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会社に泊まったはずの夫が、見たことないスーツを着て帰ってきた。問い詰めたら…

東京カレンダー

会社に泊まったはずの夫が、見たことないスーツを着て帰ってきた。問い詰めたら…

結婚したら、“夫以外の人”に一生ときめいちゃいけないの?

優しい夫と、何不自由ない暮らしを手に入れて、“良き妻”でいようと心がけてきた。

それなのに・・・。

私は一体いつから、“妻であること”に息苦しさを感じるようになったんだろう。

◆これまでのあらすじ

気になるカフェ店員とふとしたキッカケでLINE交換し、浮かれていた麻由。しかし義母からの“孫ハラ”は日々激化していく。そんなストレスの中、夫からの夜の誘いを拒否してしまう。

▶前回:結婚3年目、夫からの誘いを断ったら…。孫を催促する義母を巻き込んでの大騒動に



喧嘩


「麻由さ、俺やおふくろの前では『子どもが欲しい』なんて言ってるけど。本音は違うんじゃないの?」

「…」

夫の言葉に、私は何も言い返せない。

義両親を自宅に招いた日。義母の“孫ハラ”や、夫が夫婦生活について義母に耳打ちしていることに、心底ウンザリした。

だから、夜、夫からの誘いを、拒絶した。すると、余計に面倒になことになってしまった。

「一体、何が不満なんだよ」

イライラと頭をかきむしる浩平。

― 仮に子どもを産んだとしても、この人と一緒に、ちゃんと育てられるのかな。

そんな不安が今、初めて頭をよぎる。

これまでは、心から「子どもが欲しい」と思っていた。というか、「子どもは当たり前につくるものだ」と考えていた。

それに、義母からも会うたびに急かされるから、「早く子どもを産んで、このストレスから解放されたい」と焦っていた。

― でも冷静に考えたら、この状況で子育てするのって、結構キツくない?

フルタイムで働いている私に、“いつでも清潔な家”と“一汁三菜”を求める亭主関白気味な夫。

車で10分程度の距離の場所に住んでいて、孫が生まれたら何かにつけて家に押しかけてきそうな義両親。

― 全然、産みたいと思えるような環境じゃないんですけど…。

怒りで赤くなっている浩平の顔を眺めながら、そんなことを考える。

「ハァ…もういい。しばらく外で頭冷やすわ」

何も返事をしない私に業を煮やしたのか、浩平はため息をついてリビングを出ていく。

玄関の扉が閉まる音が、がらんとした部屋で妙に大きく響いた。


1人家に残された麻由。スマホを確認すると…

「疲れた…」

1人リビングに残された私は、ぐったりとソファに沈み込む。

― そういえば、さっき誰かからLINE来てたような…。

スマホでトークルームを確認すると表示された内容に、胸がドクンと鳴る。

『圭吾:麻由さん、お疲れさまです!無事に就活終わったので、連絡しちゃいました!』



― 『連絡しちゃいました』って。かわいい。かわいすぎる。

圭吾くんの子犬のような笑顔を想像して、私は思わずクッションに顔をうずめた。

しばらく彼と連絡をとっていなかったうえに、夫と喧嘩したこのタイミング。文字を見るだけで、癒やされる。

『麻由:就活お疲れさま!内定、本当におめでとう~!』

そのまま、LINEのラリーが続いた。

面接が解禁された6月早々に、圭吾くんは、大手通信会社から内定が出た。

しかし、その後改めて自分の将来について考え、アプリ開発している今勢いのあるIT系企業にも興味がわいたそうだ。そして、夏採用に挑戦し、見事内定を得たという。

『圭吾:ずっとITベンチャーでインターンしていたので、こっちの会社の方が自分のやりたいことができるなって』

『麻由:そっか。圭吾くんの希望がかなうところに決まって、何よりです!』

― いいなぁ、若いって。

LINEしながら、そんなことを思う。

圭吾くんはきっと、残された学生時代を有意義に過ごすのだろう。

希望の会社に入ったら、彼なら、どんな状況でも未来を切り開いていくはずだ。

対して、私は…。

妊娠・出産、そして育児など、先のことを考えると、また暗い気持ちになる。

『圭吾:麻由さん。よかったら、近々飲みにでも行きませんか?』

― え?

