルだった。

パレスホテルといえば、柚の憧れのホテルだ。付き合いたての頃から賢也には「ここで結婚式を挙げたいんだ」と伝えていた。

でも賢也は当然、柚ではなく穂乃果との式をイメージして、このページを見ていたはずだ。

「…もう結婚準備?完全に浮かれちゃってるわ。でも、今に見ててよ」



賢也が訴えられる日を今か今かと待ち侘びながら、柚は今日も、床に放置された賢也の靴下をつまんで洗濯機に入れ、シンクに放置された食器を洗う。

いい加減懲りたと思ったとき、ついにGmailアプリから通知が届いた。

メールは、秀和からだ。

― なにか動きがあったんだわ。

はやる気持ちで開いてみると、そこにあったのは、予想外すぎる文言だった。

『一旦、訴えるという話は取りやめにします』

― え…。

『ここだけの話、穂乃果の妊娠が発覚したためです。正直誰の子かわかりません。でもさすがに、彼女に精神的な負担をかけたくないのです』


▶前回:”むこうの夫”に不倫をバラしに、自宅までおしかける女。「あなたの奥さま、昨日私の彼氏と…」

▶1話目はこちら:「あの女を、誘惑して…」彼氏の浮気現場を目的した女が、男友達にしたありえない依頼

▶Next:7月29日 金曜更新予定
秀和からのまさかの連絡に、柚はある行動に出る。


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