
image credit:Mojo Vision
現実世界に仮想世界を重ね合わせて表示する拡張現実(AR)を実現するには、眼鏡型やヘッドマウントディスプレイ、スマホなどが主流だが、かねてから開発が進められていた、直接目に装着するコンタクトレンズ型のデバイス「モジョ・レンズ(Mojo Lense)」のプロトタイプが、ついに実装にまでこぎつけたようだ。
コンパクトかつ高解像度。眼球だけで操作できるハンズフリー・スマホフリー仕様となっており、SFの世界が現実になった感が凄い。
今回、CEOが自らがプロトタイプを装着したところ、「未来を目にして、言葉を失った」とコメントしている。
コンタクトレンズ型のウェアラブルARデバイス
ウェアラブルデバイスのキモは、使用者に装着していることをどれだけ忘れさせるかにある。こと視覚に訴えるウェアラブルARデバイスの場合、いずれは脳に直接装着する未来もあるかもしれないが、それまでは、コンタクトレンズ型が想像しうる限り最小のデバイスだろう。
モジョ・ビジョン(Mojo Vision)社は2015年からスマート・コンタクトレンズの開発を進めており、2020年にその初期モデルが公開された。
そして今回公開された最新プロトタイプはいかにもSFチックだ。

コンタクトレンズ型ARデバイスの試作機を試すドリュー・パーキンズCEO/Mojo Vision
高解像度で無線通信内臓、眼球の動きで操作
ここで「モジョ・レンズ(Mojo Lens)」のスペックに軽く触れておこう。世界最小かつ最高密度を謳うグリーン・モノクロ・マイクロLEDディスプレイで、直径は0.5ミリ未満。小さいながらも、1インチあたり1万4000ピクセルの高解像度画像を表示できる。
Arm社のCore M0プロセッサ、超低レイテンシ通信が可能な5GHz無線通信を内蔵するほか、加速度センサー・ジャイロスコープ・磁気センサーで、超正確に眼球の動きを把握する。
だから目を動かしても映像がブレるようなことはない。
外周には医療用マイクロバッテリー、電源管理回路、ワイヤレス充電システムを内蔵。製品版では1日中動作するという。
またハンズフリー・スマホフリーな設計で、操作は眼球の動きだけで行える。

突出部のそばにエレクトロニクスが内蔵されており、視野の周辺は確保される/Mojo Vision
コンタクトレンズ型であるからには、当然超スリム&コンパクト。モジョ・レンズを装着してもちゃんと瞬きできるし、現実にモジョ・ビジョン社のドリュー・パーキンズCEO自らが最初の着用者になって、そのことを証明している。
パーキンズ氏は、Mojo Lenに映るコンパスで方向を確認したり、画像を見たりして、その感動を次のように綴っている。「インビジブル・コンピューティングで未来を肌で体験した……レンズは感動的だ。未来を目にして、文字通り私は言葉を失った」

モジョ・レンズを装着することで、安定したモノクロ画像が表示される。操作はハンズフリー・スマホフリー仕様で、眼球だけで行う / image credit:Mojo Vision
一般の人を対象にした装着実験を行った後、市販化へ
今後、同社はモジョ・レンズをさまざまな人に試してもらい、フィードバックに基づきさらに改良を重ね、いずれは米当局に市販の許可を申請する。またモジョ・レンズ上で動作するアプリの開発も行われている。パーキンス氏の願いは、多くの人が当たり前にできることを、視覚障害者が当たり前にできるようにすることだそうで、「モジョ・レンズが視覚障害者の生活を変えることを願っている」と語っている。
また、アスリートが集中力を維持したまま、より効率的な練習をするサポートにもなるだろうとのこと。
最終的な目標は、気を散らせることなく情報にアクセスできるツールを誰もが使えるようにすることだという。
モジョ・レンズの発売日はまだ公表されていないが、価格については、IEEE Spectrumのインタビューに対して、ハイエンドのスマホくらいの価格を見込んでいると、モジョ・ビジョン社上級副社長が発言している。
米カリフォルニア州サラトガの研究所で、Mojo Lensを装着するパーキンズCEO
かつてスマホは世の中の風景を一変させたが、未来が見えると謳われるモジョ・レンズも街中の光景を一変させる……そんな予感がしてくる。
References:Mojo Blog | Today I wore Mojo Lens / CEO test-drives Mojo Vision’s smart augmented reality contact lens / written by hiroching / edited by / parumo