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旅先で…思い切って声をかけた「女性が泣いてしまった」ワケ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、織田はじめ氏の小説『20歳、奄美の夏物語』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】「奄美大島の海と出会わなかったら人生が変わっていただろう」

白に赤い花柄のブラウスの女

「君のその服、素敵だね。よく似合ってますよ」

一人の小綺麗な都会風の洒落た白に赤い花柄のブラウスを着こなした20歳前後の女が、喫茶店に入って来た時、私は思わず声を掛けた。7月終わりの昼過ぎだった。

日頃の私はこのようなことはしない。旅先であることと女性の可愛さに心が負けた。

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「君、馴れ馴れしいね。でも誉めてくれてありがとう。これ似合うか心配してたの、でもちょっと自信ついた」と女は私を見て笑いながら言った。

目で女を追うと店の中央あたりの港が見える窓際に座る。開き始めていた心の窓がさらに開く。女は昼を過ぎても店から出て行かず台風接近で雨が激しくなり、店主の言い付けで私がバス停まで送ることに。

傘を持たせてバスに乗る女を見届けた私は興奮していたのか、強い雨の中をずぶ濡れになって帰った。そして翌日、この女、いや女性が傘を返しに来て、店で働き出したことをきっかけに交際が始まる。

お互いに「付き合ってください」との意思表示はなく、自然の成り行きだったが、ビビッときたことは確かだった。この女性は小田前玲子という20歳の東京の大学生で、枝手久島にいる幼馴染の男を訪ねて島に来たことを会話の端々から知った。但し、男のことは触れてはいけない存在と思い聞けなかった。

奄美の夏

不思議なことに暦が7月から8月に変わると奄美は俄然活気づく。奄美の1年は、8月で成り立っていると言っても過言ではなく行事が豊富。夏には青い空がさらに青く高くなり、湿っぽい南風が吹いた。これが暑い奄美の夏で物語を創った。

店の宣伝もあり、私と玲子はハブ踊り(長崎の龍(じゃ)踊りのようなもの)で始まり各商店が趣向を凝らした山車、集落の島唄を歌いながらの八月踊りの行列などが行進し、夜には花火が上がる奄美(港)まつり、8人が乗るペーロンに似た船で順位を競う舟漕ぎ競争、集落ごとに伝わり唄や踊りを競う八月(盆)踊りなどの島の行事に参加した。

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