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[Alexandros]川上洋平、シェフのスリリングな一夜を90分間ワンショットで捉えた『ボイリング・ポイント/沸騰』について語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】

SPICE

――確かに(笑)。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や『1917 命をかけた伝令』と違い、一切編集もCGもないという。

そうなんですよね。YouTubeにアップされているこのフィリップ・バランティーニ監督のインタビューを観たんですけど、インタビュアーが「ワンカットで撮るにあたり、マイクはどうしたんですか?」とか、割とこちら的にも気になる技術的なことを訊いていて。その中で一番印象に残ったのが、「どうやって準備したんですか?」っていう質問に対して「私はマップアウトをした。基本的にはそれだけだ。あとは私がやりたいことを理解してやってくれる仲間とのコラボレーションだった」みたいなことを言ってて。ちょっとはぐらかしてるんですけど(笑)。

――(笑)役者陣のリハーサルについては、フロアスタッフで5日間、厨房スタッフで5日間行ったと。その上で、即興のお芝居も結構入っているそうです。

へえ。一瞬火傷するシーンとかもアドリブなのかな。

──あと、フォーク落としたりとかも。

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ね。だからアドリブもあるんだろうなと思って観てたので、あの火傷のシーンはちょっと心配になりましたね。でもそうなると、どこまでのミスでカメラを止めるのかが気になりますよね。

──どこでNGにするかっていう。

そうそう。これはさすがにセリフ盛り過ぎだろうみたいな。まあ、ライブに近いですよね。

──確かに。ライブは、演奏があまりにも乱れたら止めますけど、小さなミスや歌詞の間違えだったらそのままやったりしてますよね。

私なんかは、歌詞はそうですね…。

──すいません、そこはあえて名前を出しませんでした(笑)。

あははは。

『ボイリング・ポイント/沸騰』より


■そこまでしてやったのがすごいなって思う

──英国インディペンデント映画賞では最多11部門にノミネートされ、助演女優賞とキャスティング賞と撮影賞と録音賞を受賞したそうです。

いやー、これを撮った技術チームに拍手を送りたいですよね。

――チャンネル数が38に及んでマイクが店内中に仕掛けられたって、すごい数ですよね。

基本は何人かの登場人物の周りだけで良いわけだけど、この映画の場合、たくさんの出演者が同時に動いてるわけだから。あとレストランの外にも移動するし。あの大移動の時とか、音響的には大変ですよね。

──チャンネル数が多すぎて、警察の無線システムを妨害しないように規制機関の許可を得たという。

そこまでしてやったのがすごいなって思う。でも監督のインタビューが飄々としていて、やろうと思ったらそれを実現する手法はあるってことなんだと思うけど。そういえば、ワンカットといえば、我らが[Alexandros]の「涙がこぼれそう」のミュージックビデオはワンカットですから(笑)。

──そうでした(笑)。あのMVめちゃくちゃ良いですよね。

ありがとうございます。洋MVのアプローチですよね。

──映画好きの川上さんっぽいアイディアですよね。

ですよね。しかも飯豊まりえちゃんが一瞬歌詞を間違えてるところもいいんですよね。

――初々しくてね。ワンカットっていうことは、カメラのフレームの外で、メンバーみんな衣装を早着替えしたっていうことですか?

しましたね。懐かしい。2、3テイク撮ってすぐ終わりましたね。

──リハは何回ぐらい?

リハも2、3回しかしなかった。カメラの構図を決めてそれくらいで終わった気がする。だからマップアウトしかしてないです(笑)。マップアウト‼

──その言葉気に入ってますね(笑)。自分が90分ワンショットを演じることになったらどうですか?

いや、90分はちょっときついですね(笑)。失敗のハードルをちょっと下げながらやるとかないと無理だと思うな。人が転んでかすり傷くらいだったら続行するとか。セリフの面でも、普通に生活してても言い間違いや言葉が出ないことはあるわけだから、それぐらいだったらとちっても許容範囲で進めていくとか。ライブですからね。舞台は止められないわけだから。

──ひとり芝居の舞台とかだと別ですが、基本は転換や自分が出ない場面があるわけで。でも『ボイリング・ポイント』はずっと背景として存在してますからね。

そうなんですよね。ずっと料理はしてないにせよ、包丁をいじったり、ずっと何かやってそうな感じがありますよね。皿洗いの男性が外に出て女性と会ってるシーンとかはさすがに次の準備をしたりしてるのかもしれないけど。よく練られてますよね。

――そうですよね。

今年、こういうワンシチュエーションで進行する映画があまりなかった気がしてたんですけど、久々にそういう映画が観れて良かったです。

──ちょっと前だったら『search』とか。

そう。あと、俺の好きなジェイク・ギレンホールがリメイクした『THE GUILTY』も良いですよね。さっき名前が出た『1917』も厳密にはワンカットじゃないけど、すごく好きな映画ですね。

『ボイリング・ポイント/沸騰』より


■レストランでスタッフさんたちの仕事ぶりを見るのも海外旅行の醍醐味

──登場人物それぞれの人生模様が交錯していく作品ですが、特に印象的な人物はいました?

デザートコーナーのちょっと年配の女性と若い男性っていうパティシエの二人組ですね。男の子の腕にためらい傷があって、それが目に入った瞬間に女性が涙目になって「何があったのか言わなくていいから」みたいなことを言う。そこで気まずくなるんじゃなく、ちゃんと受け止めてあげるのがいいなあと思いました。

──監督は12年間のシェフの経験があるということで、飲食店の労働環境のハードさをはじめとする様々な問題を盛り込んだそうです。

ああ、なるほど。ただ思ったのは、アメリカとかイギリスのこういう高級レストランの雰囲気って、ちょっと似てるなあって。どっちも割とオープンにキッチンの人同士が話し合ったり、お客さんに対してもチップがほしいからっていうのもあるかもしれないけど(笑)、おもてなしも含めてかなりフランクに話しかけて。

──会話でもお客さんを楽しませるみたいな。

そうそう。お客さんにあまり隠そうともせずに、厨房の人とホールの人が「今日こういう感じだよね?」とか喋ってて。レストランでそういうスタッフさんたちの仕事ぶりを見るのも海外旅行のひとつの醍醐味だったりするけど、日本だとそういう感じが許されないお店が多いイメージがあって。

──私語厳禁的な。

そうそう。もちろん向こうもダメなところはダメなんでしょうけど、日本ほど厳しくなさそう。そういうのが垣間見える感じも含めて良い映画だったなって。

――色々とリアルでしたよね。

すごいリアルだった。キッチンの子とホールの子が付き合ったりとか。ああいうシーンも好きだったな。驚いたのが、40分も遅刻してあんな軽い感じなんだ?みたいな。

──そうですよね(笑)。

全く反省してない感じでしたよね。40分って相当ですよ?

──日本の高級レストランだったらあの感じじゃ済まされなさそうですよね。

そういうところも含め、イギリスの文化がよく出てるなって。 あと、僕がちょっと気になったのは、シェフが小さいスプーンでソースか何かを味見するシーンで。ああいうシーンってよくあるけど、あのスプーンってちゃんと毎回洗ってるんだよね?って(笑)。

──綺麗好きの川上さんとしては気になるところですよね(笑)。

プチ潔癖なもので。もしSPICEの読者の方でシェフの方がいたら、「あれはこうしてるんです」っていうのを教えていただけたら嬉しいです。

――あははは。

でもあの仕草、かっこいいですよね。素早く味見して、「これでOK!」みたいなこと言って出すっていう。シェフは無理だけど、あれだけやってみたい(笑)。


取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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