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元警視正が語る「窃盗犯捜査」が全ての捜査の基本となるワケ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、金剛秀明氏の書籍『映像捜査官 MATOWARI』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第一章 的割り(MATOWARI)忍び込み犯の落ちは居直り強盗

窃盗犯捜査は捜査の基本

捜査の基本は、窃盗犯捜査にあると先人から伝承されてきた。全ての捜査手法を駆使することはもとより、捜査書類基本書式にある書面は全てを使用する刑事手続を踏むことになるから、刑事としての基本が備わり、いかなる捜査にも適用すると言われている。

窃盗犯捜査は、地味で派手さもなく淡々と捜査を進める中で、大小を問わない事件の犯人を一人ひとり検挙していくが、どのような事件被害者からも大変喜ばれ、公正に評価してもらえる部門は、この窃盗犯捜査であると確信する。また、捜査員自体がこれを肥やしに、さらなる意欲を燃やせる部門である。

安土桃山時代に都市部を中心に荒らし回った大泥棒石川五右衛門の辞世の句は「石川や浜の真砂は尽くるとも世に盗人の種は尽くまじ」というものだ。つまり、俺が死んでも泥棒は消えてなくならないと詠んだと言われるが、事実この種の犯罪者は後を絶たない。

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もちろん、窃盗常習犯との闘いが長期間継続し、捜査が困難を強いられ、窮地に陥るときがあるが、現在進行形のごとく犯行を続ける相手がある限り、必ず検挙できると信じ、執念と英智を集約の上、科学的捜査を展開して必ず捕捉している。また、これを生き甲斐、専門職にしている多くの先輩刑事が存在し、捜査技能が継承されてきた。

中條は、主任刑事の頃、ナンバーが振られたいわゆるナンバー課のひとつである県警捜査第三課に身を置いて、特捜主任、手口捜査主任を経験しているが、その経験が中條を大きく変貌させたと言っても過言ではない。それほど大きな影響を与えられ、捜査官としての器量、技量が増していった。

当然、これを育て上げた伝統と実績のある上司、先輩の布陣があった。一人ひとりが異名を持つベテラン刑事で、その実力者から教示される若手としては、大変幸せな時代であった。中條が駆け出しの時代は、窃盗犯捜査のプロを目指している刑事が極めて多かった。将来を担う人材として選ばれたことは誠に光栄であったが、中條はこれらの推薦枠の人材ではなかった。

当時、機動捜査隊主任から捜査第三課に着任したが元々刑事で自動車警ら隊に所属していた同僚がもう一人いた。

「巡査部長中條秀樹。本日付をもって捜査第三課勤務を命ぜられました」

所属長である捜査第三課長に申告した後、先任警部の案内で二名による刑事部長申告後、各課へ挨拶回りをした。一通りの申告や挨拶を済ませた後、捜査第三課を代表する二人の老練、古参の警部から着任時にかなりきつい指導を受けた。

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