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フレデリックがその技巧と音楽愛でキャリア最大のアリーナを躍らせた夜

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「蜃気楼」を演奏し終えたところで、健司はフレデリックのキャリアにおいて1つのマイルストーンになるに違いない今回の会場に国立代々木競技場第一体育館を選んだ理由を、そう語った。もしかしたら、格段にパワーアップした4人の演奏を、単純にでっかいアリーナで鳴らして、響かせてみたかったんじゃないか。もちろん、理由はそれだけじゃなかったと思うが、抜身のバンド・サウンドの迫力を、演出に頼らずにアピールした序盤のハイライトと言えるのが「かなしいうれしい」だ。ご存じのとおり、17年8月にリリースしたシングルの表題曲だが、「1!2!3!4!」とカウントの声を上げた高橋がいきなりサビのドラムフレーズを打ち鳴らすと、それに応え、観客が同じリズムでハンドクラップを返す。「すごいな! 1つになろうぜ」と健司が歓喜の声を上げ、なだれこんだその「かなしいうれしい」の隆々としたリズムとともに曲が持つファンキーな魅力を強調した演奏は、明らかに今のフレデリックだからこそ鳴らせるものだ。

フレデリック 撮影=渡邉一生


そして、時計が時を刻む音と映像を使いながら、音数を抜いたアンサンブルの妙を聴かせた「ANSWER」から「まだまだ俺達の音楽を楽しんでください」(健司)と繋げた「Wanderlust」からは、これまでのキャリアの中で“見せるライブ”にもこだわってきたフレデリックらしい演出とともに彼らのレパートリーの中でも風変りと言える曲の数々を披露していった。

康司がシンセ・ベースを弾き、エレクトロ・ミュージックと生のバンド・サウンドの融合をステージの左右と背景にあるビジョンに映し出した渡り鳥の見た雄大な景色(?)とともに聴かせた「Wanderlust」。ステージを覆い隠すスモークの中から、ゆらゆらと立ち上がるようにイントロが聴こえてきた「うわさのケムリの女の子」。そして、暗転の暗闇を健司の歌声が引き裂くように始まった「ラベンダ」は、音の素材をエディットして作った音源をファンキーなバンド・サウンドに落とし込むライブ・アレンジに挑戦。高橋、赤頭、康司の3人がそれぞれに別々のフレーズを奏でながら、絶妙に絡み合うアンサンブルを、曲が進むにつれ、最初一筋だった光が最後には無数になっているという演出とともにじっくりと聴かせきったのだった。

撮影=小杉歩


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「気が付いたんだけど、今日は6月29日でムジク、ムジーク、ミュージックの日なんやな。そんな日にミュージックジャンキーって(タイトルの)ライブやるってことは運命。ディスティニー(笑)」(赤頭)
「今、みんなが感じているものは、絶対この瞬間しか感じられないもの。映像ではなく、気持ちの中に残っていくものだから、今、感じたものを大切にしてください」(高橋)

「自分ばかり喋っても」と健司から振られた赤頭と高橋がここまで演奏してきた感慨を語った、この日唯一のMCコーナーを挟んでからのブロックでは、花道と花道の終点にあるサブステージで2曲を披露。アリーナ・ライブではもはや定番と言える演出だが、そこは観客を驚かせることに歓びを感じるフレデリックだ。

撮影=小杉歩


「デモを聴かせたとき、健司がこの曲は康司が歌ったほうがいいと言ってくれた曲です」とリード・ボーカルを取る康司が語った美しさと悲しさが入り混じるバラード「YOU RAY」と、音源のバンド・アレンジを、健司がアコースティック・ギターをかき鳴らしながら、敢えて弾き語りした「サイカ」という選曲からは、この2曲を『FREDERHYTHM ARENA 2022』ならではの特別な時間にしたいという思いが窺えた。しかも、康司と健司がそれぞれに語った曲にまつわるエピソードがその時間をより特別にものにしたのだから、なんとも心憎いではないか。

「YOU RAY」のエピソードは前述したとおり。一方、「デビュー後、声が嫌いと言われ、なにくそと思いながら、3人が俺の声が必要だと思わせてくれたおかげで、この声で一生やっていこう、全部の場面を覆そうと思えた。その覚悟を込めて」と健司が語った「サイカ」は、その3人がサブステージから強さも弱さも丸ごと曝け出した健司の絶唱を見守った。そんな普段のライブではなかなか見られない光景が印象づけたのは、「俺の自慢の仲間です」と健司が言ったこの4人の絆の強さだった。

