
※本記事は、山本良一氏の書籍『保育に、哲学を!』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
職員の人間関係がよいこと
まず、子どもたちが毎日生活する場である園において、もっとも深く関わる職員の人間関係がよいものでなければならない、ということです。子どもたちのそばにいる職員間の人間関係が悪くては、子どもは安心できません。
限られた場所で毎日生活していると、確かにいろいろな行き違いや誤解が起こります。とくに一つのクラスを複数の先生が担任しているところでは、考えの違いや受けとめ方の違い、食事のときの食器の配り方や布巾の置き場所にしてもそれぞれのやり方があって、感情の行き違いの要因になることがあります。
そのため、日常的に打ち合わせや話し合いをおこない、園の基本的な姿勢「いつも子どもの幸せや成長のために努力するものであること」が空気のように存在していることが大切です。また、専門職としての知識や技能が評価されるとともに、「さらに向上しよう」という刺激や雰囲気があること。
そして、ある段階までは責任を取らなければなりませんが、最後の責任は主任の先生や園長が引き受けてくれることがはっきりしていることも大切でしょう。これらが、保育の専門家としての自覚とゆとりを持たせることになり、職場の人間関係をよくしていくように思います。
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もちろん、そのためにはお菓子を食べながら雑談したり、食事をしたりしながら話し合う機会や、ときには一泊旅行をすることによってお互いをよく知るとともに、リラクゼーションすることも必要です。
職員と保護者との人間関係がよいこと
また、職員と保護者との人間関係が悪くては、子どもたちは園で安心して生活することができません。
園に持ってくるように定まっている持ちものを持ってこなかったり、連絡がなくお迎えが遅くなったり。また子どもの持ちものが紛失したり、顔に引っかき傷などのケガをさせられたり……といろいろなことが起こって、職員と保護者との間にも行き違いや感情のぶつかり合いが生じます。
けれど、ちょっとした行き違いや誤解があっても、翌日、顔を合わせたときにいつものように朝のあいさつをしたり、連絡帳や直接の会話によって必要なことを伝えたり、子どものよい面を知らせたりすることによって関係を修復していくことができます。
この点で保育園は、バス通園などの幼稚園や学校と比べて、非常に恵まれているのではないでしょうか。毎朝の登園時と夕方のお迎えのときに、保護者と直接顔を合わせる機会があるからです。
子どもたちに「安心」をもたらすために、職員間の人間関係や、保護者と職員との関係が大切であるという認識は、多くの園においてもなされているように思います。