圭吾くんからの思わぬ誘いを目にして驚いてしまう。

彼は、私に女として興味を持ってくれているということなのだろうか――。

一瞬そんなことを考えてしまい、一人で首を振る。さすがに10も年上の私に対して、それはないだろう。

― でも、一緒にごはん行きたいな…。

推しメン・圭吾くんと食事でもすれば、この閉塞した気分から抜け出せそう。

といっても『既婚者なのに異性と2人で飲みに行くなんてアリ?』なんて、葛藤していたけれど。

『圭吾:僕の内定祝いってことで!(笑)』

続けて送られてきた一言に、迷っていた心がフッと軽くなる。

― 内定祝い、か。そうよね。お祝いするだけよ。

彼と食事する“大義名分”を見つけて、どこか安心している自分がいる。

『麻由:いいね!お祝いしよう。圭吾くん、何か食べたいものある?』

『圭吾:やったー!せっかくだから、麻由さんのおすすめのお店に行きたいです!』

『麻由:え~、そうだなぁ…』

テンポよく続くLINEのやりとりに、夢中になる。いつの間にか、夜が更けていく。

そして、その日浩平は帰ってこなかった。





5日後


金曜日の朝。

「じゃあ、いってきます」

「あ、浩平。…私、今夜予定があって遅くなるの」

出勤前の浩平の背中に話しかける。今日は、圭吾くんと食事の約束をした日だった。

浩平は一瞬足を止めたが、私の方を振り向きもせず、冷たく言い放った。

「好きにすればいいよ。どうせ、俺も今日から週明けまで、大阪出張だし」

私は何も言わずに、スタスタと去っていくを、目だけで見送った。

あの日から、ずっとこんな感じだ。


麻由が感じた、夫に対するある“疑惑”とは?

「頭を冷やす」と言って出て行った夜、夫は帰って来なかった。

翌日は月曜日だったから、さすがに朝には帰ってくるだろうと思ったのに。翌朝、私が出勤する時間になっても彼は帰って来なかった。だけど、夜には、きちんとスーツを着た状態で帰宅したのだ。

「浩平、昨日はごめん。なんで、スーツ着てるの?着替えとか、どうしたの?」

「ああ、会社に予備を置いてるから。仮眠室で寝て、そのまま出社したよ」

「そうだったのね」と言うしかない。

しかし本心では、彼の説明に違和感を覚えた。

上着だけならまだしも、上下とも、さらに革靴まで会社に予備を置いておくのは、普通だろうか。

しかも、浩平が着て帰ってきたのはエルメネジルド ゼニアのスリーピーススーツで、私は初めて見るものだった。



― もしかして、浮気とか?相手の家に着替え一式置いて、洗濯させてたりして。

初めて彼と知り合った食事会の席での彼の寡黙な様子を思うと、浩平に限って、とは思う。

色々と不満があるとはいえ、浩平は私のパートナーだ。「浮気されてもへっちゃら」なんて割り切ることはできないし、むしろ、疑いを持ち始めたここ数日は、胸に鉛が落とされたかのような、苦しい気分だった。

― とりあえず、今日は圭吾くんと食事だし、深く考えるのはやめよう。

『もし本当に、浩平が浮気しているなら、私が圭吾くんと食事するくらい、かわいいものじゃないか』そんな開き直ったような気分にさえなっていた。





圭吾との食事


「麻由さん、今日はありがとうございます。このお店、ステキですね!」

「コース頼んであるけど、気になるものがあれば、なんでも頼んでね」

圭吾くんから「お店は麻由さんのおすすめで」と言われて悩んだ末、ヒルトン東京の『中国料理 王朝』を選んだ。

せっかくの内定祝いだから、適当なお店じゃ格好がつかない。かといって“ホテルの高層階で夜景を見ながらフレンチ”は、彼氏や夫でもない男の子と行くには艶っぽすぎる気がする。

このお店であれば、ウッディな内装と庭園ビューが爽やかな雰囲気だし、それでいて北京ダックやフカヒレ、燕の巣など、滋味に富んだ中華料理を味わえるから、ちょうど良いと思ったのだ。

シャンパンで乾杯し、雲丹と蟹肉のスープや、鮑の黒トリュフ入りバターソース炒めを楽しんでいく。紹興酒の飲み比べなどもしているうちに、酔いが回ってきた。

圭吾くんも、耳が少し赤い。

「麻由さんは、やっぱり素敵ですね。お店で初めて接客した時から、綺麗な人だなって思ってたんです」

最初は真面目に就活や将来の仕事の話をしていた圭吾くんが、ふとそんなことを言い始めた。

私は驚いてなんだか反応に困ってしまい、つい、かわいくないことを口にしてしまう。

「あ、ありがとう。でも綺麗な人なんて、圭吾くんの周りにたくさんいるんじゃない?」

「まあ、たしかにかわいい子はいますけど…。でも、今日話してて思ったんです。麻由さんみたいに落ち着いていて、かつ一緒にいて楽しい人って、大学にはいないなって」

優しい瞳の奥に、心なしか、独特の輝きが見える。浩平と付き合う前にデートしていた時期、彼もこんな目で私を見てくれていたっけ…。

― やばい。このままじゃ…。

このままいくと、一体どうなってしまうのだろう。その先を見てみたいような、そんなことをしちゃダメなような…。

酔いでぼんやりとしている頭の中で本能と理性が葛藤し、ギリギリのところで理性が勝って、なんとか会計を済ませて店を出る。

「麻由さん。酔ってるんですか?」

圭吾くんが、背を屈めて急に顔を覗き込んできた。

― ちょっと、距離近いんですけど…。

「ねえ、麻由さん。この後…」

耳元で低く響く声に、私はドキドキしながら次の言葉を待っていた。


▶前回:結婚3年目、夫からの誘いを断ったら…。孫を催促する義母を巻き込んでの大騒動に

▶1話目はこちら:結婚3年目の三鷹在住32歳女が、夫に秘密で通う“ある場所”とは

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圭吾との距離が縮まる麻由。彼の誘いに…


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