撮影=小杉歩


そんなふうに、それぞれに見どころがあった本編を締めくくった終盤は、「ここから踊らせていくで! 覚悟しといてや!」と「Wake Me Up」から「YONA YONA DANCE」「KITAKU BEAT」とアップテンポのダンス・ナンバーの数々を、健司のみならず、康司、赤頭もステージと花道を走りながら、ほぼノンストップで繋げ、観客を存分に踊らせていく。もちろん、ここでも骨太になった演奏をこれでもかとアピールした。

「8年前、この曲でメジャーデビューしました」(健司)と紹介した「オドループ」は「人生最高の日を更新したい。最高の景色を見せてくれますか?」という健司の言葉に応え、バンドが演奏を止めた瞬間、観客がハンドクラップでレスポンスを返すというお馴染みの光景ではあるけれど、実はバンドと観客の間に信頼関係がなければ、絶対に成り立たない奇跡と言ってもいい交歓が実現。そんな信頼関係を築きながら、ライブで繰り返し繰り返し演奏してきた「オドループ」も8年を経て、演奏の推進力となっている高橋のドラムのキックと康司のベースが作る怒涛のグルーブ、赤頭がエビ反りしながら披露するギター・ソロ、そしてギターリフと掛け合うように康司が挿し込むベースのソロ・フレーズなど、シンプルなリフレインの中に聴きどころ満載のライブ・アンセムに進化していたことをこの日、改めて筆者は実感したのだった。

撮影=小杉歩


「今、あなたに届けたい曲です。今一番かっこいいと思う曲をやってから帰ります」(健司)

本編の最後を飾ったのは、もちろん「ジャンキー」。力強い演奏で観客を踊らせながら、バンドはさまざまなサプライズも詰め込み、観客を歓ばせる。MVに出演している双子の姉妹の登場は、予想していたという観客もいたかもしれないが、客席のあちこちにいる会場スタッフ達が突然、姉妹と同じ振り付けでダンスしはじめるという演出には、いろいろな意味で心底びっくりさせられた。まさか予想していた観客はいなかったはず(アンコールでステージに戻ってきた健司の「驚いたやろ?」というドヤ顔も頷ける)。

そして、「俺達ミュージックジャンキーの旅はまだまだ続きます!」と言う健司の言葉に続いて、9月から始まる全国ツアー『FREDERHYTHM TOUR 2022-2023 〜ミュージックジャーニー〜』、2023年3月に開催のホール公演『FREDERHYTHM HALL 2023』の日程がビジョンに映し出され、渾身の演奏を続けていた4人が、「最高や。みんなありがとう!」という健司の言葉とともに演奏を終えると、バーン!!!!と火薬がハジけ、ステージから噴き出した煙がダメ押しで観客の度肝を抜いたのだった。

撮影=渡邉一生


計30本というロング・ツアーに初挑戦することについて、「まだまだ新しいことに挑戦するわくわくが止まらない」と健司が語ってから、アンコールに応え、バンドは「これからも走り続ける」という思いを込めてアンセミックな「サーチライトランナー」を披露。そして、「ライブ三昧の1年にしていきます。俺達の正解として、正義として音楽を目の前にいるみんなにちゃんと届けたい。いろいろなバンドを見ても、やっぱりフレデリックが一番かっこいいと思って欲しい。思わせられるよう1日1日を謳歌したいと思います!」という健司の宣言から演奏したこの日最後の曲がメランコリックな「熱帯夜」というのは、ちょっと意外にも思えたが、単純に盛り上がっておしまいではなく、今夜、うちに帰ってから、ライブを思い出した時、ラテンとブラック・ミュージックのエッセンスが溶け込んだ、この曲の心地よさと若干の切なさがきっとじわじわと効いてくるんじゃないか。きっとそういう選曲だったんだと想像したりも。

撮影=小杉歩


「音楽を大好きでいてくれてありがとう。音楽に身も心も捧げれる人、どれだけいますか?」という健司の問いかけに観客全員が手を挙げたが、尋ねるまでもない。この日、ステージの4人が全身全霊で、音楽に身も心も捧げる素晴らしさをまざまざと見せてくれたのだから、それを見た我々だって同じように身も心も捧げようと思うのは当然だろう。こうしてフレデリックとファンの絆は、また強いものになっていくのだ。

「絶対にその心を忘れないでください!」

健司の確信に満ちた声がアリーナに響き渡った。


取材・文=山口智男 撮影=渡邉一生、森好弘、小杉歩

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